29 / 38
28.失われた記憶と悪夢02(カール視点)
しおりを挟む
魔法使いの説明で、俺にも継母が薬を盛っていたことが分かった。どうやら盛れらていた薬は毒ではないが精神に作用する呪いのようなものだそうだ。
その言葉を聞いて呆然とした。
そして、それと同時に涙が零れた。それは自分を憐れんだからではなくあまりの不甲斐なさからだった。
(俺は母と約束したのに、フアナを守るって。それなのに、俺は、薬の作用とはいえフアナを……)
ベッドの上で眠るその青あざめた顔を眺めながら、母の死に際を思い出した時、たとえ許されなくても目をフアナが開けてくれたならまずは謝ろうと誓った。
そんな俺をジッと見つめていた魔法使いが何故か複雑な顔で一言告げた。
「小公爵、君の今の気持ちは言葉にすることは難しいと思う。だけど、あまり無理をしてはいけない」
「……ありがとう」
その澄んだアイスブルーの瞳を見つめた時、今まで魔法使いという存在をただの他人の価値観に振り回されて差別していた自分を恥じた。
「アインハルト、その、貴方にお願いがある」
「何かな??」
「この話は、フアナにも大叔父上にもしないでほしい」
俺の言葉に、アインハルトの表情が曇った。
「なぜ??例の継母は、フアナ嬢に対する虐待についての嫌疑もある。だから、君がされたこともつまびらかにいつかなるだろう」
「分かっている。あの女を裁くためには俺に対して薬を盛っていた事実も必要だ。けれどそれをその時まで隠していてほしい。そうしなければフアナが、もしこの事情を知って少しでも俺に対して罪悪感を抱くことがあったらそれはだめだ。そんなことでこれ以上フアナの心を重くしたくはない」
今のフアナは少しでも気を晴らす必要があるはずだ。そのためなら、自分は妹の痛みと怒りを少しでも受け止めてあげたいと
「……なるほど。でも、そうしたらフアナ嬢は真実を知らないから今まで通り君を憎むし、たとえ謝罪しても許してくれないだろう。それでも、君は真実を明かす必要がある時まで隠したい??」
幼い少年の見た目をしているが、大叔父上より年上の彼の目には思慮深い。その瞳を見つめ返してコクリと頷く。
「……わかった、約束しよう。小公爵の一番良いところを貴方を愛してくれる人達に明かさないと」
少し皮肉めいた物言いだったけれど、それで構わなかった。
その後、彼と少し話したことではじめて友人ができた気がした。今まで俺の周りには確かに同世代の話し相手はいたけれど彼らと話した内容も顔もはっきりと思い出せなかった。
それについて話すと、アインハルトはとても悲し気に、
「『鏡の破片』の影響で青春を失ってしまったのだね。これは許さることではない。呪いで人々の幸福を奪うことは魔法使いが一番してはいけないことだ。そして、魔法搭の主である以上、この行いをした魔女を必ず捕らえて然るべき罰を与えることを誓おう」
と答えた。
その後もしばらく話していたが、ずっと徹夜をしていた影響もあり俺はそのまま意識を失ってしまったのだった。
その言葉を聞いて呆然とした。
そして、それと同時に涙が零れた。それは自分を憐れんだからではなくあまりの不甲斐なさからだった。
(俺は母と約束したのに、フアナを守るって。それなのに、俺は、薬の作用とはいえフアナを……)
ベッドの上で眠るその青あざめた顔を眺めながら、母の死に際を思い出した時、たとえ許されなくても目をフアナが開けてくれたならまずは謝ろうと誓った。
そんな俺をジッと見つめていた魔法使いが何故か複雑な顔で一言告げた。
「小公爵、君の今の気持ちは言葉にすることは難しいと思う。だけど、あまり無理をしてはいけない」
「……ありがとう」
その澄んだアイスブルーの瞳を見つめた時、今まで魔法使いという存在をただの他人の価値観に振り回されて差別していた自分を恥じた。
「アインハルト、その、貴方にお願いがある」
「何かな??」
「この話は、フアナにも大叔父上にもしないでほしい」
俺の言葉に、アインハルトの表情が曇った。
「なぜ??例の継母は、フアナ嬢に対する虐待についての嫌疑もある。だから、君がされたこともつまびらかにいつかなるだろう」
「分かっている。あの女を裁くためには俺に対して薬を盛っていた事実も必要だ。けれどそれをその時まで隠していてほしい。そうしなければフアナが、もしこの事情を知って少しでも俺に対して罪悪感を抱くことがあったらそれはだめだ。そんなことでこれ以上フアナの心を重くしたくはない」
今のフアナは少しでも気を晴らす必要があるはずだ。そのためなら、自分は妹の痛みと怒りを少しでも受け止めてあげたいと
「……なるほど。でも、そうしたらフアナ嬢は真実を知らないから今まで通り君を憎むし、たとえ謝罪しても許してくれないだろう。それでも、君は真実を明かす必要がある時まで隠したい??」
幼い少年の見た目をしているが、大叔父上より年上の彼の目には思慮深い。その瞳を見つめ返してコクリと頷く。
「……わかった、約束しよう。小公爵の一番良いところを貴方を愛してくれる人達に明かさないと」
少し皮肉めいた物言いだったけれど、それで構わなかった。
その後、彼と少し話したことではじめて友人ができた気がした。今まで俺の周りには確かに同世代の話し相手はいたけれど彼らと話した内容も顔もはっきりと思い出せなかった。
それについて話すと、アインハルトはとても悲し気に、
「『鏡の破片』の影響で青春を失ってしまったのだね。これは許さることではない。呪いで人々の幸福を奪うことは魔法使いが一番してはいけないことだ。そして、魔法搭の主である以上、この行いをした魔女を必ず捕らえて然るべき罰を与えることを誓おう」
と答えた。
その後もしばらく話していたが、ずっと徹夜をしていた影響もあり俺はそのまま意識を失ってしまったのだった。
1
お気に入りに追加
1,138
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる