悪役令嬢に転生しても、腐女子だから全然OKです!

味噌村 幸太郎

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第三章 最強最悪女王の誕生

ワールド・イズ・マイン

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「ユリ様、ユリ様……起きてください」

 私の肩を揺さぶるのは、有能な執事のカデルだ。
 
「う、眠っていたか……。今、何時だ?」
「もう朝ですよ。それに今日は12月の24日。大切な日なのでしょう?」

 それを聞いて、一気に目が覚めた。
 ここ最近、ずっと助手のオリヴィアと徹夜で原稿を書いてたから、なかなか眠れず。
 玉座で寝落ちしてしまった。

「そうだったわね。今日は聖夜! 決戦の日よっ!」
「ええ、コミケがついに開催されるのですね……」

 何度も自身の魔法、”コピー”で同人本を複製させたので、カデルの”マジックポイント”は毎日、枯渇していた。
 そのため、最初出会った頃より、頬がこけてしまった。

「無理をさせてすまんな……カデルよ」
「いえ、これもこの国のため、いや! ユリ様にお仕え出来るのが嬉しいからです!」

 と眼鏡の下から涙を流す。
 良き忠臣を持ったものだわ……。
 
  ※

 玉座から立ち上がり、赤い絨毯が敷かれた階段をゆっくりと降りる。
 すると、近くで待機していた我が弟子たちが、床に膝をつき頭を下げる。
 両手には今回のコミケで販売する、各々の同人本が並んでいた。

 アランは正統派な百合。オリヴィアはモブおじさんとショタっ子BL。
 それにザリナは、ちょっと変わった”ふたなり”もの。

「「「陛下! どうぞ、ご覧ください」」」

 私は静かに頷くと、彼らの薄い本をありがたく頂戴する。
 どれも上手に出来ている。育てた甲斐があったってもんね……。
 それら三冊の同人本を手に持つと、宮殿からバルコニーへと抜けていく。
 もちろん、弟子である彼ら4人も私のあとを追いかけてくる。

 宮殿から外へ出ると、そこは大勢の国民で溢れかえっていた。
 城下町の人間たちが皆、この日のために集まってくれたのだろう。
 興奮した国民は、私を見たいがために家の屋根に登っている者までいた。

「「「百合っ! 百合っ! 百合っ!」」」

 と左手からは、男性陣の熱い叫び声が……。

「「「ビーエルっ! ビーエルっ! ビーエルっ!」」」

 と右手からは、女性陣の凄まじい叫び声が聞こえてくる。
 正直、男性陣の声をかき消してしまいそうだわ……さすがね。
 よく見れば、みんな手になにかを持って掲げている。
 卑猥なBLの抱き枕やうちわ。ナイスですわぁ。

 興奮した民衆の声を止めるように、カデルが右手を掲げる。
 すると、一斉に静まり返った。

「これより、ユリ・デ・ビーエル女王陛下による演説を始める! しかと聞くが良い!」
 
 私は一歩前に進み、民衆に向かって叫んだ。

「今日のためによくぞ集まってくれた! 私も嬉しい!」

 そう言うと、たくさんの歓声が上がる。

「女王様っ! BL文化を広めてくださり、ありがとうございます!」
「私たちのような国民にまて、高級な紙やペンを配って下さるなんて……」
「ユリ様はショタの扱いはどちらです!? 女装ですか? それともありのままが良いですか!」

 最後の質問は、後者ね。

「諸君らに聞きたい! 煩悩は108個あるというが、それだけで足りるか!?」

 私の問いに民衆はざわめき出す。

「良いかっ! 煩悩などいくらあっても足りないと私は思うっ! なぜなら全て作品に使ってしまうからだ! 煩悩を高めるのだっ! 自分という性癖を受け入れようじゃないか!」
 
 隣りで聞いていたカデルが私の話を聞いて、思わず涙をこぼす。

「名言にございます、陛下」

 それに続いてアランとオリヴィア、ザリナまで涙を流している。

「今日はその煩悩を解放すべき一日だ! 第一回コミックマーケットの開催をここに宣言するっ!」

 私の演説に感動した民衆は、みんなで号泣していた。
 抱きしめ合う人たちも見える。

 この世界、案外ちょろいもんね。

  了
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