3 / 38
02.数日洗っていない頭の臭いで発狂した公爵
しおりを挟む
それからどれくらいたったのか分からない、さっき目を開けた時は明るかった空が完全に暗くなっていた。どうやら夜になってしまったらしい。
「……どれくらい寝ていたのかな」
間違えなくあれから何時間も寝ていたために、体を起こすと同時に空腹を訴えるようにお腹が鳴る。
「お腹空いたな……」
普通に考えれば、公爵家の令嬢が飢えるようなことはありえない。けれど……、私の中にフアナの今までの記憶が蘇る。
まだ、母親が生きていた頃はフアナは家族で食卓を囲んでいた。その頃は周りの使用人達もフアナを公爵家の一員として扱っていた。
けれど、母親が死んでからは食卓にフアナは呼ばれなくなった。王妃教育があったからというのもあったけれどそれ以上にこの家の中にフアナの居場所は存在しなかった。
では、食事はどうしていたのかといえば、例のエミリーが部屋に運んで来ていた。
(なるほど、そのエミリーを追い出したから自分で狩りをして獣を料理するしかないわね)
前世では百獣の女王になるべく、サバンナで修行し色々な動物の倒し方と食べ方は学んだ私なのでなんとかなるだろう。
「善は急げだ」
そのまま大人しくしていても腹は満たされないので、部屋をとりあえず出る。
静まり返った館の中を蝋燭の明かりが照らしている。この蝋燭は魔法の炎で燃えているらしい。この世界は科学の代わりに魔法が発達した世界だ。逆に言えば科学に関連する医学のようなものもあまり発展していない。
(そう思うととても不思議ね……魔法は筋肉のように裏切らない系だろうか……もしそうなら覚えたいな)
この乙女ゲームの世界は、医学の発展が遅いこともあり、フアナの病について不治の病であるということは分かるがそれがどんな病であるかはゲームでははっきりとは描かれていない。
ただ、眠るように死んでしまうその病は、おとぎ話のお姫様から『眠り姫』と呼ばれていた。
そのうち、この病を治す方法を探す必要もあるけれどまずは、腹が空いては戦ができない。家から出るために玄関ホールに着いた時、背後から人が走ってくるのがわかった。
「一体、何をしている」
反射的に相手の急所を突くための姿勢をとりながら振り返ると、そこにはひとりの男性が立っていた。その顔を見てすぐに誰であるか把握する。
「お父様」
フアナの父である、アウストリア公爵だった。金色の髪に青い瞳をしていて王族と同じ色合いだ。
アウストリア公爵家は二代前に王弟が臣下降下してできた家だと聞いているので王家と同じ色を持つことは不自然ではない。
元々のフアナは父親に対してどこかで愛されたいと願う感情があった。けれど、私は自身を放置しているような愛する可能性が極めて低い親に愛されたいとは思わない。
(裏切った存在に労力を使うならば裏切らない筋肉を鍛えて、一刻も早くこの世界でも全てを屠れる百獣の女王になる方が有意義よね)
「お腹が空いたので外に狩りに行こうとしていました」
だからさっさと父親を振り払うべく用事を告げたが、その言葉にアウストリア公爵が目を見開くのがわかった。普段放置しているはずなのでそのまま受け流すとおもったのだけど……。
「いや、食事はちゃんと与えているはずだが……」
「ここ数日まともに食べてません、なんなら体調不良なのに放置されてました」
何故かちゃんと保護者しています的な発言を保護責任者の責任を放棄している系のアウストリア公爵が言ったので苛立ってそう返すと、何故かアウストリア公爵の顔がみるみる青ざめるのがわかった。
「そんな訳がない。お前は王太子殿下の婚約者だ、もっと大切に……」
「いえ、放置されてました。証拠ならほら、私の髪の臭いや体から漏れているナチュラルな人間臭を嗅げば分かります。ここ数日放置されていたのでお風呂に入ってないので」
そう言って、狩りにいくので汚いままでいいかと思って数日風呂にはいっていない頭を壮年だが全体的に綺麗に整っているアウストリア公爵の鼻先に思い切り突きつけた。
「くさっ!!!えっ、なんだ、なんでこんなくさいんだ!!」
「放置されて、湯あみしてませんから。まぁ、そんなことはいいのです。お腹すいたので狩りをしに……」
「だめだ、狩りなんかいかないでいい!!すぐに食事を準備する!!それからフアナにつけていたはずのメイドたちを呼びなさい!!」
数日風呂に入っていない頭の臭いを嗅いで発狂したアウストリア公爵は何故か家令やメイドを呼んだ。そして、その呼び声に大変バツが悪そうな顔の家令、メイドたちがその場にすぐに集まってきた。
「……どれくらい寝ていたのかな」
間違えなくあれから何時間も寝ていたために、体を起こすと同時に空腹を訴えるようにお腹が鳴る。
「お腹空いたな……」
普通に考えれば、公爵家の令嬢が飢えるようなことはありえない。けれど……、私の中にフアナの今までの記憶が蘇る。
まだ、母親が生きていた頃はフアナは家族で食卓を囲んでいた。その頃は周りの使用人達もフアナを公爵家の一員として扱っていた。
けれど、母親が死んでからは食卓にフアナは呼ばれなくなった。王妃教育があったからというのもあったけれどそれ以上にこの家の中にフアナの居場所は存在しなかった。
では、食事はどうしていたのかといえば、例のエミリーが部屋に運んで来ていた。
(なるほど、そのエミリーを追い出したから自分で狩りをして獣を料理するしかないわね)
前世では百獣の女王になるべく、サバンナで修行し色々な動物の倒し方と食べ方は学んだ私なのでなんとかなるだろう。
「善は急げだ」
そのまま大人しくしていても腹は満たされないので、部屋をとりあえず出る。
静まり返った館の中を蝋燭の明かりが照らしている。この蝋燭は魔法の炎で燃えているらしい。この世界は科学の代わりに魔法が発達した世界だ。逆に言えば科学に関連する医学のようなものもあまり発展していない。
(そう思うととても不思議ね……魔法は筋肉のように裏切らない系だろうか……もしそうなら覚えたいな)
この乙女ゲームの世界は、医学の発展が遅いこともあり、フアナの病について不治の病であるということは分かるがそれがどんな病であるかはゲームでははっきりとは描かれていない。
ただ、眠るように死んでしまうその病は、おとぎ話のお姫様から『眠り姫』と呼ばれていた。
そのうち、この病を治す方法を探す必要もあるけれどまずは、腹が空いては戦ができない。家から出るために玄関ホールに着いた時、背後から人が走ってくるのがわかった。
「一体、何をしている」
反射的に相手の急所を突くための姿勢をとりながら振り返ると、そこにはひとりの男性が立っていた。その顔を見てすぐに誰であるか把握する。
「お父様」
フアナの父である、アウストリア公爵だった。金色の髪に青い瞳をしていて王族と同じ色合いだ。
アウストリア公爵家は二代前に王弟が臣下降下してできた家だと聞いているので王家と同じ色を持つことは不自然ではない。
元々のフアナは父親に対してどこかで愛されたいと願う感情があった。けれど、私は自身を放置しているような愛する可能性が極めて低い親に愛されたいとは思わない。
(裏切った存在に労力を使うならば裏切らない筋肉を鍛えて、一刻も早くこの世界でも全てを屠れる百獣の女王になる方が有意義よね)
「お腹が空いたので外に狩りに行こうとしていました」
だからさっさと父親を振り払うべく用事を告げたが、その言葉にアウストリア公爵が目を見開くのがわかった。普段放置しているはずなのでそのまま受け流すとおもったのだけど……。
「いや、食事はちゃんと与えているはずだが……」
「ここ数日まともに食べてません、なんなら体調不良なのに放置されてました」
何故かちゃんと保護者しています的な発言を保護責任者の責任を放棄している系のアウストリア公爵が言ったので苛立ってそう返すと、何故かアウストリア公爵の顔がみるみる青ざめるのがわかった。
「そんな訳がない。お前は王太子殿下の婚約者だ、もっと大切に……」
「いえ、放置されてました。証拠ならほら、私の髪の臭いや体から漏れているナチュラルな人間臭を嗅げば分かります。ここ数日放置されていたのでお風呂に入ってないので」
そう言って、狩りにいくので汚いままでいいかと思って数日風呂にはいっていない頭を壮年だが全体的に綺麗に整っているアウストリア公爵の鼻先に思い切り突きつけた。
「くさっ!!!えっ、なんだ、なんでこんなくさいんだ!!」
「放置されて、湯あみしてませんから。まぁ、そんなことはいいのです。お腹すいたので狩りをしに……」
「だめだ、狩りなんかいかないでいい!!すぐに食事を準備する!!それからフアナにつけていたはずのメイドたちを呼びなさい!!」
数日風呂に入っていない頭の臭いを嗅いで発狂したアウストリア公爵は何故か家令やメイドを呼んだ。そして、その呼び声に大変バツが悪そうな顔の家令、メイドたちがその場にすぐに集まってきた。
25
お気に入りに追加
1,138
あなたにおすすめの小説

あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる