百獣最強と言われた私が転生したのは婚約破棄後に不治の病で死ぬ悪役令嬢でした

ひよこ麺

文字の大きさ
上 下
38 / 38

37.謎の契約と仮面の夫人

しおりを挟む
大パパが告げた事実は衝撃的なものだった。なんでも王家とアウストリア公爵の間で婚約を結んだのは正妃様とフアナの母が何らかの約束を昔からしていてそのために成されたことだと言う。

その詳細について知っているのは、今も目を覚まさず大パパに愛さ……もとい看病を受けているアウストリア公爵と、母方の祖父母のみだったとのことだ。

「アインハルト、貴方はお父様と契約していたけど何か婚約に関する内容について知らない??」

「……すまない。ルータスとの契約の関係でその件を伝えることはできない。ただ……ひとつ言えることは王家が今伝えてきた内容については、まだ契約の効力が失われていないということだけは教えてあげられる」

少し苦し気に答えたアインハルトは契約魔法で縛られていることがすぐに分かった。ならばこれ以上は聞くことができないとあきらめる。

しばらく、沈黙が流れた。

「ならば、母方の祖父母に大切なことだし確認しよう。ただ、ずっと思っていたのだけれど、母方の祖父母はどうして一度も俺達の前に現れなかったんだろうか」

カールの言葉にフアナの記憶が再び鮮明によみがえる。少なくとも、フアナの記憶の中にも母方の祖父母の記憶はなかった。

「そうだろうな。彼らは我々と親類であってもほとんど接することがない」

幼かったからかもしれないが、母の葬儀にもふたりが来ていた記憶がない。そして、私はフアナの記憶を確認する。

記憶を思い起こした時、まだ幼かったフアナの記憶の中に鮮烈に残るものがあることがわかった。それはフアナがある日眠りから覚めた時のことだ。

いつもなら側に居るはずの使用人も母もいなかったのだ。その事実に驚いて悲しくなりベッドから起き出して部屋の扉を何とか開けて廊下に出た。

裸足の足の裏に絨毯は引かれていたがどこか冷たい感触が擦る中、それでも母を、いつも面倒を見てくれる使用人を探して歩いていると、ある部屋から母の声がすることに気付いた。

嬉しくなって部屋に入ろうとしたけれど、扉に鍵がかかっているのかノブを回しても部屋の扉は開かない。

『おかぁしゃまっ!!』

泣きながら、扉を何度も叩くと、しばらくして扉が開いた。

その中から、現れた人物にフアナは全く見覚えがなかった。ただ、ひとつはっきりと覚えているのはその人物は奇妙な仮面をかぶった貴婦人だったということだ。

その異常な風貌に、幼いフアナは余計に泣いたのでそんなフアナを慰めるように母に抱き上げられた。

『起きてしまったのね……ごめんなさい、。この件についてはまた今度話しをしましょう』

私の背をポンポンと叩きながら慰める素振りをしながら母が、その仮面の夫人に伝える。年齢は仮面もありはっきりしないが当時で母よりずっと年上だということは何となく分かった。

『ええ、そうね。可愛いお姫様が目を覚ましてしまったのだから仕方ない。また近いうちに会いましょう、カタリナ』

とその時のフアナには意味の分からない言葉を告げてその場を立ち去ってしまった。それ以来、フアナは彼女に会うことはなかったが幼い日の強烈な記憶として残っていた。

「仮面の夫人……」

ぼそりと記憶の中の彼女のことを口にすると、大パパが不思議そうな顔になる。

「フアナは出会ったのかい??グリムヒルド夫人、君とカールの母方の祖母に」

「えっ」

思いもよらない言葉だった。つまり、あの日、母と話していたのは祖母だったということになる。けれど、少なくともわずかになされた会話は、母娘とは思えなかった。

「……けれど、お母様は、あの人のことをと呼んでいましたが……」

「ああ、そうだろう。カタリナ嬢いや、アウストリア公爵夫人にとってかの人は実の母ではないからね。グリムヒルド夫人は後妻だからね。ただ、アウストリア公爵夫人とグリムヒルド夫人の間には君達と継母の間にあるような軋轢はなかった」

「……本当にそうだったのかな」

大パパの言葉に、今まで黙っていたアインハルトが口を挟む。

「何か知っているのか??」

「ああ。ルータスは、グリムヒルド夫人とカタリナ夫人をあまり会わせたくないようだった。特にフアナが生まれた後になぜか頻繁にきていた彼女に対してとても警戒していた」
しおりを挟む
感想 20

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(20件)

TM
2023.02.28 TM

大パパ 最後な所なにいってるのかちょっとわからん

解除
HINATA
2023.02.23 HINATA

ドM覚醒しちゃった?

解除
HINATA
2023.02.22 HINATA
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。