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第四章『星月の選択』
Act.02:変化②
しおりを挟む「お兄、大丈夫?」
「ん。すーすーする」
「うーんそこは我慢してもらわないとね……」
何故か銀髪金眼少女……リュネール・エトワールの姿そっくりな状態になってしまった俺は、真白の服を借りて出掛ける所であった。
シンプルなTシャツにその上にコートを着て、下はスカートとなっている。スカート丈は膝よりも少し下までで、白いニーハイソックスを履いている。
ハーフモードの時に着ていたのはズボンがほとんどだったので、スカートはフルモードの時以外ではこれが初めてだったりする。
魔法少女リュネール・エトワールの状態だと、全然気にしなかったんだが今の状態だと凄い気になる。スカートってこんなすーすーするのか。
「運転は私がするから大丈夫」
「ん。ありがとう」
「ううん。私だってお兄には色々とお世話になってるんだしね」
一応真白も運転免許証自体は持っているのだ。ただ東京では使う機会が全然ないってぼやいていたな。
「でも、運転するの真白は久し振りでは?」
「そうだね。東京じゃ全然使わないし、持ってる方がぶっちゃけ損する感じだね。一応、シミュレーションとかで運転してたから大丈夫だと思う……安全運転で行くよ」
「ん」
ちょっと心配であるが、俺が今の姿で運転するのは厳しいな。運転はできるかもしれないが、仮に免許証を見せて下さい的な事言われたら大変なので、ここは真白を頼るしか無い。
いや今回ばかりは、真白が居て助かった……この姿で真白と並ぶと不本意ながら双子と言われても可笑しくないくらいだ。と言っても、身長は若干真白の方が上なんだよな、この状態だと。
服は良いのだが、下着関係が当然のように俺は持っていない。リュネール・エトワールの時は魔力で構成されていたし、全く気にする必要もなかったのだ。
しかし……今はどうだ。この姿では魔力は意味を成さず、本物の身体である。流石に下着まで真白のを借りるのは無理なので、下は男物のを着ている。ちょっと違和感がある感じだ。
「う……慣れない」
「リュネール・エトワールの姿では余裕なのに、どうしたのお兄……」
「分からない。でも何か変な感じ」
「まあ、魔法少女の姿とリアルの身体では結構違うから、それもあるかもしれないわね」
そんな話をしながら俺たちは車に乗り込む。俺は後ろの座席に乗ろうと思ったが、真白に助手席に乗るように言われたので大人しく助手席へラビを抱き抱えて乗ったのである。
「お兄……その姿可愛すぎる」
「からかわないで……」
これである。
真白が何処かいたずらっぽい顔で俺のことを見ながら言ってくるものだから、何というか居心地が悪い。でも確かに真白の言う通り、この姿勢って完全に……いややめておこう。
「じゃあ、出発するねー」
「ん」
シートベルトをしたところで真白の運転により、車が発進する。庭から道路へでて、そこから大きな道路へと出て、出発と言った感じとなるのだった。
「お兄、身体は大丈夫?」
直線の道路を進んでいるところで、真白にそう問いかけられる。
「ん。特には……強いて言うならやっぱり変な感じ」
「それはそうだよ。お兄の身体がそうなってるんだから……こればっかりは流石に私も驚きだよ」
「ん。心配かけてごめん」
「ううん。一番不安なのはお兄なんだから、謝らなくていいよ」
「ええそうね。謝るべきは私かしらね」
「……ラビ。ラビは悪くない」
「でも魔法少女にしたのは私よ? それが原因かもしれないし」
身体に違和感というのはない。
ただやっぱり、本物の身体の方が変わっているからか、変な感じはする。真白もラビも心配してくれているのは分かっている。
何が原因か?
それはわからない。でも前兆と言うか兆しはあった。俺の心境とかの変化だ。可愛いものに目が行ってしまったり、リュネール・エトワールに似合いそうだなと無意識に服を見たり。
――それが原因なのか?
それはまだ分からないけど、少なくとも何らかの関わりがありそうな気はする。もしくは、知らぬ間に魔法をかけられたか……あまり考えたくないが。
「ラビもあまり自分を責めないようにね」
「真白は私の事怒ってないの?」
「うーん、驚きはしたけど、お兄が選択した事だし、私が言うのは何かおかしいでしょ」
「……変わった兄妹よね」
「そう?」
「そうかな?」
俺たちそんな変わってるかな?
まあ、普通に見れば確かに少し変わってるかもしれないな。魔法少女している兄を持つ妹って。反対ならまだ分かるが……。あーでも、真白が仮に魔法少女になったら東京の方になるのかな?
「私も何とか原因を探るわ。何か分かれば良いのだけど……」
「ん。わたしが言うのも何だけどラビも無理しないで」
「ええ、分かっているわ」
俺が言えた義理ではないんだがな。そんな話をしている内に、俺たちは某有名な服屋へ到着するのだった。
□□□□□□□□□□
「うーんと、この辺りかな」
服屋の中へ入り、ます俺らがやって来たのは下着のコーナー。勿論、女性のである。いや待て待て、いきなりここに連れてくるか普通!?
「どうしたのお兄、顔赤いよ?」
「何で……いきなりここに」
「ふふ、もしかして恥ずかしいの?」
恥ずかしいと言うか、そういう問題ではない。今はこんな姿だが元は28歳のおっさんだぞ? それ以前の問題じゃないか。
どうでも良いが、先月に誕生日が過ぎたから俺の年齢は1つ増え、28となった。だから何だという訳でもないが、この年齢になると何というか何も感じない。
「う」
「大丈夫だって。今のお兄は可愛らしい女の子だし」
「そう言う、問題、じゃ……」
「でも、その姿でお兄って呼ぶのはおかしいよね。えっと……司姉!」
「っ!」
おい馬鹿やめろ……真白の言うことも一理あるんだがすごい違和感しかねえぞ。
「お姉って言うと何かアレだから、司姉。うん、これで良いよね!」
「……」
駄目だこの妹。
でもまあ、確かにこの姿でお兄って呼ぶのも変だよな。司姉っていうのも大分変な感じがするが、取り敢えずはそういう事にしておこう。
「うーん、司姉のサイズはこの辺りかな? 多分私と同じはず」
「……そんなのわたしに言って良いの?」
「え? 別に司姉になら知られても問題ないよ!」
「……そう」
うん、もう何も言わないでおこう。
因みに、リュネール・エトワールの胸のサイズはぶっちゃけ、ほぼ無い。ぺったんこである。貧乳はステータスと言われているが、確かにその通りである。
……って何を言ってんだ。
とにかく、カップ? だっけ、あれのサイズはAらしいんだよね。良く分からないが。
「これとかどう?」
そう言って真白が取ったのは、シンプルな白いブラジャーである。そして下もまた白で、何ていうか……清楚な感じ? 真白の事だから変なのとか持ってくるかと心配したが、考えすぎだったか?
「良く分かんない」
「まあ、そうだよね。うん、取り敢えず司姉の好きな色は?」
「白か黒……もしくは水色」
「うん、変わってないね司姉」
変わらない方が良いだろう?
「それならやっぱり、これで良いかな、あとは予備に何着か……あ、一応司姉、サイズ図らせて」
「え?」
「え? じゃない。ほら、試着コーナー行くよ!」
「ま、待って……」
「待たない!」
ってな感じで俺の抵抗虚しく、試着室へと真白に連れて行かれるのであった。そして何処から取り出したのか、メジャーを手に持っていた。
「何処から出したの……」
「ふふふ……さ、測ろうか。バンザイして」
「ん」
どうせ抵抗しても無駄だろうと思い、俺はバンザイした状態になる。上着は脱がされ、Tシャツ上から胸の部分にメジャーを当て、測る真白。真白の顔が近く、ちょっと照れくさい。
ちょっぴりくすぐったい感じが終わったところで、測り終えたみたいだ。
「うん、Aカップだね。私と同じ」
「そう……」
「という事でブラと下着はこれで良いかな」
何着か取ったセットをかごに入れる真白。
「後は服も見ないとね」
「ん」
そのまま、俺たちは今度は服のコーナーへと向かうのだった。
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