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35.太陽神の加護のあるヒロインと燃える闘魂の百獣の女王
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(私の行動のせいでアンの運命を変えてしまっている??)
フアナに生まれ変わったことに気付いた時から、私がフアナになったからには絶対にこの溢れる闘魂と筋肉で生き抜いて見せると考えてきた。そのためなら、運命を変えることは悪いことだと考えたことは一度もなかった。
王太子がグットルッキング下僕になったのは、ある意味自業自得な部分もあると思ってしまう私がいるので気にならないが、アンは私のために色々尽くしてくれている。
アンの本来得るはずだった幸福を壊すことは果たして良いのか。
そう思ったのはフアナも同じだったようだ。私の心の中のフアナの感情と記憶が蘇る。
フアナが今まで体験した世界では、王太子がアンを選んで婚約破棄をされていたはずだった。けれど、だからといってアンをフアナはいじめていない。
そして、アンもフアナにいじめられたと訴えたこともなければ、アン自身をいじめる令嬢と正面をきって肉体言語と熱い魂で戦っている姿が見えた。
ただ、あくまでふたりの運命はすれ違い続けていた。直接ふたりが話すことがないまま、王太子は婚約を破棄したその後に、アンと婚約したはずだ。
「フアナお嬢様、どうされましたか??」
突然、黙り込んだ私にアンが心配そうな顔をしている。
「やはり、いくら酷い男だったとはいえ婚約者がボロボロの姿を見るのは辛かったりされましたか??」
「あ、それは全然。むしろスッキリしたし、王太子殿下とは婚約を解消する予定だから今更なにも後悔はしていない」
王太子についてはどうでも良い。むしろ王太子には今までフアナにしてきた罪を償わせるつもりでいる。けれど、そうしたらアンは、この世界の本来のヒロインは幸せになれるだろうか。
「ねぇ、アン。もし貴方が幸せになれる運命があるとして、その幸せが誰かのせいで知らないうちに失われてしまったらどうする??」
私はアンを見つめる。するとアンは少し考えてから答える。
「うーん、だとしても私は自分でまた幸せを探しますね」
にっこりと微笑んだアンはそのまま言葉を続けた。
「100回叩くと壊れる壁があったとする。でもみんな何回叩けば壊れるかわからないから、90回まで来ていても途中であきらめてしまう。そういう人が多いんですが私は諦めない。そこで諦めるくらいならやりきって失敗してでも諦めたくないのです。それに誰かが少し何かしたくらいで壊れてしまう幸せならなかったのと同じなので、気にしません」
太陽神のような微笑みを浮かべたアン。そのあたたかさに間違いなく気温が上昇した気配すら感じた。そして、アンという人を理解できていなかった自分自身がなんだか恥ずかしくなる。
(そうだ、アンはこんなことで挫けない不屈の魂、太陽神の加護を持つもの。ならば私は自分の運命を変えることにだけ集中しよう。彼女の人生は彼女が切り開ける……)
「そうよね、アンなら運命を自分で切り開ける。私も負けてられない。アドバルーンを上げれば何かが動き出す、そう、落ちたら、また這い上がってくればいいだけのこと」
「それでこそ、フアナお嬢様です」
私とアンは美しい夕日の下で固く握手をした。その様子をずっと見ていたアインハルトが小さく、
「……少しずつ運命が好転し始めた」
と中二病みたいなことを呟いていたが、ショタでおじいちゃんで魔法使いなので優しく知らないふりをしてあげることにした。
その後、とりあえず屋敷に戻った私を心配そうな顔をしたカールが迎えた。
「フアナ、体は問題ないか??」
「ええ、大丈夫です」
そう答えた私を、けれどあまり信用していないのかとても心配そうな顔で見ている。
あの一件以来、カールは完全に私に対して過保護になっている。間違いなく私の方が強いので私は守ってもらう必要はないのだが、私の中のフアナがどうやらカールにそうされることが嫌ではないようなのでそのままにしてあげている。
