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24.夢の中の迎合と謎の美青年にときめく筋肉(しんぞう)
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目を開くと、そこは見たことのない真っ白い場所だった。例えるならばまるで白紙で作った四角い部屋の中に居るように何もかもが真っ白い場所だった。
「ここはどこだろう??」
前世も含めてきたことのない空間に思わず体の神経を研ぎ澄ます、もしかしたら倒れた際に無防備になった際に何者かに攫われた可能性もある。
全ての神経と筋肉を地球と一体化させる。そうして気付いたのはこの場所は完全に無音だということだった。
「……ありえない。現実でこんな場所があるのか??」
「そうね、ここは夢よ」
そう言って私の目の前に彼女は現れた。銀色の美しい髪とサファイアの瞳をした美少女。ゲームで見たままのフアナが立体化した存在がそこに立っていた。
「フアナ??」
「そう、貴方に言いたいことがあってここに呼び出したのよ」
アルカイックスマイルを浮かべてそう言ったフアナに私は首を傾げた。今は私もフアナのはずなので変な気持ちだったのとフアナのような貴族令嬢が不良のように呼び出しをするというのがチグハグに思えた。
「貴方が、私よりも強いことはわかっているわ。だから貴方が一瞬考えた喧嘩なんかはするつもりはない。ただ、私と貴方の意識に違う部分がある、そうね、貴方が前世見た乙女ゲームってものの私と実際の私では違うところがある、それをどうしても伝えたかったの」
フアナが実際にしゃべる姿はあまりに美しい。こんな美少女をないがしろにした連中が全く理解できない。
「貴方は私が王太子を愛して、病で死んでしまう一途で可憐な令嬢とおもっているでしょう??でも私は王太子を一度だって好きだと思ったことはない」
氷の令嬢と呼ばれたのが分かるような冷たい声色で語るフアナの姿に、この間感じたフアナの感情が蘇る。
「……やっぱり。乙女ゲームとその辺りが違うんだな」
「でも、私は知っている。このままいくと貴方が前世ゲームで体験したように、私は何故か婚約破棄後も王太子を愛していたことになり毒によって患った病で死んでしまうのよ」
フアナの顔に浮かんでいるのは、絶望を通り越した悟り、涅槃の境地だった。
「もしかして、フアナは何度もこの世界を繰り返してきたの??誰からも愛されず死んでいく世界を??」
フアナは曖昧な微笑みを浮かべる。その瞬間、私の目からは大量の涙が流れ出していた。つまりこの可憐で美しい人は自身の意思ではどうすることもできない世界に閉じ込められて何度も何度も苦しみ抜いて死んだということだ。
「そう、もう何回も何回も繰り返し続けた。でも、今回は今までと違う、私はひとりではないの貴方が来てくれた」
その言葉に、全筋肉が震えるのが分かった。そして、私は、フアナのその内臓入っていないくらいの細い体を抱きしめた。
彼女は抵抗しなかった。そして、私に抱きしめられたまま話を続けた。
「だからこそ、もう1度抗うと決めたわ」
「もう1度と言わず、何度でも私が居れば抗えるわ。落ちたら、またはいあがってくればいいだけのこと」
「ありがとう」
しばらくふたりは沈黙した。何かを語るよりも必要なことだった。しばらくして、フアナが意を決したように続けた。
「貴方の周りには沢山の敵がいるけれどもっとも恐れなければいけない相手はただひとりだけ。それ以外は、その敵が関与して動かされているだけに過ぎないの。そのもっとも注意すべき敵は……」
フアナが言葉を続けようとした時、空間が急に歪みだした。
「……もう目覚める時間ということか??」
「ああ。だめ、これだけは……」
フアナの声がどんどんまるで距離が離れるように遠ざかる。
私は必死に聞き取ろうとしたがむなしくその先を聞き取れないまま、私はもうすっかり慣れた辺境伯家のベッドで目覚めた。
「よかった、目を覚ました」
目を開けてすぐに声を掛けてきたのは、今まで見たことのないプラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳をした美しい青年だった。
しかも、この青年は私の手を大切なものを包み込むように握りしめているという事実。
「あ、貴方は誰??」
突然のことに私の筋肉がまるで強者を目にした時のようにドキドキと何故かなるのが分かった。
「僕は……」
「ここはどこだろう??」
前世も含めてきたことのない空間に思わず体の神経を研ぎ澄ます、もしかしたら倒れた際に無防備になった際に何者かに攫われた可能性もある。
全ての神経と筋肉を地球と一体化させる。そうして気付いたのはこの場所は完全に無音だということだった。
「……ありえない。現実でこんな場所があるのか??」
「そうね、ここは夢よ」
そう言って私の目の前に彼女は現れた。銀色の美しい髪とサファイアの瞳をした美少女。ゲームで見たままのフアナが立体化した存在がそこに立っていた。
「フアナ??」
「そう、貴方に言いたいことがあってここに呼び出したのよ」
アルカイックスマイルを浮かべてそう言ったフアナに私は首を傾げた。今は私もフアナのはずなので変な気持ちだったのとフアナのような貴族令嬢が不良のように呼び出しをするというのがチグハグに思えた。
「貴方が、私よりも強いことはわかっているわ。だから貴方が一瞬考えた喧嘩なんかはするつもりはない。ただ、私と貴方の意識に違う部分がある、そうね、貴方が前世見た乙女ゲームってものの私と実際の私では違うところがある、それをどうしても伝えたかったの」
フアナが実際にしゃべる姿はあまりに美しい。こんな美少女をないがしろにした連中が全く理解できない。
「貴方は私が王太子を愛して、病で死んでしまう一途で可憐な令嬢とおもっているでしょう??でも私は王太子を一度だって好きだと思ったことはない」
氷の令嬢と呼ばれたのが分かるような冷たい声色で語るフアナの姿に、この間感じたフアナの感情が蘇る。
「……やっぱり。乙女ゲームとその辺りが違うんだな」
「でも、私は知っている。このままいくと貴方が前世ゲームで体験したように、私は何故か婚約破棄後も王太子を愛していたことになり毒によって患った病で死んでしまうのよ」
フアナの顔に浮かんでいるのは、絶望を通り越した悟り、涅槃の境地だった。
「もしかして、フアナは何度もこの世界を繰り返してきたの??誰からも愛されず死んでいく世界を??」
フアナは曖昧な微笑みを浮かべる。その瞬間、私の目からは大量の涙が流れ出していた。つまりこの可憐で美しい人は自身の意思ではどうすることもできない世界に閉じ込められて何度も何度も苦しみ抜いて死んだということだ。
「そう、もう何回も何回も繰り返し続けた。でも、今回は今までと違う、私はひとりではないの貴方が来てくれた」
その言葉に、全筋肉が震えるのが分かった。そして、私は、フアナのその内臓入っていないくらいの細い体を抱きしめた。
彼女は抵抗しなかった。そして、私に抱きしめられたまま話を続けた。
「だからこそ、もう1度抗うと決めたわ」
「もう1度と言わず、何度でも私が居れば抗えるわ。落ちたら、またはいあがってくればいいだけのこと」
「ありがとう」
しばらくふたりは沈黙した。何かを語るよりも必要なことだった。しばらくして、フアナが意を決したように続けた。
「貴方の周りには沢山の敵がいるけれどもっとも恐れなければいけない相手はただひとりだけ。それ以外は、その敵が関与して動かされているだけに過ぎないの。そのもっとも注意すべき敵は……」
フアナが言葉を続けようとした時、空間が急に歪みだした。
「……もう目覚める時間ということか??」
「ああ。だめ、これだけは……」
フアナの声がどんどんまるで距離が離れるように遠ざかる。
私は必死に聞き取ろうとしたがむなしくその先を聞き取れないまま、私はもうすっかり慣れた辺境伯家のベッドで目覚めた。
「よかった、目を覚ました」
目を開けてすぐに声を掛けてきたのは、今まで見たことのないプラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳をした美しい青年だった。
しかも、この青年は私の手を大切なものを包み込むように握りしめているという事実。
「あ、貴方は誰??」
突然のことに私の筋肉がまるで強者を目にした時のようにドキドキと何故かなるのが分かった。
「僕は……」
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