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第三章『真白襲来!?』

Act.03:それはある日常風景の一つ①

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 キーンコーンカーンコーン。

 教室内にチャイムが響き、先生が机に教科書を置きます。

「今日はここまでですね」

 6時限目の授業が終わり、皆さんは放課後ムードとなります。

「雪菜ー!」

 教室を出ると、隣のクラスに居る双子の妹である冬菜が手を振りながら、やって来ました。

「あ、冬菜。お疲れさまです。授業中寝てたりしてませんか?」
「もう! 雪菜は私のこと何だと思ってるのさ! ……少ししか寝てないよ」
「寝てるじゃないですか……」

 私はやれやれと両手をあげます。まあ、冬菜が良く寝るのはもう既に周知の事実ですので今更なんですけどね。それにしても、そんな寝てるのにどうして成績は割と上位にいるんでしょうか……不思議です。

「一緒に帰ろ!」
「はいはい、いつも通りですね」

 ふふ、っと笑います。
 この中学校は珍しく、部活とかは強制ではないのです。私は魔法少女っていうのもあって部活には入ってません。それを真似たのか、冬菜も入ってませんね。

 いつものように私たちは二人で帰路につきます。
 校舎を出て、校門を出て後はそのまま家まで歩くだけです。大体歩いて15分くらいでしょうか? そのくらいの距離に私たちの家はあります。

「大分日も短くなってきたねー」
「ですね。もう12月ですし」

 まだ冬至にはなってないですが、既に年末月です。日が短いのは当たり前ですね。

「12月と言えば、雪菜は彼女とは上手くやってるの?」
「か、彼女って! まだなってませんよ!」
「まだ、ね。つまり、なる気はあるということだね」
「うっ」

 彼女、とはリュネール・エトワールこと司さんの事です。私が好きな子……お友達にはなれたので、そこは素直に嬉しいです。
 でもまだそれだけですけどね。好きなったのは助けられた時だと思います。正確にはその後に撫でられた時も含まれますかね? あの時はもっとして欲しいと思ってしまってました。

 あー、分かります。思い出すだけでも顔が赤くなりますね。

「でも、雪菜、ライバルも居るんじゃなかった?」
「ええ、まだはっきりとは分かってませんけど……多分あの子も」
「もたもたしてると取られちゃうんじゃない?」
「ううぅ……」

 し、仕方がないじゃないですか。
 誰かを好きになった事なんてこれが初めてなんですから。どうしたら良いか分かりませんよ……でも、取られてしまう可能性もあるというのはもう承知の上です。
 でもお友達になれたのは私としても結構な前進だと思っています。ここからが本番、という事なのでしょう。告白をするにしても、もう少し仲良くなってからじゃないとあれですし。

「もう、思い切って一目惚れしましたって告白したら?」
「そ、それは……」

 急すぎませんかね。
 一目惚れ……なのかは分かりませんけど、初恋なのは確かです。最初は何とも思っていませんでした。何故、魔法省にも所属せず、ソロで活動していたのか、それだけしか気にしてませんでしたし。
 むしろ、何でソロで活動できるんだろうっていう気持ちがありましたね。それもそうじゃないですか? 魔法少女は魔物と戦うという命と隣り合わせな仕事です。支援もなしにやって行けるのかと言う話です。
 でも、彼女は実際一人でやって行けてます。両親も居ないと聞きましたが、どうしてそこまで強いのでしょうか。

 本当に今でも謎が多いです。
 でも、実際本当の姿で会った時は、彼女もやっぱり普通の女の子なんだな、と思いました。表情や口数は少ないですけど、それでも実際は素直で良い子だと思います。

 まあそれは置いとくとしましょう。
 彼女のことを恐らく、蒼ちゃんも好きだと思ってます。まだ断言は出来ませんが、実際に私と同じような状態っぽく見えてますし。
 負けてはいられませんが……どうすれば良いでしょうか。

「うーん。やっぱりそれならもっと仲良くなる為に色んな所に行くべきじゃない?」
「それもそうなんですけどね……連絡先分かりません」
「え?」
「連絡先分かりません……」
「えええ!? 友達になったのに連絡先が分からないって……」
「私も連絡先教えてませんでしたし」
「駄目じゃん!」

 うぅ……そうですよ、何で私、実際お出かけしたのに連絡先交換してなかったんでしょうか。私のバカバカ! でも、リュネール・エトワールの事ですから魔物が出た時に高確率で会えそうですけどね。

「魔物が出ると良く会いますし、大丈夫かなと」
「はあ……雪菜、連絡先くらいは交換しよう。まずはそこからじゃない?」
「そう、ですよね」

 連絡先さえ、教えてもらえればいつでも都合が良ければ連絡取って出掛けられるはずですし。よし……今度会った時は聞いてみましょう。負けてはいられません、と私は両手を前にガッツのポーズを取るのでした。

「やる気だねー」
「はい」
「頑張って」
「ありがとうございます、冬菜」

 まあ、教えてくれるかはまずわからないですけどね。
 そんなこんな考えながら、時に冬菜と話しながら家へと向かうのでした。



□□□□□□□□□□



「蒼~休みだからって寝過ぎよ~」

 ママの声が聞こえて私は布団から出る。時計を見ると、既に10時を回っていて、自分でも思ったより寝ていた事に驚いた。
 思い出すのはやっぱり昨日の夜のせいだ。リュネール・エトワールいや、司のせいだ……いや、違うのは分かってるけどね。まあここまで来たらもう自覚してない程、馬鹿とか鈍感ではない。

 司の顔を思い出すと、ドキドキするし、何らなまた会いたいとも思ってる。これは私の気持ちだ。姿見に映る自分の顔を見れば、やっぱり赤い。

「好き」

 たったその一言だけで顔がさらに赤くなるし、心臓の鼓動も早くなる。嗚呼、間違いない。私は司に恋しているのだろう。昨日の夜も分かっては居たけど、認めたくなかったのかもしれない。
 いや、司が嫌いという訳じゃない。そうではなく、彼女は同性なのだ。私はつまり同性に恋をしてしまったという事。恋に落ちるのは突然、とは良く言われているし、本当にそうだと思った。

 この恋が許されるものなのだろうか。私はそんな事を考えながら着替えを済まし、一階へと降りる。

「ママ、おはよう」
「ふふ、おはよう蒼。今日は随分とお寝坊さんね」

 クスクス笑うのは私のママである。パパは休みの日もしょっちゅう留守にしてることが多いから、会える方がレアだったりする。
 でも、ママもパパも仲がかなり良い。偶々休みだった日なんか、出掛け先でもイチャイチャするし、こっちも恥ずかしい。

「うん、ちょっとね」

 この事、相談しようかな。でも……どうだろう。同性の子を好きになるって、ママも流石に引いちゃうかな?

「何か悩み事?」
「ママ……」

 いつの間にか隣りに座っていたママを見てちょっと驚く。やっぱり分かっちゃうよね……。

「えっと、変な話なんだけど……」

 この際だ、正直に話そうと思う。ママに隠し事は出来ないしね……今までもすぐバレちゃうし。私はとある少女の事が好きだということを素直にママに話した。

「なるほどねーふふ、蒼も恋したかー」
「おかしい、かな?」

 何処か嬉しそうに話すママ。

「可笑しくないよ。恋ってそういう物でしょ。いつ落ちるかなんて誰も分からない。それがたとえ同性でも、恋は恋なんだから」
「引かない?」
「私が蒼を? そんな事絶対あり得ないわよ。蒼は私がお腹痛めて生んだ大切な娘なんだから。パパも同じだと思うよ。同性の恋は確かに世間的には良く見られてない所もある。けど、外国では同性婚を認めてる国もあるくらいよ? おかしくないわよ」
「……ママ」

 その言葉は暖かく感じる。うん、何かママに話したらちょっとすっきりしたかもしれない。

「まあ、何はどうであれ……蒼、その子の事好きになっちゃったんでしょ?」
「うん」
「応援するわよ」
「ありがとう!」

 良かった……というのもなんか変かもしれないけど、ママは普通に話を聞いてくれたし、特に何もなかった。引かれたりとかしたらちょっと怖いなと思ってたけど。

 うん、認めよう。私はリュネール・エトワールいや、司が好きだということ。そう認識すると今までのモヤモヤも消えていく。ホワイトリリーにもやっとしたのは、好きな子と一緒に居たからだろうし。

 ……でも、これからどうしようかな?





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