「……無理だけはしないでくれ。もし辛ければ俺がいつでもどこでも必ず助けにいく」
フアナに生まれ変わったことに気付いた時から、私がフアナになったからには絶対にこの溢れる闘魂と筋肉で生き抜いて見せると考えてきた。そのためなら、運命を変えることは悪いことだと考えたことは一度もなかった。
王太子がグットルッキング下僕になったのは、ある意味自業自得な部分もあると思ってしまう私がいるので気にならないが、アンは私のために色々尽くしてくれている。
アンの本来得るはずだった幸福を壊すことは果たして良いのか。
そう思ったのはフアナも同じだったようだ。私の心の中のフアナの感情と記憶が蘇る。
フアナが今まで体験した世界では、王太子がアンを選んで婚約破棄をされていたはずだった。けれど、だからといってアンをフアナはいじめていない。
そして、アンもフアナにいじめられたと訴えたこともなければ、アン自身をいじめる令嬢と正面をきって肉体言語と熱い魂で戦っている姿が見えた。
ただ、あくまでふたりの運命はすれ違い続けていた。直接ふたりが話すことがないまま、王太子は婚約を破棄したその後に、アンと婚約したはずだ。
「フアナお嬢様、どうされましたか??」
突然、黙り込んだ私にアンが心配そうな顔をしている。
「やはり、いくら酷い男だったとはいえ婚約者がボロボロの姿を見るのは辛かったりされましたか??」
「あ、それは全然。むしろスッキリしたし、王太子殿下とは婚約を解消する予定だから今更なにも後悔はしていない」
王太子についてはどうでも良い。むしろ王太子には今までフアナにしてきた罪を償わせるつもりでいる。けれど、そうしたらアンは、この世界の本来のヒロインは幸せになれるだろうか。
「ねぇ、アン。もし貴方が幸せになれる運命があるとして、その幸せが誰かのせいで知らないうちに失われてしまったらどうする??」
私はアンを見つめる。するとアンは少し考えてから答える。
「うーん、だとしても私は自分でまた幸せを探しますね」
にっこりと微笑んだアンはそのまま言葉を続けた。
「100回叩くと壊れる壁があったとする。でもみんな何回叩けば壊れるかわからないから、90回まで来ていても途中であきらめてしまう。そういう人が多いんですが私は諦めない。そこで諦めるくらいならやりきって失敗してでも諦めたくないのです。それに誰かが少し何かしたくらいで壊れてしまう幸せならなかったのと同じなので、気にしません」
太陽神のような微笑みを浮かべたアン。そのあたたかさに間違いなく気温が上昇した気配すら感じた。そして、アンという人を理解できていなかった自分自身がなんだか恥ずかしくなる。
(そうだ、アンはこんなことで挫けない不屈の魂、太陽神の加護を持つもの。ならば私は自分の運命を変えることにだけ集中しよう。彼女の人生は彼女が切り開ける……)
「そうよね、アンなら運命を自分で切り開ける。私も負けてられない。アドバルーンを上げれば何かが動き出す、そう、落ちたら、また這い上がってくればいいだけのこと」
「それでこそ、フアナお嬢様です」
私とアンは美しい夕日の下で固く握手をした。その様子をずっと見ていたアインハルトが小さく、
「……少しずつ運命が好転し始めた」
と中二病みたいなことを呟いていたが、ショタでおじいちゃんで魔法使いなので優しく知らないふりをしてあげることにした。
その後、とりあえず屋敷に戻った私を心配そうな顔をしたカールが迎えた。
「フアナ、体は問題ないか??」
「ええ、大丈夫です」
そう答えた私を、けれどあまり信用していないのかとても心配そうな顔で見ている。
あの一件以来、カールは完全に私に対して過保護になっている。間違いなく私の方が強いので私は守ってもらう必要はないのだが、私の中のフアナがどうやらカールにそうされることが嫌ではないようなのでそのままにしてあげている。
「……無理だけはしないでくれ。もし辛ければ俺がいつでもどこでも必ず助けにいく」
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