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第十話 ドラキュラとトマト祭り③

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「た、ただいま」
「おかえりなさい。どうだった初めてのアルバイトは?」
「時給1万エリスって言っていたのに、異世界に飛ばされてそこで合計九日間過ごすとは思いませんでした。多分これ本当の時給にすると……」
「このアルバイトは特殊だからね。天界ではまだ7時間と15分しか経っていないのよ」
「……なんかすごく損した気分……。まあ、無事にクリアできてよかったです。ダリアさん、どうして僕はクリアしたのか教えてもらっていいですか?」
「ええ、簡単に説明するわね。結論から言うとドラキュラ伯爵のポケットに入ってた紙は重要な契約書で、あなたがもし注意しなかったらトマト投げでぐしゃぐしゃになっていたの」
「なるほど、こんなことで解決しちゃうんですね」
「問題なんてそんなものよ」
「ちなみにその契約書ってどんな契約書なのですか?」
「あの契約書の中身はトマト税30%の契約書よ。あの町で収穫できたトマトの30%をドラキュラ族へ毎年譲渡するという契約書よ 。今年は想像以上に豊作だったから町長がのりでサインしちゃったみたいね」
「税率30%って結構多くないですか?」
「あそこの領地はもともとドラキュラ族の領地でね、人間たちはドラキュラにトマトを納税することで生きる権利をもらっているの。いままでは15%だった税率が30%になるんだからもしこれを汚してダメにしてしまってはドラキュラ族にとって痛手ね。あなたがあの世界に転生しなかった時は『さすがにお前らトマト投げやりすぎだ』と癇癪を起し、夜に町長の息子をさらい彼の血液を一滴残らず吸い取ってしまうという恐ろしい未来だったわ」
「おお……なんか逆切れみたいな感じだけど、何とかその未来を防げてよかったわ。というか税率30%はどうなるの?」
「さあ、次の転生者が解決しいてくれるんじゃない?」
「なげやりですね。確かに次の異世界転生者が解決する課題ではありますが」
「なにはともあれこれでイセパットに登録できるわ。登録するからちょっとまってね」

 ポチポチ トウロクカンリヨウ

「よし! これで天界に来た人がこの世界に異世界転生することができるわ」
「よかったです。ちなみにこの世界はどんな形で始まるのですか? 今後俺が転生するときの参考にしたくて」
「ええ。教えてあげるわ。このイセパットを見てみなさい」

タイトル『結婚相手は美人なロリ吸血鬼。え? 吸血鬼って一夫多妻なのですか?』

「な……なんかいつも思うんだけどとある小説投稿サイトにありそうな題名だな」
「最近だとそっちのほうがインパクトがあって、転生する人たちの理解が早いからいいのよ。ほら、説明欄をよく見てみなさい」
「そうなんですね。そういえばミミさんも同じこと言ってましたね。えっとどれどれ……」

 ――――――――――――――――――――
『結婚相手は美人なロリ吸血鬼。え? 吸血鬼って一夫多妻なのですか?』

 ―トマト祭りの夜、とある村の町長の息子が就寝中、金髪のロリ美少女吸血鬼が寝室にやってきた。
「私! あなたと結ばれたい! これを見なさい!」
 ロリ吸血鬼は『結婚契約書』を突き出してきた。彼は契約書の内容に従い眠さをこらえながらも夜の営みを終える。そして翌朝に彼女と結婚する。

 ※ここのタイミングで転生。 
 
 その後もケモミミ吸血鬼、マーメイド吸血鬼が妻となり。トマトが特産物の小さな町で三人の美人妻と仲睦まじく過ごすスローライフです!

 ――――――――――――――――――――
「要するに、ハーレム系なスローライフな世界ね」
「……ダリアさん。ひとつ言いたいことがあります。忘れ物をしました」
「ん? 何をわすれたのかしら? といってもあっちの世界のものを天界に持ってくることはできないけどね」
「……いを捨て忘れました」
「え?」
「だから、童貞を捨て忘れたんだよおおおおおおお! だってトマト祭りの後の夜にロリ美少女吸血鬼ちゃんと夜の営みをするって書いてあるじゃないですかぁあ! クエストクリアした後、早く天界に帰らずにあのままいたら、かわいいロリ吸血鬼ちゃんと……うぅ。だから戻して! ロリ吸血鬼ちゃんに会いたい!俺、ここに転生したい!」
「あんた馬鹿じゃないの? できるわけないわよ。アルバイトなんだから守秘義務の関係でその世界には二度と干渉することができないわ!」
「そ、そんなぁ!」

「はい、じゃあこれ、8万エリス。今日は早めにかえっていいわ。明日からまたよろしくね」
「うぅうううううううう!バイトが早く終わったのに! 早く帰れるのに! なんでこんなに悲しいんだよおおおおおお!」
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