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02.数日洗っていない頭の臭いで発狂した公爵
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それからどれくらいたったのか分からない、さっき目を開けた時は明るかった空が完全に暗くなっていた。どうやら夜になってしまったらしい。
「……どれくらい寝ていたのかな」
間違えなくあれから何時間も寝ていたために、体を起こすと同時に空腹を訴えるようにお腹が鳴る。
「お腹空いたな……」
普通に考えれば、公爵家の令嬢が飢えるようなことはありえない。けれど……、私の中にフアナの今までの記憶が蘇る。
まだ、母親が生きていた頃はフアナは家族で食卓を囲んでいた。その頃は周りの使用人達もフアナを公爵家の一員として扱っていた。
けれど、母親が死んでからは食卓にフアナは呼ばれなくなった。王妃教育があったからというのもあったけれどそれ以上にこの家の中にフアナの居場所は存在しなかった。
では、食事はどうしていたのかといえば、例のエミリーが部屋に運んで来ていた。
(なるほど、そのエミリーを追い出したから自分で狩りをして獣を料理するしかないわね)
前世では百獣の女王になるべく、サバンナで修行し色々な動物の倒し方と食べ方は学んだ私なのでなんとかなるだろう。
「善は急げだ」
そのまま大人しくしていても腹は満たされないので、部屋をとりあえず出る。
静まり返った館の中を蝋燭の明かりが照らしている。この蝋燭は魔法の炎で燃えているらしい。この世界は科学の代わりに魔法が発達した世界だ。逆に言えば科学に関連する医学のようなものもあまり発展していない。
(そう思うととても不思議ね……魔法は筋肉のように裏切らない系だろうか……もしそうなら覚えたいな)
この乙女ゲームの世界は、医学の発展が遅いこともあり、フアナの病について不治の病であるということは分かるがそれがどんな病であるかはゲームでははっきりとは描かれていない。
ただ、眠るように死んでしまうその病は、おとぎ話のお姫様から『眠り姫』と呼ばれていた。
そのうち、この病を治す方法を探す必要もあるけれどまずは、腹が空いては戦ができない。家から出るために玄関ホールに着いた時、背後から人が走ってくるのがわかった。
「一体、何をしている」
反射的に相手の急所を突くための姿勢をとりながら振り返ると、そこにはひとりの男性が立っていた。その顔を見てすぐに誰であるか把握する。
「お父様」
フアナの父である、アウストリア公爵だった。金色の髪に青い瞳をしていて王族と同じ色合いだ。
アウストリア公爵家は二代前に王弟が臣下降下してできた家だと聞いているので王家と同じ色を持つことは不自然ではない。
元々のフアナは父親に対してどこかで愛されたいと願う感情があった。けれど、私は自身を放置しているような愛する可能性が極めて低い親に愛されたいとは思わない。
(裏切った存在に労力を使うならば裏切らない筋肉を鍛えて、一刻も早くこの世界でも全てを屠れる百獣の女王になる方が有意義よね)
「お腹が空いたので外に狩りに行こうとしていました」
だからさっさと父親を振り払うべく用事を告げたが、その言葉にアウストリア公爵が目を見開くのがわかった。普段放置しているはずなのでそのまま受け流すとおもったのだけど……。
「いや、食事はちゃんと与えているはずだが……」
「ここ数日まともに食べてません、なんなら体調不良なのに放置されてました」
何故かちゃんと保護者しています的な発言を保護責任者の責任を放棄している系のアウストリア公爵が言ったので苛立ってそう返すと、何故かアウストリア公爵の顔がみるみる青ざめるのがわかった。
「そんな訳がない。お前は王太子殿下の婚約者だ、もっと大切に……」
「いえ、放置されてました。証拠ならほら、私の髪の臭いや体から漏れているナチュラルな人間臭を嗅げば分かります。ここ数日放置されていたのでお風呂に入ってないので」
そう言って、狩りにいくので汚いままでいいかと思って数日風呂にはいっていない頭を壮年だが全体的に綺麗に整っているアウストリア公爵の鼻先に思い切り突きつけた。
「くさっ!!!えっ、なんだ、なんでこんなくさいんだ!!」
「放置されて、湯あみしてませんから。まぁ、そんなことはいいのです。お腹すいたので狩りをしに……」
「だめだ、狩りなんかいかないでいい!!すぐに食事を準備する!!それからフアナにつけていたはずのメイドたちを呼びなさい!!」
数日風呂に入っていない頭の臭いを嗅いで発狂したアウストリア公爵は何故か家令やメイドを呼んだ。そして、その呼び声に大変バツが悪そうな顔の家令、メイドたちがその場にすぐに集まってきた。
「……どれくらい寝ていたのかな」
間違えなくあれから何時間も寝ていたために、体を起こすと同時に空腹を訴えるようにお腹が鳴る。
「お腹空いたな……」
普通に考えれば、公爵家の令嬢が飢えるようなことはありえない。けれど……、私の中にフアナの今までの記憶が蘇る。
まだ、母親が生きていた頃はフアナは家族で食卓を囲んでいた。その頃は周りの使用人達もフアナを公爵家の一員として扱っていた。
けれど、母親が死んでからは食卓にフアナは呼ばれなくなった。王妃教育があったからというのもあったけれどそれ以上にこの家の中にフアナの居場所は存在しなかった。
では、食事はどうしていたのかといえば、例のエミリーが部屋に運んで来ていた。
(なるほど、そのエミリーを追い出したから自分で狩りをして獣を料理するしかないわね)
前世では百獣の女王になるべく、サバンナで修行し色々な動物の倒し方と食べ方は学んだ私なのでなんとかなるだろう。
「善は急げだ」
そのまま大人しくしていても腹は満たされないので、部屋をとりあえず出る。
静まり返った館の中を蝋燭の明かりが照らしている。この蝋燭は魔法の炎で燃えているらしい。この世界は科学の代わりに魔法が発達した世界だ。逆に言えば科学に関連する医学のようなものもあまり発展していない。
(そう思うととても不思議ね……魔法は筋肉のように裏切らない系だろうか……もしそうなら覚えたいな)
この乙女ゲームの世界は、医学の発展が遅いこともあり、フアナの病について不治の病であるということは分かるがそれがどんな病であるかはゲームでははっきりとは描かれていない。
ただ、眠るように死んでしまうその病は、おとぎ話のお姫様から『眠り姫』と呼ばれていた。
そのうち、この病を治す方法を探す必要もあるけれどまずは、腹が空いては戦ができない。家から出るために玄関ホールに着いた時、背後から人が走ってくるのがわかった。
「一体、何をしている」
反射的に相手の急所を突くための姿勢をとりながら振り返ると、そこにはひとりの男性が立っていた。その顔を見てすぐに誰であるか把握する。
「お父様」
フアナの父である、アウストリア公爵だった。金色の髪に青い瞳をしていて王族と同じ色合いだ。
アウストリア公爵家は二代前に王弟が臣下降下してできた家だと聞いているので王家と同じ色を持つことは不自然ではない。
元々のフアナは父親に対してどこかで愛されたいと願う感情があった。けれど、私は自身を放置しているような愛する可能性が極めて低い親に愛されたいとは思わない。
(裏切った存在に労力を使うならば裏切らない筋肉を鍛えて、一刻も早くこの世界でも全てを屠れる百獣の女王になる方が有意義よね)
「お腹が空いたので外に狩りに行こうとしていました」
だからさっさと父親を振り払うべく用事を告げたが、その言葉にアウストリア公爵が目を見開くのがわかった。普段放置しているはずなのでそのまま受け流すとおもったのだけど……。
「いや、食事はちゃんと与えているはずだが……」
「ここ数日まともに食べてません、なんなら体調不良なのに放置されてました」
何故かちゃんと保護者しています的な発言を保護責任者の責任を放棄している系のアウストリア公爵が言ったので苛立ってそう返すと、何故かアウストリア公爵の顔がみるみる青ざめるのがわかった。
「そんな訳がない。お前は王太子殿下の婚約者だ、もっと大切に……」
「いえ、放置されてました。証拠ならほら、私の髪の臭いや体から漏れているナチュラルな人間臭を嗅げば分かります。ここ数日放置されていたのでお風呂に入ってないので」
そう言って、狩りにいくので汚いままでいいかと思って数日風呂にはいっていない頭を壮年だが全体的に綺麗に整っているアウストリア公爵の鼻先に思い切り突きつけた。
「くさっ!!!えっ、なんだ、なんでこんなくさいんだ!!」
「放置されて、湯あみしてませんから。まぁ、そんなことはいいのです。お腹すいたので狩りをしに……」
「だめだ、狩りなんかいかないでいい!!すぐに食事を準備する!!それからフアナにつけていたはずのメイドたちを呼びなさい!!」
数日風呂に入っていない頭の臭いを嗅いで発狂したアウストリア公爵は何故か家令やメイドを呼んだ。そして、その呼び声に大変バツが悪そうな顔の家令、メイドたちがその場にすぐに集まってきた。
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