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32.この国の外とありえない夢物語と
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「駄目です」
僕の言葉に真っ先に反応したのは想像通り、レフだった。護衛という立場からレフは絶対に僕の側を離れるようなことはないし、離れて欲しいと言っても難しいことは分かっていた。
しかし、レオンとふたりで話したい内容がある。正確には確認しなければいけないことがあった。
「レフ、5分でいい。彼と話しをさせてほしい」
「それなら俺も同席します、彼は確かに今のところ善人のように見えますが……」
「心配しなくても、俺の好みは艶っぽい姉さんだ。第1王子殿下には興味はねぇ」
そう言ってニィっと笑うレオンに僕は安心感があるのだが、レフは違う。いや、レオンでなくてもレフは警戒するだろうが……。
「ルティア殿下は色っぽいし艶っぽい。だからそこが好みなら危ない」
「言い方を変えると年下に興味がねぇから安心しろ」
呆れたようにジトっとした目でレフを見ているレオン。ふたりのやりとりが何故か急におかしいと感じて思わず声を立てて笑ってしまった。
「ははっ」
「殿下……」
レフが何故か物凄く切ない顔でこちらを見ているが、一度出てしまった笑いは止まらない。
「ははははっ。ああ、おかしい」
こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。そこまで考えた時、そう言えば離宮ではほとんど気を抜けなかったことを思い出した。
イクリスが居る時はあるていどは感情は覆い隠さないでいたけれど、それ以外は常に緊張感を持っていた。いや、イクリスとの間でさえもここ数年は感情をそのまま伝えることはできなくなっていた。
だから、もう数年はずっと笑っていなかった。
泣くことも笑うことも出来ず、ただ不機嫌な顔をしていた自身を思い返す。それに比べてヴィンターのコロコロと変わる表情がイクリスには愛おしかったのかもしれない。
折角、明るくなった気持ちが落ちかけたが、今はレフを説得する必要がある。
「お願いだ。少しだけでいい」
「わかりました。ただ、レオン。君の身体検査をさせてくれ。それで危険物や問題のあるものがなければ、俺が扉の前に待機してた状態で3分間だけなら許しましょう」
「ありがとう、それで問題ないかレオン??」
「ああ。どちらにしろ俺に拒否権はねぇだろう」
そう答えたレオンの身体を検査してから何度も名残惜しそうにしながらレフは部屋を出て行った。レフの姿が完全に見えなくなると同時に僕は口火を切る。
「時間がないので、単刀直入に聞く。レオン、貴方はどこからきた??」
僕の言葉にレオンは驚いた様子もなくこちらをジッと眺めている。
初めて見た時からずっと違和感を感じていた。少なくともこの国には褐色の肌の人はいない。つまり彼は僕が知らない場所から来た人、リエース王国の外から来た人である可能性があった。
その場合、この国を囲う『暗黒の森』を出る方法を彼なら知っている可能性があると思ったのだ。
(もしも『狂った竜王』を倒すことができて『暗黒の森』の外に別の国があるのならば僕は……)
その言葉にレオンは思案するように黄金の瞳を細めてから答えた。
「なるほど。まぁ俺の肌の色を見れば純粋にこの国の人間でないことは分かるな。ただ、その質問に俺は答えられない」
あっさりと答えたレオンに思わず問い返す。
「……なぜ??隠し通す必要があるということか」
「いいや、俺は単純に自分が何者か知らない。俺の母は父、前の領主により外から呼び出された存在だった。だから母のバステトならあんたが聞きたいことを話せたとは思うがすでに故人で俺は何も聞いていない」
レオンはまっすぐに僕を見つめて言った。その後で少し冗談っぽくこう続けた。
「もし、それを知っていたら今の状況ならあんたに簡単に話さないで交渉材料にでもしただろうよ」
「……交渉材料にする必要がないという可能性もなくはない。けれど……」
僕はレオンの瞳の奧にある、死を覚悟したものだけがまとう眼差しを感じていた。その眼差しをそうでない人間ができるはずはない。
だとすれば、レオンは嘘をついていないことになる。
「まぁ、今日はじめた会った相手のことなんて信用できないのは当然。でも、勝手に思っていることだけれど、もしもお前と学園で出会っていたら、級友だったら少し違かったかもな」
レオンの言葉に思わず苦い笑みになってしまう。学園、この王国の貴族の子息が通うそこに僕は通うことを許されなかった。同世代の人間と触れ合うことは婚約者のイクリスか護衛騎士のレフ以外許されなかった。
けれど、もし学園にヴィンターのように通えたならばレオンとも出会えたかもしれない。
(全てはただのなかった可能性だ。今それらを悔いてもなにも始まらない……けれど)
少なくとも、もし違う状況でレオンと出会ったら僕はレオンと友達になりたかった。彼なら深刻に考えすぎてしまった時には笑い飛ばしてくれて、悩んだ時も的確なアドバイスをくれるような気がした。
「……レオン、これは本当にただの夢物語だけれど、もしレオンが僕と学園で出会ったら友達になってくれたか??」
真っすぐにレオンを見つめた。何故か全く関係ないのにそんなことが聞きたくなった。
「……それは」
僕の言葉に真っ先に反応したのは想像通り、レフだった。護衛という立場からレフは絶対に僕の側を離れるようなことはないし、離れて欲しいと言っても難しいことは分かっていた。
しかし、レオンとふたりで話したい内容がある。正確には確認しなければいけないことがあった。
「レフ、5分でいい。彼と話しをさせてほしい」
「それなら俺も同席します、彼は確かに今のところ善人のように見えますが……」
「心配しなくても、俺の好みは艶っぽい姉さんだ。第1王子殿下には興味はねぇ」
そう言ってニィっと笑うレオンに僕は安心感があるのだが、レフは違う。いや、レオンでなくてもレフは警戒するだろうが……。
「ルティア殿下は色っぽいし艶っぽい。だからそこが好みなら危ない」
「言い方を変えると年下に興味がねぇから安心しろ」
呆れたようにジトっとした目でレフを見ているレオン。ふたりのやりとりが何故か急におかしいと感じて思わず声を立てて笑ってしまった。
「ははっ」
「殿下……」
レフが何故か物凄く切ない顔でこちらを見ているが、一度出てしまった笑いは止まらない。
「ははははっ。ああ、おかしい」
こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。そこまで考えた時、そう言えば離宮ではほとんど気を抜けなかったことを思い出した。
イクリスが居る時はあるていどは感情は覆い隠さないでいたけれど、それ以外は常に緊張感を持っていた。いや、イクリスとの間でさえもここ数年は感情をそのまま伝えることはできなくなっていた。
だから、もう数年はずっと笑っていなかった。
泣くことも笑うことも出来ず、ただ不機嫌な顔をしていた自身を思い返す。それに比べてヴィンターのコロコロと変わる表情がイクリスには愛おしかったのかもしれない。
折角、明るくなった気持ちが落ちかけたが、今はレフを説得する必要がある。
「お願いだ。少しだけでいい」
「わかりました。ただ、レオン。君の身体検査をさせてくれ。それで危険物や問題のあるものがなければ、俺が扉の前に待機してた状態で3分間だけなら許しましょう」
「ありがとう、それで問題ないかレオン??」
「ああ。どちらにしろ俺に拒否権はねぇだろう」
そう答えたレオンの身体を検査してから何度も名残惜しそうにしながらレフは部屋を出て行った。レフの姿が完全に見えなくなると同時に僕は口火を切る。
「時間がないので、単刀直入に聞く。レオン、貴方はどこからきた??」
僕の言葉にレオンは驚いた様子もなくこちらをジッと眺めている。
初めて見た時からずっと違和感を感じていた。少なくともこの国には褐色の肌の人はいない。つまり彼は僕が知らない場所から来た人、リエース王国の外から来た人である可能性があった。
その場合、この国を囲う『暗黒の森』を出る方法を彼なら知っている可能性があると思ったのだ。
(もしも『狂った竜王』を倒すことができて『暗黒の森』の外に別の国があるのならば僕は……)
その言葉にレオンは思案するように黄金の瞳を細めてから答えた。
「なるほど。まぁ俺の肌の色を見れば純粋にこの国の人間でないことは分かるな。ただ、その質問に俺は答えられない」
あっさりと答えたレオンに思わず問い返す。
「……なぜ??隠し通す必要があるということか」
「いいや、俺は単純に自分が何者か知らない。俺の母は父、前の領主により外から呼び出された存在だった。だから母のバステトならあんたが聞きたいことを話せたとは思うがすでに故人で俺は何も聞いていない」
レオンはまっすぐに僕を見つめて言った。その後で少し冗談っぽくこう続けた。
「もし、それを知っていたら今の状況ならあんたに簡単に話さないで交渉材料にでもしただろうよ」
「……交渉材料にする必要がないという可能性もなくはない。けれど……」
僕はレオンの瞳の奧にある、死を覚悟したものだけがまとう眼差しを感じていた。その眼差しをそうでない人間ができるはずはない。
だとすれば、レオンは嘘をついていないことになる。
「まぁ、今日はじめた会った相手のことなんて信用できないのは当然。でも、勝手に思っていることだけれど、もしもお前と学園で出会っていたら、級友だったら少し違かったかもな」
レオンの言葉に思わず苦い笑みになってしまう。学園、この王国の貴族の子息が通うそこに僕は通うことを許されなかった。同世代の人間と触れ合うことは婚約者のイクリスか護衛騎士のレフ以外許されなかった。
けれど、もし学園にヴィンターのように通えたならばレオンとも出会えたかもしれない。
(全てはただのなかった可能性だ。今それらを悔いてもなにも始まらない……けれど)
少なくとも、もし違う状況でレオンと出会ったら僕はレオンと友達になりたかった。彼なら深刻に考えすぎてしまった時には笑い飛ばしてくれて、悩んだ時も的確なアドバイスをくれるような気がした。
「……レオン、これは本当にただの夢物語だけれど、もしレオンが僕と学園で出会ったら友達になってくれたか??」
真っすぐにレオンを見つめた。何故か全く関係ないのにそんなことが聞きたくなった。
「……それは」
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