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06.筋肉を喜ばせる早朝に様子のおかしい兄に出会った
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翌朝、目を覚ました私は一瞬豪華な部屋の様子に驚いたが、すぐに自分がフアナであることを思い出す。
百獣の女王であるため、体の中に常に朝5時が分かる体内時計を完備しているので、時計がない世界でも間違いなく今は5時だろう。
私は目を覚まして早々、筋肉を喜ばせるべく大きなクローゼットを開けて中身を確認した。しかし、どうあがいても動きにくそうな服しかなかった。
(この中にある服では動きにくいわね……ん??)
メインで着ていただろうドレスはどう考えても動くのに適していなかったが、よく見るとクローゼット内には箱のようなものが積んで置かれていたので、そのひとつを開いてみた。
(これは……懐かしい、うん。キャミソールでこの生地の薄さなら十分運動できそうね)
私は、着ている無駄にフリフリして動きにくい服を脱ぎ捨てるとそのまま該当の服へと着替えて部屋を出た。
時間が早いことと、フアナの部屋があるのは離れでこそないが別棟で他の家族の部屋も近くになくあるのは埃だらけで使われていない部屋ばかりなので特に誰とも会わないまま私は外へ出た。
そこから私は、館の周りで軽くジョギングをはじめる。大体皇居のジョギングコースくらいの距離があることを筋肉で計測し、とりあえずフアナの体を強靭なものとすべく走り込んだ。
走っていると次第に気持ちが良い汗が滴り落ちて体がすっきりしてくるのがわかった。
「よし、もう1周したらとりあえず部屋に戻ろう」
そう考えて走っていると、先ほどまではいなかったどうやら公爵家の騎士達が訓練のために修練場に出てきたのがわかった。
私はその豆粒ほどの大きさほどに離れている騎士の群れをながめながらひとりひとりの倒し方を考えていたのだが、私の殺気に気付いたひとりの騎士がこちらを見つめて動かなくなったのがわかった。
(なんだ??この距離で気付くとは中々面白い男かもしれない。一戦したいな)
生粋の戦闘民族である私は不敵な笑みでその騎士を見返したが、何故か急に熱でも出したように真っ赤な顔になった騎士が、こちらに走ってきた。
近付いてくる男の顔には見覚えがあった。間違いない、彼は兄でこの家の小公爵であるカールだった。確か我が家の騎士団はカールがまとめているとフアナは認識している。
「フアナ、なんて恰好をしているんだ!!」
そう言うなり自身のマントで私を包み込む。そして、おでこをトンと人差し指で軽く小突いた。
「……これを貸してやるから早く部屋に戻れ」
「……」
フアナの記憶の中のカールは母親が亡くなる前までは良い兄だった。けれど母が亡くなって継母と義妹が来てからは私を避けるようになっていた人だ。
義妹のような可愛げのない妹がうっとうしくて距離を置いたのだろう。
私はぼんやりとその顔を見つめる。髪の色や目の色こそ父親と同じだが、顔の造形は亡き母によく似ている。私の視線に気付いたのか急にカールは気まずい様子で顔を伏せるとまるで猫でも追い払うようにシッシと手で払う動作をされる。
「お兄様は、私がお嫌いですからね、目に入るのも嫌だったのでしょう。けれど私もこの家の娘です。筋肉を鍛えたいのでまだしばらく走り込むつもりですのでこのマントはお返しいたします」
そう言って包んできたマントを返そうとしたが、目を見開いてカールは叫んだ。
「嫌い??俺が、フアナを??誰がそんなこと言ったんだ!!大体、部屋に戻れって言ったのはお前が下着姿で走ってるからで、目に入るのが嫌だとかそういうのじゃねぇ!!むしろ、お前のが俺に会いたくなかったはずだろう??」
「えっ??」
百獣の女王であるため、体の中に常に朝5時が分かる体内時計を完備しているので、時計がない世界でも間違いなく今は5時だろう。
私は目を覚まして早々、筋肉を喜ばせるべく大きなクローゼットを開けて中身を確認した。しかし、どうあがいても動きにくそうな服しかなかった。
(この中にある服では動きにくいわね……ん??)
メインで着ていただろうドレスはどう考えても動くのに適していなかったが、よく見るとクローゼット内には箱のようなものが積んで置かれていたので、そのひとつを開いてみた。
(これは……懐かしい、うん。キャミソールでこの生地の薄さなら十分運動できそうね)
私は、着ている無駄にフリフリして動きにくい服を脱ぎ捨てるとそのまま該当の服へと着替えて部屋を出た。
時間が早いことと、フアナの部屋があるのは離れでこそないが別棟で他の家族の部屋も近くになくあるのは埃だらけで使われていない部屋ばかりなので特に誰とも会わないまま私は外へ出た。
そこから私は、館の周りで軽くジョギングをはじめる。大体皇居のジョギングコースくらいの距離があることを筋肉で計測し、とりあえずフアナの体を強靭なものとすべく走り込んだ。
走っていると次第に気持ちが良い汗が滴り落ちて体がすっきりしてくるのがわかった。
「よし、もう1周したらとりあえず部屋に戻ろう」
そう考えて走っていると、先ほどまではいなかったどうやら公爵家の騎士達が訓練のために修練場に出てきたのがわかった。
私はその豆粒ほどの大きさほどに離れている騎士の群れをながめながらひとりひとりの倒し方を考えていたのだが、私の殺気に気付いたひとりの騎士がこちらを見つめて動かなくなったのがわかった。
(なんだ??この距離で気付くとは中々面白い男かもしれない。一戦したいな)
生粋の戦闘民族である私は不敵な笑みでその騎士を見返したが、何故か急に熱でも出したように真っ赤な顔になった騎士が、こちらに走ってきた。
近付いてくる男の顔には見覚えがあった。間違いない、彼は兄でこの家の小公爵であるカールだった。確か我が家の騎士団はカールがまとめているとフアナは認識している。
「フアナ、なんて恰好をしているんだ!!」
そう言うなり自身のマントで私を包み込む。そして、おでこをトンと人差し指で軽く小突いた。
「……これを貸してやるから早く部屋に戻れ」
「……」
フアナの記憶の中のカールは母親が亡くなる前までは良い兄だった。けれど母が亡くなって継母と義妹が来てからは私を避けるようになっていた人だ。
義妹のような可愛げのない妹がうっとうしくて距離を置いたのだろう。
私はぼんやりとその顔を見つめる。髪の色や目の色こそ父親と同じだが、顔の造形は亡き母によく似ている。私の視線に気付いたのか急にカールは気まずい様子で顔を伏せるとまるで猫でも追い払うようにシッシと手で払う動作をされる。
「お兄様は、私がお嫌いですからね、目に入るのも嫌だったのでしょう。けれど私もこの家の娘です。筋肉を鍛えたいのでまだしばらく走り込むつもりですのでこのマントはお返しいたします」
そう言って包んできたマントを返そうとしたが、目を見開いてカールは叫んだ。
「嫌い??俺が、フアナを??誰がそんなこと言ったんだ!!大体、部屋に戻れって言ったのはお前が下着姿で走ってるからで、目に入るのが嫌だとかそういうのじゃねぇ!!むしろ、お前のが俺に会いたくなかったはずだろう??」
「えっ??」
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