35 / 38
34.グットルッキング下僕とこの世界のヒロイン
しおりを挟む
今まで見たことのないような王太子の怯えた表情に私の中のフアナは少しスカっとしたようだけれど、私はこの表情をした雄が大変面倒臭いことを知っている。
前世、私は恋愛をすることはなかったが私にひれ伏して許しを乞うことを悦びとする見目はイイタイプの下僕、グットルッキング下僕がまとわりついていたが、王太子が今まさにあのグットルッキング下僕の初期と同じ表情でこちらを見ている。
「何か??」
自然と強めの語気で出た言葉に、体をビクリと跳ねさせる。しかし、その頬は赤く上気し目はもっと罵って欲しいことを雄弁と語っている。
「あ、あ……その、フアナ……どうして……いままで隠していたんだ??」
その言葉に私はわざと大きくため息をついた。そして、地面にひれ伏している王太子を見下すように睨む。
「何をおっしゃりたいのか、全くわかりませんが??」
威圧するように、実際体から覇気のオーラを放ちながら言うと、王太子の体がブルリと震えたのが分かった。
「あ、その、君が、素晴らしい素養をもっているということをだ!!あ、あと、その侍女も素晴らしい!!」
私とアンを交互に身ながら身を捩る姿は芋虫のようで、しかもいくらそこそこの美形でも薄汚れて地べたを這いずっている姿は気持ち悪いとしか思えない。
思わず私は、それが逆効果だと分かっていたのに耐え切れずに蹴飛ばしてしまった。
「あっ……」
その瞬間、甘い声を上げる王太子は、私の足に縋りついた。
「もっと、踏みつけてくれ……いや、踏んでください」
王太子の言葉に私は、どうやら今生でもグットルッキング下僕を生成してしまったらしいが、正直、無駄に身分が高いだけに面倒くさいと考えた時、とてとて歩いてきたアインハルトがにんまり微笑み何かの呪文を唱える。
すると、王太子は私の足に縋りついた体勢のまままるで石になったように動かなくなった。
「うん、気持ち悪いドMはないないしよう」
そう言って、そのままさらに何かの呪文をアインハルトが呟くと王太子はその姿を消した。
「フアナお嬢様に迷惑をかけるなんて最悪でしたね!!」
アンが怒りながらそう言った。そこで私は先ほどの王太子の言葉を思い出す。
『あ、あと、その侍女も素晴らしい!!』
王太子がドMもといグットルッキング下僕なのは分かったがなぜアンをいきなり賛美したのか、その意味が分からない。
「アン、貴方は王太子にあったことがあったの??」
疑問に思ったので確認するとアンはしばらく考えていたが首を傾げたまま唸っている。その姿を見つめながら、ひと恋のヒロインについてあることを思い出した。
乙女ゲームのヒロインは顔有りで物語がしっかりしていることが多いが、ひと恋は顔が描かれないタイプのヒロインだった。ただ、名前は知っていたので学園に行けば会うことになるだろうと簡単に考えていた。
そもそも、学園へも行かない予定に運命が変わっていたので問題ないと思ったが、私の第6筋肉が告げる。
「ねぇ、アン。貴方に聞きたいのだけど貴方は平民なのよね??ご家族はどんな人??」
アンはにっこり微笑みながら嬉しそうに言った。
「私は、母の手ひとつで育ちました。母は食堂をしながら私を育ててくれました。母の料理は私にとってこの世で一番大好きなもので、いつかお嬢様にも味わって頂きたいです」
アンの言葉で私の考えは確信に変わる。間違いない。
ひと恋のヒロインの名前はアンジェリカ・リュラ・キュグニ、母の手ひとつで切り盛りする食堂の娘として育った平民だったが、実はとなりの帝国の血を引く貴族の娘であり、両親がこちらの国に外遊に来た際に暴漢に襲われた際に失踪し、記憶も失っていたところを食堂の女主人に拾われたという複雑な境遇だったが、ゲーム開始時に彼女を探していた両親が偶然その食堂を訪れて出自が分かる設定だったはずだ。
私は気づいてしまった。
アンこそ、このゲームのヒロインであるという事実に……。
前世、私は恋愛をすることはなかったが私にひれ伏して許しを乞うことを悦びとする見目はイイタイプの下僕、グットルッキング下僕がまとわりついていたが、王太子が今まさにあのグットルッキング下僕の初期と同じ表情でこちらを見ている。
「何か??」
自然と強めの語気で出た言葉に、体をビクリと跳ねさせる。しかし、その頬は赤く上気し目はもっと罵って欲しいことを雄弁と語っている。
「あ、あ……その、フアナ……どうして……いままで隠していたんだ??」
その言葉に私はわざと大きくため息をついた。そして、地面にひれ伏している王太子を見下すように睨む。
「何をおっしゃりたいのか、全くわかりませんが??」
威圧するように、実際体から覇気のオーラを放ちながら言うと、王太子の体がブルリと震えたのが分かった。
「あ、その、君が、素晴らしい素養をもっているということをだ!!あ、あと、その侍女も素晴らしい!!」
私とアンを交互に身ながら身を捩る姿は芋虫のようで、しかもいくらそこそこの美形でも薄汚れて地べたを這いずっている姿は気持ち悪いとしか思えない。
思わず私は、それが逆効果だと分かっていたのに耐え切れずに蹴飛ばしてしまった。
「あっ……」
その瞬間、甘い声を上げる王太子は、私の足に縋りついた。
「もっと、踏みつけてくれ……いや、踏んでください」
王太子の言葉に私は、どうやら今生でもグットルッキング下僕を生成してしまったらしいが、正直、無駄に身分が高いだけに面倒くさいと考えた時、とてとて歩いてきたアインハルトがにんまり微笑み何かの呪文を唱える。
すると、王太子は私の足に縋りついた体勢のまままるで石になったように動かなくなった。
「うん、気持ち悪いドMはないないしよう」
そう言って、そのままさらに何かの呪文をアインハルトが呟くと王太子はその姿を消した。
