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28.失われた記憶と悪夢02(カール視点)
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魔法使いの説明で、俺にも継母が薬を盛っていたことが分かった。どうやら盛れらていた薬は毒ではないが精神に作用する呪いのようなものだそうだ。
その言葉を聞いて呆然とした。
そして、それと同時に涙が零れた。それは自分を憐れんだからではなくあまりの不甲斐なさからだった。
(俺は母と約束したのに、フアナを守るって。それなのに、俺は、薬の作用とはいえフアナを……)
ベッドの上で眠るその青あざめた顔を眺めながら、母の死に際を思い出した時、たとえ許されなくても目をフアナが開けてくれたならまずは謝ろうと誓った。
そんな俺をジッと見つめていた魔法使いが何故か複雑な顔で一言告げた。
「小公爵、君の今の気持ちは言葉にすることは難しいと思う。だけど、あまり無理をしてはいけない」
「……ありがとう」
その澄んだアイスブルーの瞳を見つめた時、今まで魔法使いという存在をただの他人の価値観に振り回されて差別していた自分を恥じた。
「アインハルト、その、貴方にお願いがある」
「何かな??」
「この話は、フアナにも大叔父上にもしないでほしい」
俺の言葉に、アインハルトの表情が曇った。
「なぜ??例の継母は、フアナ嬢に対する虐待についての嫌疑もある。だから、君がされたこともつまびらかにいつかなるだろう」
「分かっている。あの女を裁くためには俺に対して薬を盛っていた事実も必要だ。けれどそれをその時まで隠していてほしい。そうしなければフアナが、もしこの事情を知って少しでも俺に対して罪悪感を抱くことがあったらそれはだめだ。そんなことでこれ以上フアナの心を重くしたくはない」
今のフアナは少しでも気を晴らす必要があるはずだ。そのためなら、自分は妹の痛みと怒りを少しでも受け止めてあげたいと
「……なるほど。でも、そうしたらフアナ嬢は真実を知らないから今まで通り君を憎むし、たとえ謝罪しても許してくれないだろう。それでも、君は真実を明かす必要がある時まで隠したい??」
幼い少年の見た目をしているが、大叔父上より年上の彼の目には思慮深い。その瞳を見つめ返してコクリと頷く。
「……わかった、約束しよう。小公爵の一番良いところを貴方を愛してくれる人達に明かさないと」
少し皮肉めいた物言いだったけれど、それで構わなかった。
その後、彼と少し話したことではじめて友人ができた気がした。今まで俺の周りには確かに同世代の話し相手はいたけれど彼らと話した内容も顔もはっきりと思い出せなかった。
それについて話すと、アインハルトはとても悲し気に、
「『鏡の破片』の影響で青春を失ってしまったのだね。これは許さることではない。呪いで人々の幸福を奪うことは魔法使いが一番してはいけないことだ。そして、魔法搭の主である以上、この行いをした魔女を必ず捕らえて然るべき罰を与えることを誓おう」
と答えた。
その後もしばらく話していたが、ずっと徹夜をしていた影響もあり俺はそのまま意識を失ってしまったのだった。
その言葉を聞いて呆然とした。
そして、それと同時に涙が零れた。それは自分を憐れんだからではなくあまりの不甲斐なさからだった。
(俺は母と約束したのに、フアナを守るって。それなのに、俺は、薬の作用とはいえフアナを……)
ベッドの上で眠るその青あざめた顔を眺めながら、母の死に際を思い出した時、たとえ許されなくても目をフアナが開けてくれたならまずは謝ろうと誓った。
そんな俺をジッと見つめていた魔法使いが何故か複雑な顔で一言告げた。
「小公爵、君の今の気持ちは言葉にすることは難しいと思う。だけど、あまり無理をしてはいけない」
「……ありがとう」
その澄んだアイスブルーの瞳を見つめた時、今まで魔法使いという存在をただの他人の価値観に振り回されて差別していた自分を恥じた。
「アインハルト、その、貴方にお願いがある」
「何かな??」
「この話は、フアナにも大叔父上にもしないでほしい」
俺の言葉に、アインハルトの表情が曇った。
「なぜ??例の継母は、フアナ嬢に対する虐待についての嫌疑もある。だから、君がされたこともつまびらかにいつかなるだろう」
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「……わかった、約束しよう。小公爵の一番良いところを貴方を愛してくれる人達に明かさないと」
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