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第7話
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さあどうするか?
とりあえず、イッチーん家か? いや……。
俺は考える前に気持ちが先走っていた。その足はすでに神埼の家へと向かっている。
とにかく今の神埼を見たい! 見たあとはわからない……。
告白するかもしれない、黙って見終わるだけなのかも……いや、想いだけでも告げよう。
そして俺は……俺は。
急に息が激しくなる。走ってもいないのに。
神埼、どんな感じなんだ? 美人になったのか? まさか俺みたいにひきこもりに?
いやいや、あの神埼に限って、な。
きっと美人になって、あいつらしい、なんか活発な仕事でもやってんだろ。
例えば教師とか? スイミングスクールの先生とか? 教師ばっかじゃねーか。
ていうか、実家暮らしなのか? 34歳で? ちょっと異常じゃね?
だったら俺は超ヤバいよな。
いろんな不安と期待で胸がいっぱいになる。
長い長い心臓破りの坂道を登り終えると、十字路の交差点があり、俺から見て左側に神埼の家はあった。
古いごく普通の一軒家だった。
「か、神埼。今から俺……」
どうすんだ? いきなり、告るのか?
さすがに神埼もビックリするだろうよ。
それに俺ってわかるのか?
成人になった俺は今100キロもあるデブに大劣化してしまったんだぞ!
不安と緊張で推しつぶれそうになる自分を神埼だけの想いと期待に無理やり変える。
準備は整った。さあやるぞ!
門扉を開け、玄関前のドアに立ち、隣りにあったインターホンを押そうとした瞬間だった。
「ねーねー、今日はどこいくのー?」
中から少女らしき声が聞こえた。
「か、神埼!?」
いやいや、落ち着け、俺。
どんだけ魔女なんだよ? 彼女は今、34歳だ。良くも悪くも34歳なのだ。
まあロリータ神埼でも全然イケるのだが……。
「今日はねー、瑠璃ちゃんの好きな…動物園でーす」
母親らしき声が聞こえる。
「やったーーー! レッツ、レッツゴー♪」
喜んで家の中を飛び跳ねる音が聞こえる。
「じゃあ、みんなでレッツゴー♪」
中から数人の足音と共にこっちに近づいてくる気配を感じた。
「や、やばい!」
すぐさま神埼の家を飛び出て、近くの家の壁に身を隠した。
なんでここで逃げる俺!? 関係ないだろ?
子供なんて文句言ってきたら、泣かしちまえばいいだけなのに。
壁から顔だけを出して神埼の家を覗く。
やっていることはマジでストーカーぽい……いやストーカーだ。
「おじいちゃーん! 早く早く! 動物さんたち、いなくなっちゃうよ!」
白いシャツにデニムのジャンバースカートを来た少女が車の前で飛び跳ねている。
小学校3.4年生ぐらいの年齢に見える。
切れ長の目に、割と高めの鼻、唇はふっくらとしている。
キスしたら気持ちよさそうだ…って俺はなにを。
その娘はどことなく、思い出の神埼の小学生時代を思い出させる。
ち、違うよな? 親戚だからだよ。
念じるように自分に言い聞かせる。
「そんなに急がないでも動物さんたちは逃げないよ」
中央のみが、きれいに禿げ上がった白髪の男が優しい笑顔で少女をなだめる。
しわとたるみで少し違いはあるが、少女の切れ長の目に似ている。
鼻は高く、大きな唇。もみ上げから顎先まで白髪のヒゲを伸ばしきっている。
ひょっとして神埼の父親か?
にこやかに笑っていた神崎の父親らしき男が、振り返ると玄関に向かって鬼の形相で怒鳴りあげた。
その声に俺がビクッと震えてしまった。
「明日香! 早くせんか!」
……神埼なのか。
足がガクガクと震えだした。
「うそだよな……姪っ子とかだよな?」
ドアが開くと中から仲睦まじく夫婦が手を握って出てきた。
まず夫に目がいった。
男の方は背が高く、180センチほどか。ドラマに出てきそうなハンサムガイだ。
ツーブロックの髪にメガネをかけ、俺とは正反対の全身真っ白。
白いシャツに白いハーフパンツ、靴まで白、しかも素足で。
首にはストールを巻いている。
「なんなんだ。あのチート野郎は」
続いて妻の方を見ると胸が張り裂けそうになった。
神埼だ……間違いない。
20年以上経っても俺にはわかる。彼女がいるだけで映画のワンシーンに見えるぐらい美しい。
その間、俺の目に映る神埼明日香はスローモーションで動いていた。
切れ長の目に小さな鼻と唇。小学生時代のようなボーイッシュな短い髪ではなく、肩まで下りた長い髪。
前髪は伸ばして、右に流している。
紺色のワンピース。腰にはリボンが巻かれている。
風でスカートがバタバタとなびいている。
きれいだ……やっぱり、神埼は美人になっていた。
男勝りだった勝気な神埼の影はほとんど残っておらず、美人なところ以外はごく普通の主婦、母親だ。
夫が手を握りながら隣りを歩く女に微笑みかけると、立ち止まる。
すると、きょとんとした神埼の細いあごをぐいっと上げ、もう片方の手で腰に手を回し、白昼堂々、濃厚なディープキスをはじめた。
「ああっ! んの野郎!」
神埼はキスされた一瞬だけ、驚いていたが、すぐに目をつぶり身をゆだねていた。
その顔は俺が知らない女の顔をした神埼だった。
神埼ってこんな顔できるのか……あんな勝気だった女の子が。
とりあえず、イッチーん家か? いや……。
俺は考える前に気持ちが先走っていた。その足はすでに神埼の家へと向かっている。
とにかく今の神埼を見たい! 見たあとはわからない……。
告白するかもしれない、黙って見終わるだけなのかも……いや、想いだけでも告げよう。
そして俺は……俺は。
急に息が激しくなる。走ってもいないのに。
神埼、どんな感じなんだ? 美人になったのか? まさか俺みたいにひきこもりに?
いやいや、あの神埼に限って、な。
きっと美人になって、あいつらしい、なんか活発な仕事でもやってんだろ。
例えば教師とか? スイミングスクールの先生とか? 教師ばっかじゃねーか。
ていうか、実家暮らしなのか? 34歳で? ちょっと異常じゃね?
だったら俺は超ヤバいよな。
いろんな不安と期待で胸がいっぱいになる。
長い長い心臓破りの坂道を登り終えると、十字路の交差点があり、俺から見て左側に神埼の家はあった。
古いごく普通の一軒家だった。
「か、神埼。今から俺……」
どうすんだ? いきなり、告るのか?
さすがに神埼もビックリするだろうよ。
それに俺ってわかるのか?
成人になった俺は今100キロもあるデブに大劣化してしまったんだぞ!
不安と緊張で推しつぶれそうになる自分を神埼だけの想いと期待に無理やり変える。
準備は整った。さあやるぞ!
門扉を開け、玄関前のドアに立ち、隣りにあったインターホンを押そうとした瞬間だった。
「ねーねー、今日はどこいくのー?」
中から少女らしき声が聞こえた。
「か、神埼!?」
いやいや、落ち着け、俺。
どんだけ魔女なんだよ? 彼女は今、34歳だ。良くも悪くも34歳なのだ。
まあロリータ神埼でも全然イケるのだが……。
「今日はねー、瑠璃ちゃんの好きな…動物園でーす」
母親らしき声が聞こえる。
「やったーーー! レッツ、レッツゴー♪」
喜んで家の中を飛び跳ねる音が聞こえる。
「じゃあ、みんなでレッツゴー♪」
中から数人の足音と共にこっちに近づいてくる気配を感じた。
「や、やばい!」
すぐさま神埼の家を飛び出て、近くの家の壁に身を隠した。
なんでここで逃げる俺!? 関係ないだろ?
子供なんて文句言ってきたら、泣かしちまえばいいだけなのに。
壁から顔だけを出して神埼の家を覗く。
やっていることはマジでストーカーぽい……いやストーカーだ。
「おじいちゃーん! 早く早く! 動物さんたち、いなくなっちゃうよ!」
白いシャツにデニムのジャンバースカートを来た少女が車の前で飛び跳ねている。
小学校3.4年生ぐらいの年齢に見える。
切れ長の目に、割と高めの鼻、唇はふっくらとしている。
キスしたら気持ちよさそうだ…って俺はなにを。
その娘はどことなく、思い出の神埼の小学生時代を思い出させる。
ち、違うよな? 親戚だからだよ。
念じるように自分に言い聞かせる。
「そんなに急がないでも動物さんたちは逃げないよ」
中央のみが、きれいに禿げ上がった白髪の男が優しい笑顔で少女をなだめる。
しわとたるみで少し違いはあるが、少女の切れ長の目に似ている。
鼻は高く、大きな唇。もみ上げから顎先まで白髪のヒゲを伸ばしきっている。
ひょっとして神埼の父親か?
にこやかに笑っていた神崎の父親らしき男が、振り返ると玄関に向かって鬼の形相で怒鳴りあげた。
その声に俺がビクッと震えてしまった。
「明日香! 早くせんか!」
……神埼なのか。
足がガクガクと震えだした。
「うそだよな……姪っ子とかだよな?」
ドアが開くと中から仲睦まじく夫婦が手を握って出てきた。
まず夫に目がいった。
男の方は背が高く、180センチほどか。ドラマに出てきそうなハンサムガイだ。
ツーブロックの髪にメガネをかけ、俺とは正反対の全身真っ白。
白いシャツに白いハーフパンツ、靴まで白、しかも素足で。
首にはストールを巻いている。
「なんなんだ。あのチート野郎は」
続いて妻の方を見ると胸が張り裂けそうになった。
神埼だ……間違いない。
20年以上経っても俺にはわかる。彼女がいるだけで映画のワンシーンに見えるぐらい美しい。
その間、俺の目に映る神埼明日香はスローモーションで動いていた。
切れ長の目に小さな鼻と唇。小学生時代のようなボーイッシュな短い髪ではなく、肩まで下りた長い髪。
前髪は伸ばして、右に流している。
紺色のワンピース。腰にはリボンが巻かれている。
風でスカートがバタバタとなびいている。
きれいだ……やっぱり、神埼は美人になっていた。
男勝りだった勝気な神埼の影はほとんど残っておらず、美人なところ以外はごく普通の主婦、母親だ。
夫が手を握りながら隣りを歩く女に微笑みかけると、立ち止まる。
すると、きょとんとした神埼の細いあごをぐいっと上げ、もう片方の手で腰に手を回し、白昼堂々、濃厚なディープキスをはじめた。
「ああっ! んの野郎!」
神埼はキスされた一瞬だけ、驚いていたが、すぐに目をつぶり身をゆだねていた。
その顔は俺が知らない女の顔をした神埼だった。
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