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最終章『妖精世界』
Act.15:ブラックリリー②
しおりを挟む私は生まれつき身体が弱かった。
それは今も変わらず、ちょっとした病気でも倒れたり寝込んだりする程だ。昔と比べれば、結構マシな方になってきているけど、それでもやっぱり身体が弱いのは変わらない。
そのせいでお母さんには結構迷惑かけてしまってるし、申し訳ない気持ちでいっぱいになってる。でも、お母さんは「気にしないの」といつも言ってくれる。
学校に行っても、しょっちゅう身体を壊したりしていたし、大体は保健室にいたと思う。それでも、何とか義務教育であるい中学校は卒業できるように私になりに頑張っていたつもりだ。
結果的には、中学校は無事卒業できたから良かったと思ってる。高校については、この調子で行っても単位不足になりかねないので、断念した。それでも、一応勉強とかはしていたけど。
……仲良くしたいなあ。
再びリュネール・エトワールの事を思い返す。
私はそういう事もあって、友達と呼べる存在は居なかった。僅かな絡みのある子は居たけど今では何をしているか分からない。連絡先交換している訳ではないので、当たり前なんだけどね。
色々とやらかしてしまってるけど、彼女だけは何故か優しくしてくれる。いや、あれはもう優しいとかじゃなくて単にお人好しなだけなんだろうけど。
それでも、一緒に居た時とかは嫌な感じはせず、むしろもう少し一緒に居たいと思い始めてしまっていた。
本音を言ってしまえば、友達になってほしい。
そういう存在に憧れていたというのもあるけど、何故だかあの子に惹かれる。
「はぁ」
あーだこーだ考えていると、自然とため息が漏れる。
友達になりたいというのは、私の紛れもない本心なのはもう分かってる。私が前にやらかしている事を知っていても、彼女は何事もなかったように接してくれている。
こればっかりは、彼女が野良の魔法少女で良かったなって思ってる。もし、リュネール・エトワールが魔法省に所属していたらどうだったろうか。私の事やっぱり捕まえるだろうか。
今日会う時に思い切って言ってみようかな?
「さっきから何考えているのさ。まあ、彼女の事だと思うけど」
「ぅ……分かる?」
「うん。分かりやすいし、君がそこまで悩むのは彼女の事だろうし」
「そっか……ねえ、あの子友達になってくれるかな?」
「どうだろうね。向こう次第じゃないかな……というか既に向こうは君の事友達だと思ってそうだけどね」
「ん? 何か言った?」
「ううん。大丈夫じゃない?」
「そうかなあ」
何かさっきララが後半、何か言ってたような気がするけど……気のせいかな? 向こう次第……まあ、それはそうだよね。私が友達になりたいと思ってるだけで向こうは、そうじゃないかもしれない。それがちょっと怖い。
「君の場合、肝心な事を言う前に、止めてしまう傾向にあるからそれをどうにかした方が良いかもしれないよ」
「う……」
そうなのだ。
聞いてみたいとか話したいとか思っても、それを口に出せない。こういうのなんて言うんだっけ? コミュ障? でも確かに私はコミュ障なのかもしれない。
身体が弱い事もあって、あまり教室に居ない。入学式の時だって、途中で体調を崩してしまい、そのまま家に帰ったくらいだから。次の日に登校してみれば、既に知り合いは知り合い同士で一つのグループのようなもの出来てたし。
同じ小学校の子も居たけど、小学生の時は今よりもかなり酷いレベルで身体が弱かったので、ほぼ保健室か早退だったから絡む事はあまりなかったし。
まあ幸いなのは、いじめというものに合わなかったという所だろうか。私みたいな人は良くいじめの対象になりやすいっぽかったし……身体が弱いのは真面目な話だったので、それの影響もあったのかな。
「早い所、自分の気持ち伝えた方が良いんじゃないかな」
「そう、だね……」
こんな私でも仲良くしてくれそうな子だ。
断られるのは怖いかもしれないけど、言わない事には何も始まらない。ララの言う通り、ズバッと言った方が良いのかもしれない。
「それに、他の二人の子とも会う予定あるんでしょ」
「まあね」
リュネール・エトワールを介して、私に会いたいと言ってた魔法省の魔法少女の二人。何故か分からないけど……彼女と行動していたからかな?
行かないという選択肢もあったけど、魔法省側は私の事をリュネール・エトワールと行動していた事以外は知らないというのもあるし、変に探られるよりはこちらから堂々と出迎えた方が良いと思ったから行く事にした。
リュネール・エトワールには、行かない方が良いんじゃない? と心配されたけど、正直、心配されている事がちょっと嬉しいと感じていたのも事実。
魔法省は男の証言だけしか、私の容姿を知らないからそれも行って大丈夫な理由の一つかな? それに今回のは、魔法省側からではなくその魔法省に所属している魔法少女の二人個人からの話。
もし確証を得て私を捕まえるのであれば、たった二人では来ないだろうし。二人は異常な強さの魔法少女ならまだしも……片方はSクラス、もう片方はBクラスという魔法少女だ。
そんな中途半端な組み合わせで来るとは思えない。それもまた、一つの理由である。それに、リュネール・エトワールを介している時点で変だしね。わざわざ野良の魔法少女を介して、そんな事するとは思えない。
あくまで私の考えだけども。最悪の場合は、テレポートで逃げるのも手かな。
「よっと」
ベッドから立ち上がる。
「考え事はもう良いのかい?」
「うん。決めたよ。次会う時、言ってみるね」
既に二人に会うという事はリュネール・エトワールにも伝えている。今更撤回はできないし、するつもりもない。こちらから堂々と会ってやろうじゃないの。
それも大事だけど、他にも今日の14時、リュネール・エトワールと会う時に自分の本心からに言葉を言いたい。どういう答えが返ってくるか分からないのは少し不安だけど、進まないとね。
「そっか。……まあ友達以上の感情を持っているように見えるけどね」
「え?」
「いいや、何でもないさ。それなら頑張って」
「うん、頑張るね」
妖精世界を戻すという目的も大事だけど、私にとってはこれも大事。
協力してくれるし、魔法省に私の事を無理には連れて行かないし、普通に接してくれる優しい人。やっぱり私は、仲良くしたいのかもしれない。
妖精世界を戻すのはかなりの時間がかかるのはもう覚悟の上だ。
魔力を貯めて、ララの言うゲートという魔法を使えるようになれば、妖精世界と行き来できるようになるので、後はそこから地道に色々やってくしかない。
妖精世界に酸素とかそういう物があるか分からないから、それに対する対策も考えてはある。私が考えた訳じゃなく、ララが考えていたんだけども。そう言えば、そこについてはリュネール・エトワールから聞かれてないな……何か手段を持ってる事を分かってたのかな?
最初に向こうに行くのは私たちではなくララだ。妖精世界の状況をまず、確認してもらってそこからどうするかを考える。何があるか分からないような場所に私たちは最初に行くのは、リスクが高い。
それに今回はリュネール・エトワールを巻き込んでしまってるんだから安全に行きたい。
完全に私の目的なのに、協力を承諾してくれたのだ。お人好しであるのは確かだけど、それでも協力を願った身としては、彼女には余計な負担をかけたくない。
そうは言っても、私はこんな身体だし、魔法少女になったとしても魔力量が少ない。私自身が出来る事には限りがある。これが一番の問題点だよね。
身体が弱いから魔力量も少ないとかなんだろうか? 魔力については、今でも謎が多いから何とも言えないんだけどね。
出来る限り、私が出来る事は私がやって、本当に無理な時はリュネール・エトワールを頼るような感じで行こうかと思ってる。ララには無理するなと言われてるけど。
うん。無理はしないつもりだよ。
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