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プロローグ:百獣の女王は気づいたら悲劇の悪役令嬢になっていた
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『お前のような底意地の悪い女は、国母にはなれない。私はお前との婚約を破棄する』
金髪碧眼の美しい王子が、銀髪碧眼の美しい令嬢を見下して吐き捨てるように告げる。
「慎んでお受けいたします」
その言葉を、堂々と受け取り立ち去る美しい少女。その顔には笑みをもたたえていた。
彼女の名前はフアナ・ルドルフ・アウストリア。『たったひとつの恋』こと『ひと恋』の悪役令嬢だ。
けれど私は知っている。彼女はなにひとつ悪いことはしていないのに断罪されて、その花のような命は不治の病でこの後すぐに散る。
フアナが、たった1通最期に遺した元婚約者への手紙とそこに綴られた真実にプレイヤーなら誰もが涙を流したはずだ。
『私は、貴方の幸せを願いします。
昔、貴方から聞いた初恋の人、本当に愛する人に出会った貴方のために、病に侵されてもう死を待つだけの私は不要です。けれどそれを告げればいくら愛のない婚約者であっても、情け深い貴方は私との婚約を破棄できないでしょう。
だから私は悪女となりました。正確には嫌がらせはしていませんが、都合よく私にその罪が擦り付けられたのでそれを利用いたしました。貴方が最期まで狡猾な女だと嫌悪してくれることを祈ります。
そして、どうかお幸せに。
愛をこめて フアナ』
誰からも愛されず、悪名を背負い、それでも愛する人を愛し抜いて死んだ少女。その苛烈な生き方は多くの読者の共感を得ていたことは、ヒロインよりもずっと彼女の人気があったことでもうかがえた。
私も前世は、その苛烈さに自身を重ねるた。
彼女が好きで好きすぎて、ハッピーエンドの同人誌が存在していると聞いた時は、その全てを買いあさるほどに好きだった、けれど……。
「自分がなりたいとはひとことも言っていない!!」
そう、高熱から目覚めた私は力強い足取りで立ち上がっていつもの癖で洗面所へ行こうとして違和感に気付いて叫んだ。
鏡に写る美少女こそまさに、かの悪役令嬢フアナ・ルドルフ・アウストリアだったのだ。筋トレしながら穴が開くほどみた美少女。
クソ婚約者を愛し抜いた一途で気高い少女……のはずだが、今はどうやら熱を出して寝込んでいる間に、ロクに面倒を見られていなかったらしく、銀色のゲームでは美しく煌めいていた髪は人間から発生する油でべっとりし、華奢で内臓の有無を疑うような体の毛穴からは人間も獣であることを思い出すようななつかしい臭いがした。
とても美少女とは思えない臭いだが、誰よりも強い百獣の女王になるべく、前世サバンナで獣と暮らしていた時に纏っていたスメルに比べたら全然マシだ。
「しかし、ここが前世の乙女ゲームの世界だとして今はいくつの時だ??」
原作ゲームはヒロイン目線なので、悪役令嬢に関する詳細はゲーム開始後以前はほとんど語られていない。鏡に写る顔からゲーム開始後より幼いのはわかった。
私は、正しい年齢を確認すべく体をなんとなく動かしその稼働状況、筋組織の感覚からこの体のおおよその年齢を本能的に割りだすことにした。いかなる場合も自身の筋肉は裏切らないので困ったら筋肉に年齢を聞けばいい。
筋肉のおかげでこの体が今15歳であることがわかった。こういう時には裏切りのない筋肉には感謝しかない。
(15歳だとしたら、もう私はゲームのEND時に明かされる病を発症していて挙句の果てに、後半年でゲームのヒロインが現れて、もう2年で断罪されて死ぬという段階まできているということか……)
本来ならば落ち込むべきだが、私の筋肉が言っている。
まだ病と闘う強い筋肉があると。つまり的確な治療方法を見つけることができれば生きられる。
とはいえ申し訳ないが、私はこういう転生ヒロインものに出てくる人物のように賢くはない。
もっという、前世、唯々愚直に力を求めて生きて生きて、ついには『百獣の女王』の異名も得るほどの霊長類最強の女になった経歴の持ち主だ。
その道のりは平坦ではもちろんなかったし、そもそも深く考えるのは苦手で、それを補うように全ては鋼のようなメンタルで乗り越えてきた。
まさに、今転生した賢くクールなフアナ・ルドルフ・アウストリアとは真逆だが、それは仕方ない。
つまり私に必要なのは、自身の運命に抗う強い決意と踏み出して進む強い意思だけ。
(私が最も尊敬する偉大なる燃える闘魂が言っていた。『迷わず行けよ、行けばわかるさ』そう、行くしかない。よし気合を入れよう!!)
「いくぞ!!1・2・3・ダァーッ!!」
そう闘志を呼び出す気合を入れる雄たけびを上げた時、部屋の外から走ってくる気配と、その気配が慌ただしく部屋の扉をノックもせずに開いたのがわかった。
「な、何事ですか??」
驚いたように入り込んできたメイドの顔を見た時、私の中にあるフアナの記憶と私自身の前世の記憶が脳内に浮かび上がるのが分かる。
彼女の名は、エミリー。この家のメイドであり、そして……、
(フアナの味方のふりをして彼女を裏切った王家側の二重スパイ……)
王太子の味方である彼女はゲーム内では、ヒロインからもお助けキャラの立ち位置で好意的な描かれ方をしていた。
しかし、フアナからすれば彼女は敵、フアナを裏切る不俱戴天の敵だ。
その事実が判明した時、私の中で沸き上がる熱い闘魂があふれ出した。
金髪碧眼の美しい王子が、銀髪碧眼の美しい令嬢を見下して吐き捨てるように告げる。
「慎んでお受けいたします」
その言葉を、堂々と受け取り立ち去る美しい少女。その顔には笑みをもたたえていた。
彼女の名前はフアナ・ルドルフ・アウストリア。『たったひとつの恋』こと『ひと恋』の悪役令嬢だ。
けれど私は知っている。彼女はなにひとつ悪いことはしていないのに断罪されて、その花のような命は不治の病でこの後すぐに散る。
フアナが、たった1通最期に遺した元婚約者への手紙とそこに綴られた真実にプレイヤーなら誰もが涙を流したはずだ。
『私は、貴方の幸せを願いします。
昔、貴方から聞いた初恋の人、本当に愛する人に出会った貴方のために、病に侵されてもう死を待つだけの私は不要です。けれどそれを告げればいくら愛のない婚約者であっても、情け深い貴方は私との婚約を破棄できないでしょう。
だから私は悪女となりました。正確には嫌がらせはしていませんが、都合よく私にその罪が擦り付けられたのでそれを利用いたしました。貴方が最期まで狡猾な女だと嫌悪してくれることを祈ります。
そして、どうかお幸せに。
愛をこめて フアナ』
誰からも愛されず、悪名を背負い、それでも愛する人を愛し抜いて死んだ少女。その苛烈な生き方は多くの読者の共感を得ていたことは、ヒロインよりもずっと彼女の人気があったことでもうかがえた。
私も前世は、その苛烈さに自身を重ねるた。
彼女が好きで好きすぎて、ハッピーエンドの同人誌が存在していると聞いた時は、その全てを買いあさるほどに好きだった、けれど……。
「自分がなりたいとはひとことも言っていない!!」
そう、高熱から目覚めた私は力強い足取りで立ち上がっていつもの癖で洗面所へ行こうとして違和感に気付いて叫んだ。
鏡に写る美少女こそまさに、かの悪役令嬢フアナ・ルドルフ・アウストリアだったのだ。筋トレしながら穴が開くほどみた美少女。
クソ婚約者を愛し抜いた一途で気高い少女……のはずだが、今はどうやら熱を出して寝込んでいる間に、ロクに面倒を見られていなかったらしく、銀色のゲームでは美しく煌めいていた髪は人間から発生する油でべっとりし、華奢で内臓の有無を疑うような体の毛穴からは人間も獣であることを思い出すようななつかしい臭いがした。
とても美少女とは思えない臭いだが、誰よりも強い百獣の女王になるべく、前世サバンナで獣と暮らしていた時に纏っていたスメルに比べたら全然マシだ。
「しかし、ここが前世の乙女ゲームの世界だとして今はいくつの時だ??」
原作ゲームはヒロイン目線なので、悪役令嬢に関する詳細はゲーム開始後以前はほとんど語られていない。鏡に写る顔からゲーム開始後より幼いのはわかった。
私は、正しい年齢を確認すべく体をなんとなく動かしその稼働状況、筋組織の感覚からこの体のおおよその年齢を本能的に割りだすことにした。いかなる場合も自身の筋肉は裏切らないので困ったら筋肉に年齢を聞けばいい。
筋肉のおかげでこの体が今15歳であることがわかった。こういう時には裏切りのない筋肉には感謝しかない。
(15歳だとしたら、もう私はゲームのEND時に明かされる病を発症していて挙句の果てに、後半年でゲームのヒロインが現れて、もう2年で断罪されて死ぬという段階まできているということか……)
本来ならば落ち込むべきだが、私の筋肉が言っている。
まだ病と闘う強い筋肉があると。つまり的確な治療方法を見つけることができれば生きられる。
とはいえ申し訳ないが、私はこういう転生ヒロインものに出てくる人物のように賢くはない。
もっという、前世、唯々愚直に力を求めて生きて生きて、ついには『百獣の女王』の異名も得るほどの霊長類最強の女になった経歴の持ち主だ。
その道のりは平坦ではもちろんなかったし、そもそも深く考えるのは苦手で、それを補うように全ては鋼のようなメンタルで乗り越えてきた。
まさに、今転生した賢くクールなフアナ・ルドルフ・アウストリアとは真逆だが、それは仕方ない。
つまり私に必要なのは、自身の運命に抗う強い決意と踏み出して進む強い意思だけ。
(私が最も尊敬する偉大なる燃える闘魂が言っていた。『迷わず行けよ、行けばわかるさ』そう、行くしかない。よし気合を入れよう!!)
「いくぞ!!1・2・3・ダァーッ!!」
そう闘志を呼び出す気合を入れる雄たけびを上げた時、部屋の外から走ってくる気配と、その気配が慌ただしく部屋の扉をノックもせずに開いたのがわかった。
「な、何事ですか??」
驚いたように入り込んできたメイドの顔を見た時、私の中にあるフアナの記憶と私自身の前世の記憶が脳内に浮かび上がるのが分かる。
彼女の名は、エミリー。この家のメイドであり、そして……、
(フアナの味方のふりをして彼女を裏切った王家側の二重スパイ……)
王太子の味方である彼女はゲーム内では、ヒロインからもお助けキャラの立ち位置で好意的な描かれ方をしていた。
しかし、フアナからすれば彼女は敵、フアナを裏切る不俱戴天の敵だ。
その事実が判明した時、私の中で沸き上がる熱い闘魂があふれ出した。
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