30 / 73
30.狂気に苛まれたレフと意外な救い
しおりを挟む
レフに強引に唇をこじ開けられて、舌を挿し込まれる。いきなり酸素を奪われて本能的にその厚い舌に歯を立てた。
口の中にレフの血の味が広がる。流石に離れるかと思ったが一瞬表情が歪んだがそれでもレフは無理やり僕の口腔内に舌を押し込んだ。
「……っ……やぁ」
その呼吸は荒く熱く、まるで触れている部分から燃やされるような気がするほどに感じて酸欠で思考ができない頭でも恐怖心が沸き上がる。
(この男は、僕に何を望んでいる??)
あくまで冷静に判断したいと願っていたのに、なぜこんなことになったのか。やっと唇が離れてもレフの瞳に宿っている狂気に気付いてしまう。その恐ろしさに目を逸らしたいのに逸らしたらもっと恐ろしい気がして僕はただそれを見つめていた。
しばらく、無言で見つめ合った後に、ずっと感じていた違和感のようなものをレフにぶつけてみる。
「レフ、何故こんなことをする??冷静に考えて欲しい。どう考えてもさっきバレット子爵への暴力はやりすぎだ。まだ、罪があるかもわからないうちからあんな風に恫喝するべきではない」
真っすぐにレフに向かって思ったことを口にいた。内容的にはおかしいことなどないはずだ。
しかし、まだレフから感じる狂気的な感情に対しての言い知れない恐怖から体が震える。
それでも、今この部屋にはふたりしかいない。お互いの呼吸の音だけが部屋に響くほどの沈黙。
だからこそ、僕はレフと向き合う必要がある。たとえ相手が手負いの獣のような状態でも、そうしなければいけない。その言葉にレフは無表情になる。ただ、その瞳にはあのいつも僕を見つめるときに宿している熱が見えた気がした。
「申し訳ありません。ルティア殿下にあの男が気安く触れたのが許せなかった。ルティア殿下に……あの男が汚い手で触れたのが、ああ、消毒しないといけませんね。綺麗にしないといけない、安心してください。俺が全部綺麗にします。綺麗にして消毒をして全部……」
一瞬冷静になったと思った次の瞬間、レフの表情は狂気的なものになり、必要にバレット子爵が触れた太もものあたりを撫でる。その手つきはセクシャルなもので、思わず身が強張るのが分かる。
逃げようとしたが、レフの大きな体に阻まれてそのまま壁際まで追いやられた。
「レフ、やめろ、おちつけ!!」
なんとかその手から逃れようとしたが、完全に狂気に染まっているレフは僕を無理やり壁に押し付ける。レフの体温が僕に伝わり、その熱い息遣いを皮膚が感じるほど側に彼が居る。
「大丈夫です、安心してください。俺が全部……」
レフに襲われそうになったその時……、
「なにやってるんだ、あんた。明らかにそれは合意してないよな」
部屋の扉を開いてレオンが入ってきた。
「……何故、お前が」
瞳孔が完全に開いた瞳でレフはレオンを睨んだ。しかしレオンは僕とレフの間に入って僕を救い出して涼しい顔で答えた。
「バレット子爵が出て行ったのに、いつまでたっても声が掛からねぇから、何かあったのかと思って見に来たんだよ。まさか騎士が主君を襲おうとしてるとは考えてなかったけどな」
堂々と言い放つその姿には、どことなく王者のような風格がある。レオンははじめて見た時からとても不思議な人だと感じていた。
今まで、僕の周りに居たタイプとはまるで違う。しなやかなネコ科の獣のような感覚を彼からは感じる。
レオンの言葉に流石にレフも口を紡ぐ。どう取り繕うとしても僕を襲おうとしていた事実は変わらない。それを賢いレフが把握できないわけがない。
「とりあえず、レフ、彼の話も聞こう」
何事もなかったかのようにそう言った僕のことを、ふたりが驚いたように見ていた。その意味が分からず首を傾げるとレオンが急に大声で笑った。
「はははは、第1王子殿下は随分豪胆なんだな。気に入ったぜ。てっきりもっと見た目のように軟弱なのかと思っていたが、あれだけ恐ろしい目に遇っていても簡単に切り替えられるなんて恐れ入った」
「別に、レフは割とあんな感じになることがあるから慣れてきた」
思ったことを答えたのだが、その答えに何故かさらにレオンは笑う、そして笑いすぎて呼吸ができないのか苦し気な音を立ててそれでも笑っていた。
「貴殿、笑い過ぎだ」
レフが睨みながらそう言うが、レオンはそれでもしばらく笑っていた。
「しかし、殿下。流石にあんなことに慣れちゃ駄目だぜ。自分の味方だからとか考えて遠慮しているのかもしれないが嫌な時は嫌だって言わないと小辺境伯殿みたいなタイプは気づかない」
「……そういうものなのか??」
遠慮したりはしていなかったが、確かに自分のために色々犠牲にしてくれたレフ相手に言いにくいと思っていたのは事実だった。
「ああ、むしろそれを言って離れるようなヤツなら縁を切っても問題ねぇ」
「……」
レオンの言葉に僕は心の中がすっきりするのが分かった。レフのことは嫌いではない。けれどレフが望む愛を返せるかずっと考えてしまっている。
先ほどのように意味の分からないことで怒り、異常な行動をとった時どうすればいいかを僕は知らない。人間関係というものがずっと希薄で友人もいなかったこともあるが、人の感情や考えを読むための経験が足りていたにことを実感していた。
そんな中でレオンが言った言葉は、それらを解決するために必要な鍵に思えた。
「なるほど、次は試してみる」
「ルティア殿下……」
僕の言葉に、大きな犬がしょんぼりしているような表情をレフが浮かべているが目を逸らした。
「では、本題からだいぶ逸れてしまったが、貴殿の話を聞かせてほしい」
口の中にレフの血の味が広がる。流石に離れるかと思ったが一瞬表情が歪んだがそれでもレフは無理やり僕の口腔内に舌を押し込んだ。
「……っ……やぁ」
その呼吸は荒く熱く、まるで触れている部分から燃やされるような気がするほどに感じて酸欠で思考ができない頭でも恐怖心が沸き上がる。
(この男は、僕に何を望んでいる??)
