26 / 38
25.消えた美男子と病を治すために必要なこと
しおりを挟む
彼が名前を言おうとした時、何故か再び意識が遠のいてしまった。
結局、フアナが言おうとしたことも彼の名前も分からないまま意識を取り戻したのはそれから体内時計で図るに、2時間後のことだった。
目覚めたのは先ほどと同じ辺境伯領で大パパが準備してくれた、部屋だった。
「あれ??美男子は??」
「美男子??僕ならここにいるが……」
先ほど美男子に握られていた手を今は大パパが握りしめていた。確かに大パパは強者で美男子ではあるけれど私は狂気的な思考回路のアラフィフ身内に対しては筋肉のトキメキはない。
「そんなことより、私は……」
「あの日、アインハルトを乗せて腕立てをしていた最中に血を吐いて倒れてしまったんだよ。可哀そうに、どうしてフアナがこんな目に遇わないといけない」
涙を流しながら優しく手を握りしめてくれているその姿には、トキメキはないがあたたかさを感じる。大パパの周囲を見渡すと近くの椅子に腰かけてカールが完全に寝ている。さらに、私を立って見つめながらアンも大粒の涙を流していた。
そうこまで確認して、アインハルトの姿がないことに気付いた。
「アインハルトはどこへ行ったの??」
私が倒れた時は筋トレ中だったので彼しかいなかった。その言葉に大パパは優しく、
「アインハルトはフアナにずっと治癒魔法をかけていたんだ。ただ、流石に徹夜での治療は堪えたので今は僕と交代して寝ている」
と答えてくれた。
「治癒魔法では根本的にはこの毒が原因の病は治らないと聞きましたが……」
「ああ、そうだ。とても悔しいがその毒は治癒魔法では取り除くことができない。ただ、治す方法がない訳ではないことはアインハルトが寝ているフアナの治療をしたことで判明した」
その言葉に、私の中のフアナの感情が溢れてきた。夢が本当ならフアナは今まで何度もこの毒に殺されてきたのだ。一度だって治す方法は見つからなかった。
それが、今回は見つかったということで自然と涙が頬を伝うのが分かった。
「どうすれば、この毒を病を消すことができますか??」
フアナの言葉に、大パパは今までの優し気な表情を悲し気に歪める。そして私の涙を優しくその無骨な指で拭いながら答える。
「その病を治すためには、その毒を作った人間を探す必要がある。これは、毒と言っているがどちらかというと呪いに近いものだったんだ。例えるならば粉末にした悪意。はじまりは小さな悪意から少しずつ少しずつ対象を蝕んで、最期には命を奪うもの。だから、呪いを解くことができれば治せる」
大パパの言葉に体が震えるのが分かった。『呪い』なんて私は今の今まで信じたことはなかった。私は目に見えるもの以外は信じないタイプの前世は人間だった。
けれど、この世界には魔法という目に見えないものが確かに存在し、呪いまで存在するというのだ。
こうなってくると、やはり筋肉を最大限まで鍛えなければ太刀打ちは難しいかもしれない。そう筋トレへの決意を深めていたところで大パパが私の髪をまるで子供をあやすように優しく撫でた。
「それに、僕はこれによく似たものが使われたと思われる事例を知っている」
「同じ毒が使われた事件があったのですか??」
「表向きは今も病死だとか呪いだとか言われているし、症状はフアナのものより苛烈だった。けれど、毒というより明らかな呪いであるという点が共通する事件がとある男爵家で起きたんだ。そして、その男爵家に嫁いでいたのが、フアナとカールの継母、アウストリア公爵家を支配しているクリスティーナだ」
点が線で繋がるとはまさにこの感覚だった。私は、すぐにでも継母を筋肉で屠り口を割らせたいと考えた。
「なるほど、継母をしめれば私の病も治るのですね」
「ああ、それが一番手っ取り早い。だからそのための準備をしようと思っている」
大パパは微笑む。こういう時同じ筋肉を持つと思われる人は話が早い。
結局、フアナが言おうとしたことも彼の名前も分からないまま意識を取り戻したのはそれから体内時計で図るに、2時間後のことだった。
目覚めたのは先ほどと同じ辺境伯領で大パパが準備してくれた、部屋だった。
「あれ??美男子は??」
「美男子??僕ならここにいるが……」
先ほど美男子に握られていた手を今は大パパが握りしめていた。確かに大パパは強者で美男子ではあるけれど私は狂気的な思考回路のアラフィフ身内に対しては筋肉のトキメキはない。
「そんなことより、私は……」
「あの日、アインハルトを乗せて腕立てをしていた最中に血を吐いて倒れてしまったんだよ。可哀そうに、どうしてフアナがこんな目に遇わないといけない」
涙を流しながら優しく手を握りしめてくれているその姿には、トキメキはないがあたたかさを感じる。大パパの周囲を見渡すと近くの椅子に腰かけてカールが完全に寝ている。さらに、私を立って見つめながらアンも大粒の涙を流していた。
そうこまで確認して、アインハルトの姿がないことに気付いた。
「アインハルトはどこへ行ったの??」
私が倒れた時は筋トレ中だったので彼しかいなかった。その言葉に大パパは優しく、
「アインハルトはフアナにずっと治癒魔法をかけていたんだ。ただ、流石に徹夜での治療は堪えたので今は僕と交代して寝ている」
と答えてくれた。
「治癒魔法では根本的にはこの毒が原因の病は治らないと聞きましたが……」
「ああ、そうだ。とても悔しいがその毒は治癒魔法では取り除くことができない。ただ、治す方法がない訳ではないことはアインハルトが寝ているフアナの治療をしたことで判明した」
その言葉に、私の中のフアナの感情が溢れてきた。夢が本当ならフアナは今まで何度もこの毒に殺されてきたのだ。一度だって治す方法は見つからなかった。
それが、今回は見つかったということで自然と涙が頬を伝うのが分かった。
「どうすれば、この毒を病を消すことができますか??」
フアナの言葉に、大パパは今までの優し気な表情を悲し気に歪める。そして私の涙を優しくその無骨な指で拭いながら答える。
「その病を治すためには、その毒を作った人間を探す必要がある。これは、毒と言っているがどちらかというと呪いに近いものだったんだ。例えるならば粉末にした悪意。はじまりは小さな悪意から少しずつ少しずつ対象を蝕んで、最期には命を奪うもの。だから、呪いを解くことができれば治せる」
大パパの言葉に体が震えるのが分かった。『呪い』なんて私は今の今まで信じたことはなかった。私は目に見えるもの以外は信じないタイプの前世は人間だった。
けれど、この世界には魔法という目に見えないものが確かに存在し、呪いまで存在するというのだ。
こうなってくると、やはり筋肉を最大限まで鍛えなければ太刀打ちは難しいかもしれない。そう筋トレへの決意を深めていたところで大パパが私の髪をまるで子供をあやすように優しく撫でた。
「それに、僕はこれによく似たものが使われたと思われる事例を知っている」
「同じ毒が使われた事件があったのですか??」
「表向きは今も病死だとか呪いだとか言われているし、症状はフアナのものより苛烈だった。けれど、毒というより明らかな呪いであるという点が共通する事件がとある男爵家で起きたんだ。そして、その男爵家に嫁いでいたのが、フアナとカールの継母、アウストリア公爵家を支配しているクリスティーナだ」
点が線で繋がるとはまさにこの感覚だった。私は、すぐにでも継母を筋肉で屠り口を割らせたいと考えた。
「なるほど、継母をしめれば私の病も治るのですね」
「ああ、それが一番手っ取り早い。だからそのための準備をしようと思っている」
大パパは微笑む。こういう時同じ筋肉を持つと思われる人は話が早い。
5
お気に入りに追加
1,138
あなたにおすすめの小説

あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載

心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる