百獣最強と言われた私が転生したのは婚約破棄後に不治の病で死ぬ悪役令嬢でした

ひよこ麺

文字の大きさ
上 下
13 / 38

12.ショタじじいという新ジャンルと白い粉の正体

しおりを挟む
「誰だ??」

見たことがないくらいの絶世の美少年のことをカールも知らないらしく驚いたように問いかけた。すると美少年は蠱惑的な笑みを浮かべながら答える。

「僕の名前はアインハルト。君達の父親の古くからの友人だよ。しかし、随分と不用心に会話しているね」

そうアインハルトが発した瞬間、キンと耳鳴りがしてまるで何か膜でも張ったような奇妙な感覚がした。

「結界くらい張らないと相手に会話が筒抜けだよ」

「結界……まさか、魔法使いか??」

カールの表情が明らかに歪むのが分かった。私の前世の知識ではこの世界は魔法の世界だ。魔法の道具があふれているし、魔法により人々は利便性を享受している。

それなのに、この世界でその魔法を生み出す魔法使いは冷遇されている。魔法がある子供が生まれると逆らえないように隷属の首輪をされて、国の外れの魔法搭に閉じ込められるのだ。

この問題についてゲームではぼんやりと触れられてはいたが、魔法使いの攻略対象はいなかったので結局うやむやなままになっていた記憶がある。

(ただ、確かこれについて元々は魔法使いの攻略対象キャラも作っていたけど諸々の都合で削除されたとかファンブックにかいてあったな……)

だから、この世界では魔法使いとは差別の対象とされているので、目の前の美少年に対してカールは差別的な表情を浮かべているのだろう。

その様子に慣れているのか気にしていないようにアインハルトは続けた。

「そうだよ。もっと言うと魔法搭の主をしている。だからこの国で僕よりすごい魔法使いはいないだろうね」

「えっ、アインハルトさんはどう見ても小〇生じゃないの??あ、いえ、その10歳くらいに見えますが……」

思わず前世の単語が漏れた。魔法搭の主と聞いたら某ハリー〇ッターのダンブル〇アのような白いひげに長髪のご老体を想像してしまうが、どう見てもアインハルトはショタだった。

「ははは、面白いお嬢様だね。僕の父はこの世界で一番の魔法使いで、母は妖精と伝説の狂戦士の血を引く家系だか他人より年を取るのが極端に遅いんだ。ちなみに君らの父親より年上だし、君らの祖父母よりも年上のじじいってヤツだ」

その言葉に何度も確認したがアインハルトの筋組織の年齢は10歳前後だった。私は他人の筋組織を確認することで年齢を確認できる。

(どう考えても筋組織的にも小〇生だと思うけどな……)

黙って、しばらくアインハルトを見つめていたが何故かまるで心を読んだように、

「なるほどなるほど。筋組織から年齢を割り出せるなんて珍しい才能だね」

と心を読まれてびっくりする。彼は底知れない笑顔を浮かべながら、話をはじめた。

「僕は君達の父親と契約している。だから敵ではないから安心して。魔法使いは契約者との約束は破れないからね。そして、昨日君達の父親が襲われる前に受け取ったものがふたつあるのだけど……そのうちひとつこの粉末の正体が分かったよ」

それは昨日、エミリーと仲がよかったメイドから取り上げたもので、フアナの食事に混ぜられていたと思われる白い粉だった。

「……その粉の正体は……」

「はっきりとは分からないしこの瓶程度の量では毒ではない」

絶対毒だと思っていたのでその言葉にがっくりきたが、アインハルトは言葉を続けた。

「けれど、これの粉の成分は体に蓄積されて自分ではそれを取り除けないものなんだ。だから、少量なら影響はないけれど何年も毎日とり続けたら……これは毒に変わる」

その言葉に、私の中のフアナが震えるのが分かった。当然だが毒になるものをどれくらいの期間か分からないが飲まされていたのだ。

そして、それは体になんらかの悪影響を紛れもなく与えていずれは殺すものだと聞いたら普通の令嬢なら、耐え切れないだろう。

「そんな……これはどんな影響が出るのですか??私は……死んでしまうのですか」

そう矢継ぎ早にフアナは縋るようにアインハルトに言った。氷の令嬢などと呼ばれてもまだ15歳で幸せも知らないままで死ぬなんて誰だって不本意だ。

「なんてことだ!!すぐに王家に抗議をしなければ」

黙っていた兄も怒っている。けれど、フアナの心は凪のように鎮まっていた。兄の言葉を信じられないのだ。

「小公爵、今はまだいけない。君達の父親も倒れていて、公爵家も君達の敵である継母が掌握しているんだ。下手に動けば潰されるだけだよ」

「けれど、フアナが、どうして妹がこんなひどい仕打ちを!!」

「お兄様、酷い仕打ちなら今にはじまったことではありません。ただ、流石に今回の件はやりすぎです。だから、王宮へは一度行きましょう」

フアナは兄を睨む。私はそんなフアナを俯瞰する。どうやら私とフアナは同一人物だが心はまだひとつになりきれずどこかまるで離れているようになってしまう時があるらしい。

今は完全にフアナの感情が優勢だ。

「王宮へ行って何をするのかな??」

アインハルトが目の笑わない笑みを浮かべながら告げると、フアナは負けじとアルカイックスマイルで答えた。

「王太子殿下との婚約を解消するためです」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...