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第二章 百合の花を咲かせましょう
百合でてっぺん獲りますわ!
しおりを挟む暗くて汚い地下牢にぶち込まれて、3日後。
夜中に寝ていたら、いきなり数人の男たちが牢屋の中に入って来た。
「あなたたち、一体なんなの……?」
「……ハァハァ」
鼻息の荒い男たちは、何を思ったのか私を担ぎ上げる。
その後”マジーナ”王国の宮殿から連れ出された私は、男しかいない兵舎に連れて来られた。
「さあ、ユリ様。見せてもらいましょうか?」
「え? な、なんのこと?」
「しらばっくれても遅いのですっ! 私たちにもその……”キマシタワー”という絵を見せてください!」
「あ、百合のこと?」
どうやら地下牢を担当していた兵士が、私の書いた百合を見てすごく感動したらしく。
兵舎に戻って、その話を仲間にしたらしい。
同性愛という概念はあっても、それを創作物として見たことは無いようね。
屈強な身体をした男が、目をキラキラ輝かせてチョークと小さな黒板を差し出す。
「お願いです! どうか私たちにも百合というものを見せてください!」
「フッ……いいでしょう! あなたたち、徹夜で待てるかしら?」
そう言って、チョークを受け取ると。
「「「もちろんですっ!」」」
男たちの歓声が上がる。
※
それから、私はオリヴィアとザリナをモデルにした百合イラストを描きまくった。
兵舎の壁はもちろん、兵士の鎧に盾、剣。槍にまで……。
今では宮殿内の兵士たちから、崇拝される存在となってしまったわ。
すれ違う時には、「お疲れ様です、ユリ先生!」と敬礼されるほど。
ちょっと前までは、死刑を待つ身分だったのに、今では宮殿内を自由に歩き回れる。
しかし、百合文化を広めたと言っても数が少ない。
兵士と言っても、数百人ぐらいかしら?
やはり頭を取らないとね……。
そして、不安に思っていたことが突然来てしまった。
第二王子のカデルだ。
私が兵舎で仲良くなった兵士たちと、”百合かるた”で遊んでいたら。
勢いよく、扉が開かれた。
「君たち! なにをやっているんだ? 兵士としての仕事も放棄し、おままごとなんてっ!?」
真剣に百合かるたを遊んでいた兵士が、王子に向かって睨みつける。
「ああんっ!? なんですか! 今、ユリ先生といい勝負なんですよ。邪魔しないでくれます? チッ……」
と王子に向かってメンチを切る。
うむ、良い感じに仕上がってきたじゃない。
「な……誰に向かって言っているんだ? 僕は第二王子だぞ?」
「知ってます。でも、こっちも毎日ね、先生から百合を真剣に教わっているんですよっ!」
「君は一体、何を言って……?」
おっと、兵士たちを調教し過ぎたみたいね。
まだ百合の耐性や知識もないカデルには、敷居が高いか。
見かねた私は、助け舟を出すことにした。
「カデル王子、私に用があって来たんじゃないんですか?」
「あ、ユリ様。そうです。兄上から処刑宣告を言い渡されたあなたが、なぜこのような待遇に?」
「フッ……それを知るには、まずこれを読むことね」
と一枚の冊子を差し出す。
この一週間で私が作った同人誌だ。
高価な紙と万年筆を兵士たちがわざわざ用意してくれたのだ。
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