「フアナお嬢様に迷惑をかけるなんて最悪でしたね!!」
アンが怒りながらそう言った。そこで私は先ほどの王太子の言葉を思い出す。
『あ、あと、その侍女も素晴らしい!!』
王太子がドMもといグットルッキング下僕なのは分かったがなぜアンをいきなり賛美したのか、その意味が分からない。
「アン、貴方は王太子にあったことがあったの??」
疑問に思ったので確認するとアンはしばらく考えていたが首を傾げたまま唸っている。その姿を見つめながら、ひと恋のヒロインについてあることを思い出した。
乙女ゲームのヒロインは顔有りで物語がしっかりしていることが多いが、ひと恋は顔が描かれないタイプのヒロインだった。ただ、名前は知っていたので学園に行けば会うことになるだろうと簡単に考えていた。
そもそも、学園へも行かない予定に運命が変わっていたので問題ないと思ったが、私の第6筋肉が告げる。
「ねぇ、アン。貴方に聞きたいのだけど貴方は平民なのよね??ご家族はどんな人??」
アンはにっこり微笑みながら嬉しそうに言った。
「私は、母の手ひとつで育ちました。母は食堂をしながら私を育ててくれました。母の料理は私にとってこの世で一番大好きなもので、いつかお嬢様にも味わって頂きたいです」
アンの言葉で私の考えは確信に変わる。間違いない。
ひと恋のヒロインの名前はアンジェリカ・リュラ・キュグニ、母の手ひとつで切り盛りする食堂の娘として育った平民だったが、実はとなりの帝国の血を引く貴族の娘であり、両親がこちらの国に外遊に来た際に暴漢に襲われた際に失踪し、記憶も失っていたところを食堂の女主人に拾われたという複雑な境遇だったが、ゲーム開始時に彼女を探していた両親が偶然その食堂を訪れて出自が分かる設定だったはずだ。
私は気づいてしまった。
アンこそ、このゲームのヒロインであるという事実に……。
2
お気に入りに追加
1,145
あなたにおすすめの小説
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
婚約破棄されました。
まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。
本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。
ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。
習作なので短めの話となります。
恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。
ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。
Copyright©︎2020-まるねこ
もふもふ好きのお姫様
桐生桜月姫
恋愛
もふもふ好きなお姫様と周りの人のドタバタな日常のお話です。(シリアス先輩の出番多めです…💦)
恋愛要素は遅め?です。
設定緩めです。(ちょびちょび編集しています。)
誤字脱字等ありましたら、お教えください。
希望の場面等もありましたらお教えください。できる限り書こうと思います!
毎日午後3時に更新しようと思います。
表紙絵は作者が初めて描いたデジタルイラストです。下手でごめんなさい………。世界観が崩れていませんように………。
あなたを騙した夏の夜
塚本正巳
恋愛
亜美と智也と勇輝は、幼稚園時代からの幼馴染だ。
ある夏の朝、故郷で家業を継いだ幼馴染から、亜美の携帯電話にメッセージが入った。これから夫と二人の子供を連れて帰省しようとしていた亜美は、そのメッセージを読んで懐かしい過去を思い出していく。
中学生の頃までとても仲が良かった亜美たち三人は、高校入学を機にそれまでの絆を失っていった。次第に思い出深い砂浜にも集まらなくなった三人は、半ば過去の絆を忘れかけていた。
高校三年生の亜美が起こした事件がきっかけとなり、三人は再会の機会を得る。思春期の悩みと感情が複雑に混ざり合い、うまくいかなくなっていた三人の関係はさらに悪化するように思われたが……。
【完結】そんなに怖いなら近付かないで下さいませ! と口にした後、隣国の王子様に執着されまして
Rohdea
恋愛
────この自慢の髪が凶器のようで怖いですって!? それなら、近付かないで下さいませ!!
幼い頃から自分は王太子妃になるとばかり信じて生きてきた
凶器のような縦ロールが特徴の侯爵令嬢のミュゼット。
(別名ドリル令嬢)
しかし、婚約者に選ばれたのは昔からライバル視していた別の令嬢!
悔しさにその令嬢に絡んでみるも空振りばかり……
何故か自分と同じ様に王太子妃の座を狙うピンク頭の男爵令嬢といがみ合う毎日を経て分かった事は、
王太子殿下は婚約者を溺愛していて、自分の入る余地はどこにも無いという事だけだった。
そして、ピンク頭が何やら処分を受けて目の前から去った後、
自分に残ったのは、凶器と称されるこの縦ロール頭だけ。
そんな傷心のドリル令嬢、ミュゼットの前に現れたのはなんと……
留学生の隣国の王子様!?
でも、何故か構ってくるこの王子、どうも自国に“ゆるふわ頭”の婚約者がいる様子……?
今度はドリル令嬢 VS ゆるふわ令嬢の戦いが勃発──!?
※そんなに~シリーズ(勝手に命名)の3作目になります。
リクエストがありました、
『そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして』
に出てきて縦ロールを振り回していたドリル令嬢、ミュゼットの話です。
2022.3.3 タグ追加
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる