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25.消えた美男子と病を治すために必要なこと
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彼が名前を言おうとした時、何故か再び意識が遠のいてしまった。
結局、フアナが言おうとしたことも彼の名前も分からないまま意識を取り戻したのはそれから体内時計で図るに、2時間後のことだった。
目覚めたのは先ほどと同じ辺境伯領で大パパが準備してくれた、部屋だった。
「あれ??美男子は??」
「美男子??僕ならここにいるが……」
先ほど美男子に握られていた手を今は大パパが握りしめていた。確かに大パパは強者で美男子ではあるけれど私は狂気的な思考回路のアラフィフ身内に対しては筋肉のトキメキはない。
「そんなことより、私は……」
「あの日、アインハルトを乗せて腕立てをしていた最中に血を吐いて倒れてしまったんだよ。可哀そうに、どうしてフアナがこんな目に遇わないといけない」
涙を流しながら優しく手を握りしめてくれているその姿には、トキメキはないがあたたかさを感じる。大パパの周囲を見渡すと近くの椅子に腰かけてカールが完全に寝ている。さらに、私を立って見つめながらアンも大粒の涙を流していた。
そうこまで確認して、アインハルトの姿がないことに気付いた。
「アインハルトはどこへ行ったの??」
私が倒れた時は筋トレ中だったので彼しかいなかった。その言葉に大パパは優しく、
「アインハルトはフアナにずっと治癒魔法をかけていたんだ。ただ、流石に徹夜での治療は堪えたので今は僕と交代して寝ている」
と答えてくれた。
「治癒魔法では根本的にはこの毒が原因の病は治らないと聞きましたが……」
「ああ、そうだ。とても悔しいがその毒は治癒魔法では取り除くことができない。ただ、治す方法がない訳ではないことはアインハルトが寝ているフアナの治療をしたことで判明した」
その言葉に、私の中のフアナの感情が溢れてきた。夢が本当ならフアナは今まで何度もこの毒に殺されてきたのだ。一度だって治す方法は見つからなかった。
それが、今回は見つかったということで自然と涙が頬を伝うのが分かった。
「どうすれば、この毒を病を消すことができますか??」
フアナの言葉に、大パパは今までの優し気な表情を悲し気に歪める。そして私の涙を優しくその無骨な指で拭いながら答える。
「その病を治すためには、その毒を作った人間を探す必要がある。これは、毒と言っているがどちらかというと呪いに近いものだったんだ。例えるならば粉末にした悪意。はじまりは小さな悪意から少しずつ少しずつ対象を蝕んで、最期には命を奪うもの。だから、呪いを解くことができれば治せる」
大パパの言葉に体が震えるのが分かった。『呪い』なんて私は今の今まで信じたことはなかった。私は目に見えるもの以外は信じないタイプの前世は人間だった。
けれど、この世界には魔法という目に見えないものが確かに存在し、呪いまで存在するというのだ。
こうなってくると、やはり筋肉を最大限まで鍛えなければ太刀打ちは難しいかもしれない。そう筋トレへの決意を深めていたところで大パパが私の髪をまるで子供をあやすように優しく撫でた。
「それに、僕はこれによく似たものが使われたと思われる事例を知っている」
「同じ毒が使われた事件があったのですか??」
「表向きは今も病死だとか呪いだとか言われているし、症状はフアナのものより苛烈だった。けれど、毒というより明らかな呪いであるという点が共通する事件がとある男爵家で起きたんだ。そして、その男爵家に嫁いでいたのが、フアナとカールの継母、アウストリア公爵家を支配しているクリスティーナだ」
点が線で繋がるとはまさにこの感覚だった。私は、すぐにでも継母を筋肉で屠り口を割らせたいと考えた。
「なるほど、継母をしめれば私の病も治るのですね」
「ああ、それが一番手っ取り早い。だからそのための準備をしようと思っている」
大パパは微笑む。こういう時同じ筋肉を持つと思われる人は話が早い。
結局、フアナが言おうとしたことも彼の名前も分からないまま意識を取り戻したのはそれから体内時計で図るに、2時間後のことだった。
目覚めたのは先ほどと同じ辺境伯領で大パパが準備してくれた、部屋だった。
「あれ??美男子は??」
「美男子??僕ならここにいるが……」
先ほど美男子に握られていた手を今は大パパが握りしめていた。確かに大パパは強者で美男子ではあるけれど私は狂気的な思考回路のアラフィフ身内に対しては筋肉のトキメキはない。
「そんなことより、私は……」
「あの日、アインハルトを乗せて腕立てをしていた最中に血を吐いて倒れてしまったんだよ。可哀そうに、どうしてフアナがこんな目に遇わないといけない」
涙を流しながら優しく手を握りしめてくれているその姿には、トキメキはないがあたたかさを感じる。大パパの周囲を見渡すと近くの椅子に腰かけてカールが完全に寝ている。さらに、私を立って見つめながらアンも大粒の涙を流していた。
そうこまで確認して、アインハルトの姿がないことに気付いた。
「アインハルトはどこへ行ったの??」
私が倒れた時は筋トレ中だったので彼しかいなかった。その言葉に大パパは優しく、
「アインハルトはフアナにずっと治癒魔法をかけていたんだ。ただ、流石に徹夜での治療は堪えたので今は僕と交代して寝ている」
と答えてくれた。
「治癒魔法では根本的にはこの毒が原因の病は治らないと聞きましたが……」
「ああ、そうだ。とても悔しいがその毒は治癒魔法では取り除くことができない。ただ、治す方法がない訳ではないことはアインハルトが寝ているフアナの治療をしたことで判明した」
その言葉に、私の中のフアナの感情が溢れてきた。夢が本当ならフアナは今まで何度もこの毒に殺されてきたのだ。一度だって治す方法は見つからなかった。
それが、今回は見つかったということで自然と涙が頬を伝うのが分かった。
「どうすれば、この毒を病を消すことができますか??」
フアナの言葉に、大パパは今までの優し気な表情を悲し気に歪める。そして私の涙を優しくその無骨な指で拭いながら答える。
「その病を治すためには、その毒を作った人間を探す必要がある。これは、毒と言っているがどちらかというと呪いに近いものだったんだ。例えるならば粉末にした悪意。はじまりは小さな悪意から少しずつ少しずつ対象を蝕んで、最期には命を奪うもの。だから、呪いを解くことができれば治せる」
大パパの言葉に体が震えるのが分かった。『呪い』なんて私は今の今まで信じたことはなかった。私は目に見えるもの以外は信じないタイプの前世は人間だった。
けれど、この世界には魔法という目に見えないものが確かに存在し、呪いまで存在するというのだ。
こうなってくると、やはり筋肉を最大限まで鍛えなければ太刀打ちは難しいかもしれない。そう筋トレへの決意を深めていたところで大パパが私の髪をまるで子供をあやすように優しく撫でた。
「それに、僕はこれによく似たものが使われたと思われる事例を知っている」
「同じ毒が使われた事件があったのですか??」
「表向きは今も病死だとか呪いだとか言われているし、症状はフアナのものより苛烈だった。けれど、毒というより明らかな呪いであるという点が共通する事件がとある男爵家で起きたんだ。そして、その男爵家に嫁いでいたのが、フアナとカールの継母、アウストリア公爵家を支配しているクリスティーナだ」
点が線で繋がるとはまさにこの感覚だった。私は、すぐにでも継母を筋肉で屠り口を割らせたいと考えた。
「なるほど、継母をしめれば私の病も治るのですね」
「ああ、それが一番手っ取り早い。だからそのための準備をしようと思っている」
大パパは微笑む。こういう時同じ筋肉を持つと思われる人は話が早い。
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