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03.ナチュラルな人間の臭いに慣れない貴族と見事な土下座と
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夜の薄暗い玄関ホールに集まる、大勢のメイドと家令。
私は彼等の顔を一通り見たが家令の確かリチャード以外は見覚えのある存在はいなかった。リチャードはアウストリア公爵より少し年上で確か長い間アウストリア公爵家に仕えていたはずだ。
「リチャード、これはどういうことだ??フアナが物凄く臭い」
私の頭と前身から漂う獣のような臭い(つまり風呂に入ってない臭い)を嗅いだせいで何かが覚醒したらしいアウストリア公爵はリチャードを怒鳴る。
その言葉に、リチャードの顔色が明らかに悪くなるのが分かる。
「それは、奥様よりフアナお嬢様には王家よりメイドが付いているので公爵家の使用人が面倒を見る必要はないと仰せつかっておりましたので……」
「なに??クリスティーナがそう指示していたのか??」
「左様でございます」
ふたりのやりとりから、フアナのメイドがエミリー以外いなかったのは継母の指示があったからだということが判明する。しかし、それよりも今は物凄く空腹なのでその状態異常を解決する必要がある。
「そんなことよりお腹が空いているので狩りに……」
「お嬢様、申し訳ありません。急ぎでしたのでこのようなものだけですが」
狩りに行きたいと口にしようとした時、鼻孔をくすぐるようなトマトの香りがして振り返れば、トマトと鶏肉のシチューのようなものとパンやサラダが置かれた簡易なテーブルセットが準備されていた。
私は、そのテーブルセットに完璧な令嬢の所作で座る。
「命に感謝、頂きます」
と目の前の全ての食材の命に感謝しながら料理を口に運ぶ。その間も何やらアウストリア公爵と家令が言い争いをしているようだがそんなことはどうでもいい。
それよりも、今は目の前の命に感謝して全てを食べつくさねばならない。私が一心不乱に食事をしているとメイド集団の中にひとり明らかに挙動不審かつ心拍数、脈拍、呼吸などが正常ではない者がいることに気付いた。
確かに、今回のフアナを放置したという失態は公爵家のような上位貴族に仕えるものとしては大失態だが、だからと言って継母の指示がありかつ家令が命じたのであればそれに従う身分であるメイドが慌てる必要はそこまでないはずだが明らかにそうとは思えないような焦りようだ。
(たとえるなら、毒殺しようとした相手に毒を盛れなかったみたいな顔ね)
そう考えた時、彼女が持っている小瓶に目がいった。それは一見すると塩か何かのような白い結晶化している何かだが私は野生の本能に従い、食事していたテーブルからいきなり立ち上がると高速でメイドに組み付いてその手にあった瓶を奪い取った。
普通に考えればいきなり令嬢が立ち上がり襲ってくるなんてことはないので完全に油断していたらしい彼女は組み付かれた状態で何があったのか理解できていない様子だったが正気になり叫ぶ。
「お嬢様、何をするのですか??いきなり暴力なんて……って、臭い!!なっ、やめてください頭をくっつけないでください、あっ、くさっ本当にやめっ……」
組み付かれたのもあるが、組み付きの姿勢の関係で頭の臭いをダイレクトに嗅いだメイドはそのまま気を失った。確かメイドとは大体が下級貴族の娘とかのこの世界でナチュラルな人間の臭いなど例えメイドといえど嗅いだことがなかったのだろう。
「なんだ、どうしたフアナ??何故そのメイドに臭い頭をつけて気絶させたのだ??」
「お父様、いくら事実でも保護責任者放棄のお父様がネグレクトされた未成年の娘に臭いと言うのは失礼とはおもいませんか??それに誰だってお風呂に入らないでいればナチュラルな人間の臭いを放つことになります、お父様もよろしければお試しになりますか??」
とてもにこやかな笑顔で言ったのに、お父様は小刻みに震え出した。まるで蛇に睨まれた蛙のような姿にこの世界ではフアナの父であるので強くあってほしかったがどうやら父は赤子の手を捻るくらいには簡単に倒せそうだなと私の中の闘争本能は興ざめする。
「……本当にすまない。リチャードからおおよそのことは聞いて理解できた。フアナの面倒を王家から派遣されていたエミリーというメイドひとりで見ている状態になっていたという事実を。今更あやまっても年頃の娘が悪臭を放つまで放置されていたという事実は変わらないがどうか何の罪もないメイドに当たり散らすのはやめてあげてほしい」