あくまで冷静に判断したいと願っていたのに、なぜこんなことになったのか。やっと唇が離れてもレフの瞳に宿っている狂気に気付いてしまう。その恐ろしさに目を逸らしたいのに逸らしたらもっと恐ろしい気がして僕はただそれを見つめていた。
しばらく、無言で見つめ合った後に、ずっと感じていた違和感のようなものをレフにぶつけてみる。
「レフ、何故こんなことをする??冷静に考えて欲しい。どう考えてもさっきバレット子爵への暴力はやりすぎだ。まだ、罪があるかもわからないうちからあんな風に恫喝するべきではない」
真っすぐにレフに向かって思ったことを口にいた。内容的にはおかしいことなどないはずだ。
しかし、まだレフから感じる狂気的な感情に対しての言い知れない恐怖から体が震える。
それでも、今この部屋にはふたりしかいない。お互いの呼吸の音だけが部屋に響くほどの沈黙。
だからこそ、僕はレフと向き合う必要がある。たとえ相手が手負いの獣のような状態でも、そうしなければいけない。その言葉にレフは無表情になる。ただ、その瞳にはあのいつも僕を見つめるときに宿している熱が見えた気がした。
「申し訳ありません。ルティア殿下にあの男が気安く触れたのが許せなかった。ルティア殿下に……あの男が汚い手で触れたのが、ああ、消毒しないといけませんね。綺麗にしないといけない、安心してください。俺が全部綺麗にします。綺麗にして消毒をして全部……」
一瞬冷静になったと思った次の瞬間、レフの表情は狂気的なものになり、必要にバレット子爵が触れた太もものあたりを撫でる。その手つきはセクシャルなもので、思わず身が強張るのが分かる。
逃げようとしたが、レフの大きな体に阻まれてそのまま壁際まで追いやられた。
「レフ、やめろ、おちつけ!!」
なんとかその手から逃れようとしたが、完全に狂気に染まっているレフは僕を無理やり壁に押し付ける。レフの体温が僕に伝わり、その熱い息遣いを皮膚が感じるほど側に彼が居る。
「大丈夫です、安心してください。俺が全部……」
レフに襲われそうになったその時……、
「なにやってるんだ、あんた。明らかにそれは合意してないよな」
部屋の扉を開いてレオンが入ってきた。
「……何故、お前が」
瞳孔が完全に開いた瞳でレフはレオンを睨んだ。しかしレオンは僕とレフの間に入って僕を救い出して涼しい顔で答えた。
「バレット子爵が出て行ったのに、いつまでたっても声が掛からねぇから、何かあったのかと思って見に来たんだよ。まさか騎士が主君を襲おうとしてるとは考えてなかったけどな」
堂々と言い放つその姿には、どことなく王者のような風格がある。レオンははじめて見た時からとても不思議な人だと感じていた。
今まで、僕の周りに居たタイプとはまるで違う。しなやかなネコ科の獣のような感覚を彼からは感じる。
レオンの言葉に流石にレフも口を紡ぐ。どう取り繕うとしても僕を襲おうとしていた事実は変わらない。それを賢いレフが把握できないわけがない。
「とりあえず、レフ、彼の話も聞こう」
何事もなかったかのようにそう言った僕のことを、ふたりが驚いたように見ていた。その意味が分からず首を傾げるとレオンが急に大声で笑った。
「はははは、第1王子殿下は随分豪胆なんだな。気に入ったぜ。てっきりもっと見た目のように軟弱なのかと思っていたが、あれだけ恐ろしい目に遇っていても簡単に切り替えられるなんて恐れ入った」
「別に、レフは割とあんな感じになることがあるから慣れてきた」
思ったことを答えたのだが、その答えに何故かさらにレオンは笑う、そして笑いすぎて呼吸ができないのか苦し気な音を立ててそれでも笑っていた。
「貴殿、笑い過ぎだ」
レフが睨みながらそう言うが、レオンはそれでもしばらく笑っていた。
「しかし、殿下。流石にあんなことに慣れちゃ駄目だぜ。自分の味方だからとか考えて遠慮しているのかもしれないが嫌な時は嫌だって言わないと小辺境伯殿みたいなタイプは気づかない」
「……そういうものなのか??」
遠慮したりはしていなかったが、確かに自分のために色々犠牲にしてくれたレフ相手に言いにくいと思っていたのは事実だった。
「ああ、むしろそれを言って離れるようなヤツなら縁を切っても問題ねぇ」
「……」
レオンの言葉に僕は心の中がすっきりするのが分かった。レフのことは嫌いではない。けれどレフが望む愛を返せるかずっと考えてしまっている。
先ほどのように意味の分からないことで怒り、異常な行動をとった時どうすればいいかを僕は知らない。人間関係というものがずっと希薄で友人もいなかったこともあるが、人の感情や考えを読むための経験が足りていたにことを実感していた。
そんな中でレオンが言った言葉は、それらを解決するために必要な鍵に思えた。
「なるほど、次は試してみる」
「ルティア殿下……」
僕の言葉に、大きな犬がしょんぼりしているような表情をレフが浮かべているが目を逸らした。
「では、本題からだいぶ逸れてしまったが、貴殿の話を聞かせてほしい」
8
お気に入りに追加
886
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる