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32.まずいことになったかもしれない05(王太子(フアナの婚約者)視点)
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首を締め上げられて、自身を睨みつけているフアナの瞳を見た時に、頭の中に蘇るのは、幼い頃の光景、初恋をしたと思っていた日の記憶。
あれは、まだ僕が幼い日、王太子に生まれた僕にとってこの世界の人間は全てが下だと思っていた。
だから何をしても許されると信じていた。
その日は、何故か城の外が気になって、僕は城を抜け出して城下町に行った。城下町は今まで過ごしてきた王城と違って平民たちが楽し気に暮らしているのが分かった。
けれど、その誰もが自分より下の身分で僕にひれ伏すべきと考えてた。
だから、僕は片っ端から彼らを侮辱して回った。
今考えたらだいぶ頭がおかしいがその時は当たり前だと思った。
大体の平民たちは、僕の身なりから貴族の子息だと判断したのか目を合わせず適当に、僕の愚かな言葉を聞いても苦笑いをして知らないふりをしてくれた。
けれど、それはあくまで大人たちだけで、僕と同じ年の子供たちは当然そんな様子に苛立ったのだろう。
記憶では食堂か何かをやっている母親に対して、
「店が汚い」「きもちわるい」
と言った時だった。その店の中から、今も忘れもしないひとりの少女が現れた。
今ならはっきり思い出せた。
黒髪にブラウンの瞳のなんの変哲もない少女が僕の前までやってきた。
そして、無言でいきなり首を今のフアナのように締め上げたのだ。
その手は泥まみれで正直触られただけでも嫌だったが息ができずそれどころではない。
「私たち平民が泥まみれに生きてるのかっこ悪いと思ってるんじゃないですか?」
彼女の瞳には怒りて謎の情熱が湧き上がっていた。
首を絞め上げられている僕は言葉を紡げなかったが生まれて初めて純粋に怖いと感じた。
「私達は生き生きしてるよ!!自分らしさを感じられるよ!!泥んこばんざーーーい!!ありがとうっ!!」
彼女の言動はなにひとつ理解できなかった。
けれどその顔が気が狂ったように嬉しそうに笑う姿から目が離せない。
そんな、僕に彼女はさらに言葉を続けた。
「どろんこバンザイ!!この街は綺麗だよね…。輝いてるよね。川のように。でも、君は嫉妬、悪口 自分のことばっか考えてんじゃねぇか?そんなのすべて洗い流しちゃえ!!変われるよ…。そうすれば川のように、みんなは君の思いを…飲み込んでくれるさ。自然が一番!!」
一気に捲し立てられたが、全くわからない。同じ言語なのに頭にまるで入ってこない。
しかし、僕の生殺与奪の権利を今間違いなく持つ少女に幼い僕は、圧倒されて、畏怖し鼓動が早まるのが分かった。
ずっと城の中で大切に育てられた僕にはあまりにもその生々しい感覚が斬新だった。
「あっ……あっ」
小さく呻きながら僕はあまりの自体に漏らしてしまった。
しかし、恥辱にまみれたはずのその瞬間全てから解脱するような高揚感を同時に抱いた。
間違いない、性の目覚めだった。
「汚い!!」
漏らした僕を突然ゴミのように捨てて振り向くこともなく少女は店の中に消えた。
その立ち去る後ろ姿を眺めながら、初めて味わった高揚感を忘れることができなかった。
彼女がフアナではないことは分かっているが、あの日の高揚感に似たものを今また抱いていた。
(まずい、これはダメな感情だ)
今ならそれが背徳的な快楽だと分かる。良くないタイプの性癖を僕は持ってしまっているのだ。
けれど、今フアナに首を絞められているのに、生殺与奪を握られているのに、僕の胸はドキドキしていてさらに蔑むように見つめられることに快楽を覚えてしまっているなんて、隠さないといけない、隠さないと……。
そう思った時、不意にフアナの手が首から離れてそのまま僕は地面に落下する。
「うぎぃっ!!」
落下して地面にひれ伏した僕の目にうつるのは、フアナの側にひとりの少女が近づいて、ハンカチをフアナに手渡した姿だった。
その瞬間、僕の心臓が今までにないほどに震えたのが分かった。
間違いない、あの日、僕の首を絞めて置き去りにした、あの黒髪にブラウンの瞳の少女がフアナの横に立って居たのだ。
あれは、まだ僕が幼い日、王太子に生まれた僕にとってこの世界の人間は全てが下だと思っていた。
だから何をしても許されると信じていた。
その日は、何故か城の外が気になって、僕は城を抜け出して城下町に行った。城下町は今まで過ごしてきた王城と違って平民たちが楽し気に暮らしているのが分かった。
けれど、その誰もが自分より下の身分で僕にひれ伏すべきと考えてた。
だから、僕は片っ端から彼らを侮辱して回った。
今考えたらだいぶ頭がおかしいがその時は当たり前だと思った。
大体の平民たちは、僕の身なりから貴族の子息だと判断したのか目を合わせず適当に、僕の愚かな言葉を聞いても苦笑いをして知らないふりをしてくれた。
けれど、それはあくまで大人たちだけで、僕と同じ年の子供たちは当然そんな様子に苛立ったのだろう。
記憶では食堂か何かをやっている母親に対して、
「店が汚い」「きもちわるい」
と言った時だった。その店の中から、今も忘れもしないひとりの少女が現れた。
今ならはっきり思い出せた。
黒髪にブラウンの瞳のなんの変哲もない少女が僕の前までやってきた。
そして、無言でいきなり首を今のフアナのように締め上げたのだ。
その手は泥まみれで正直触られただけでも嫌だったが息ができずそれどころではない。
「私たち平民が泥まみれに生きてるのかっこ悪いと思ってるんじゃないですか?」
彼女の瞳には怒りて謎の情熱が湧き上がっていた。
首を絞め上げられている僕は言葉を紡げなかったが生まれて初めて純粋に怖いと感じた。
「私達は生き生きしてるよ!!自分らしさを感じられるよ!!泥んこばんざーーーい!!ありがとうっ!!」
彼女の言動はなにひとつ理解できなかった。
けれどその顔が気が狂ったように嬉しそうに笑う姿から目が離せない。
そんな、僕に彼女はさらに言葉を続けた。
「どろんこバンザイ!!この街は綺麗だよね…。輝いてるよね。川のように。でも、君は嫉妬、悪口 自分のことばっか考えてんじゃねぇか?そんなのすべて洗い流しちゃえ!!変われるよ…。そうすれば川のように、みんなは君の思いを…飲み込んでくれるさ。自然が一番!!」
一気に捲し立てられたが、全くわからない。同じ言語なのに頭にまるで入ってこない。
しかし、僕の生殺与奪の権利を今間違いなく持つ少女に幼い僕は、圧倒されて、畏怖し鼓動が早まるのが分かった。
ずっと城の中で大切に育てられた僕にはあまりにもその生々しい感覚が斬新だった。
「あっ……あっ」
小さく呻きながら僕はあまりの自体に漏らしてしまった。
しかし、恥辱にまみれたはずのその瞬間全てから解脱するような高揚感を同時に抱いた。
間違いない、性の目覚めだった。
「汚い!!」
漏らした僕を突然ゴミのように捨てて振り向くこともなく少女は店の中に消えた。
その立ち去る後ろ姿を眺めながら、初めて味わった高揚感を忘れることができなかった。
彼女がフアナではないことは分かっているが、あの日の高揚感に似たものを今また抱いていた。
(まずい、これはダメな感情だ)
今ならそれが背徳的な快楽だと分かる。良くないタイプの性癖を僕は持ってしまっているのだ。
けれど、今フアナに首を絞められているのに、生殺与奪を握られているのに、僕の胸はドキドキしていてさらに蔑むように見つめられることに快楽を覚えてしまっているなんて、隠さないといけない、隠さないと……。
そう思った時、不意にフアナの手が首から離れてそのまま僕は地面に落下する。
「うぎぃっ!!」
落下して地面にひれ伏した僕の目にうつるのは、フアナの側にひとりの少女が近づいて、ハンカチをフアナに手渡した姿だった。
その瞬間、僕の心臓が今までにないほどに震えたのが分かった。
間違いない、あの日、僕の首を絞めて置き去りにした、あの黒髪にブラウンの瞳の少女がフアナの横に立って居たのだ。
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