そう言うと父はまるで頭が刺さるのではないかというくらいの見事な土下座を披露してくれた。
私は彼等の顔を一通り見たが家令の確かリチャード以外は見覚えのある存在はいなかった。リチャードはアウストリア公爵より少し年上で確か長い間アウストリア公爵家に仕えていたはずだ。
「リチャード、これはどういうことだ??フアナが物凄く臭い」
私の頭と前身から漂う獣のような臭い(つまり風呂に入ってない臭い)を嗅いだせいで何かが覚醒したらしいアウストリア公爵はリチャードを怒鳴る。
その言葉に、リチャードの顔色が明らかに悪くなるのが分かる。
「それは、奥様よりフアナお嬢様には王家よりメイドが付いているので公爵家の使用人が面倒を見る必要はないと仰せつかっておりましたので……」
「なに??クリスティーナがそう指示していたのか??」
「左様でございます」
ふたりのやりとりから、フアナのメイドがエミリー以外いなかったのは継母の指示があったからだということが判明する。しかし、それよりも今は物凄く空腹なのでその状態異常を解決する必要がある。
「そんなことよりお腹が空いているので狩りに……」
「お嬢様、申し訳ありません。急ぎでしたのでこのようなものだけですが」
狩りに行きたいと口にしようとした時、鼻孔をくすぐるようなトマトの香りがして振り返れば、トマトと鶏肉のシチューのようなものとパンやサラダが置かれた簡易なテーブルセットが準備されていた。
私は、そのテーブルセットに完璧な令嬢の所作で座る。
「命に感謝、頂きます」
と目の前の全ての食材の命に感謝しながら料理を口に運ぶ。その間も何やらアウストリア公爵と家令が言い争いをしているようだがそんなことはどうでもいい。
それよりも、今は目の前の命に感謝して全てを食べつくさねばならない。私が一心不乱に食事をしているとメイド集団の中にひとり明らかに挙動不審かつ心拍数、脈拍、呼吸などが正常ではない者がいることに気付いた。
確かに、今回のフアナを放置したという失態は公爵家のような上位貴族に仕えるものとしては大失態だが、だからと言って継母の指示がありかつ家令が命じたのであればそれに従う身分であるメイドが慌てる必要はそこまでないはずだが明らかにそうとは思えないような焦りようだ。
(たとえるなら、毒殺しようとした相手に毒を盛れなかったみたいな顔ね)
そう考えた時、彼女が持っている小瓶に目がいった。それは一見すると塩か何かのような白い結晶化している何かだが私は野生の本能に従い、食事していたテーブルからいきなり立ち上がると高速でメイドに組み付いてその手にあった瓶を奪い取った。
普通に考えればいきなり令嬢が立ち上がり襲ってくるなんてことはないので完全に油断していたらしい彼女は組み付かれた状態で何があったのか理解できていない様子だったが正気になり叫ぶ。
「お嬢様、何をするのですか??いきなり暴力なんて……って、臭い!!なっ、やめてください頭をくっつけないでください、あっ、くさっ本当にやめっ……」
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「なんだ、どうしたフアナ??何故そのメイドに臭い頭をつけて気絶させたのだ??」
「お父様、いくら事実でも保護責任者放棄のお父様がネグレクトされた未成年の娘に臭いと言うのは失礼とはおもいませんか??それに誰だってお風呂に入らないでいればナチュラルな人間の臭いを放つことになります、お父様もよろしければお試しになりますか??」
とてもにこやかな笑顔で言ったのに、お父様は小刻みに震え出した。まるで蛇に睨まれた蛙のような姿にこの世界ではフアナの父であるので強くあってほしかったがどうやら父は赤子の手を捻るくらいには簡単に倒せそうだなと私の中の闘争本能は興ざめする。
「……本当にすまない。リチャードからおおよそのことは聞いて理解できた。フアナの面倒を王家から派遣されていたエミリーというメイドひとりで見ている状態になっていたという事実を。今更あやまっても年頃の娘が悪臭を放つまで放置されていたという事実は変わらないがどうか何の罪もないメイドに当たり散らすのはやめてあげてほしい」
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