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第八章 黒王

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 一面緑で覆われた大きな森が見えてきた。
 ちょうど、中心に古い城がある。

「あれか……」
「そうじゃ、あれが妾の最後の希望じゃ」
「ん?」

 何かが、俺の目を過ぎった。
「どうした?」
「あ、いや……」

 まただ……見える。
 それは俺の目に映ったのではなく、頭の中に映っていた。
 ノイズのようなものが混じっていて、しっかりとは見えないが、確かにどこか遠方の映像だ。
 変な猫のマークがついた巨大戦艦が空を飛んでいる。
 聞こえる……これは……声だ、誰かの声だ。


『……目標確認』
『ハーク様、ついに見つけましたね』
『うむ、やっとだな……。やっと……見つけた……。忌まわしき城め。今度こそ、その姿を無きものにしてやるわい』


 なんなんだ? この猫人間どもは……。
 脳内にぼんやりと映し出される映像。


「……まさか、こいつは!」
 これは魔王の力なんじゃねぇのか。
 ということは、これは身に危険が迫っていると言う信号……。
 そうか……そいつはいいや。

「婦子羅姫! 海呪城の高度を直ちに上げろ!」
「どうしてじゃ?」
「敵が下にいやがる!」
「なんじゃと?」
 
 それを聞いたミノが慌てだす。
「下を確認しろ! 敵艦に怪しい動きはないか!?」
 いつにない厳しい顔つきで、部下に叫ぶ。

「はい、まだこちらには気づいておりません」
 ホッとした彼が俺の方にやって来て、深々と頭を垂れた。

「ありがとうございます。黒王様のおかけで、敵の戦艦を察知することが出来ました」
「よ、よせよ。勘だよ、カン」
 ミノは「ご謙遜を」という顔で首を振る。
「いえいえ、これぞ黒王様のお力。御見それいたしました」
「もう、分かったよ……それより、この戦艦。どこのもんだ?」

「それは五大魔神、ハーク・フォゼフィールドの船じゃ」
 振り返ると、険しい顔をした婦子羅姫がいた。
「ハ、ハーク……フォ、フォ、フォンデュ?」
 カタカナに疎い俺は舌をかみそうになった。

「ハーク・フォゼフィールドじゃ。今、魔族を取り仕切っているのは奴じゃ。奴さえいなければ……日本の妖怪達は……」
 婦子羅姫は悔しさを抑えるために、歯を食いしばった。
 その悔しさは彼女の顔から、十分、伝わってくる。
「姫……心中、お察しします」
 ミノも寂しげな顔でうな垂れた。

 俺はそんな二人を見ていられなくなり、思わず、叫んだ。
「バカ野郎!」
 婦子羅姫とミノの体がビクッと震えた。

「そんな弱気でどうすんだ! お前らは……人間が恐れる、あの妖怪達だぞ。俺が小さい頃、読んでいた絵本に出てきた妖怪は本当に恐ろしかった……。そんなに弱くなかったぜ。やっぱ、妖怪も人間と同じで、時代によって風化されんのかよ? 違うだろ……。お前らは、日本最強の化け物だ。もっと、ビシッとしろよ!」
 二人は目を見開いて、俺の顔を見つめている。
 やがて、お互いの顔を見て頷いた。

「黒王様の言うとおりですな。この老いぼれ、年と共に、若かりし頃の熱い血を全て流しきったと思っておりました。ですが、先ほどのお言葉で、あの、昔の血が甦った気がします」
「すまなかった……黒王」
「だから、謝るなよ。どこに謝罪する妖怪がいるんだ?」
 俺がそう言うと、婦子羅姫が微笑んだ。
 そうだ。それでいい……。

「よし、これから敵の戦艦に不意討ちをかける!」
 ミノが目を丸くして言った。
「なんですと! 相手は五大魔神ですぞ」
 俺は鼻で笑った。
「んなこと関係ねぇよ。敵はぶっ潰すだけさ」
 自分でも訳が分からないのに、気づいた時は体を動かすよりも先に口が動いていた。
 次々と策が頭に浮び、それを口に出す。

「まず、俺が先陣をとって、隙を作る。その間に婦子羅姫は城の中に入れ。そして、海呪城は敵戦艦に特攻をしかけ、白兵戦にもちこめ!」
「は!」
 ミノが部下達に、指示を伝える。
 婦子羅姫がそっと俺に近づいた。

「黒王、大したものだ。惚れ惚れする……」
「へっ、お世辞はこの作戦が成功してから頼むぜ」
 婦子羅姫が皆にわからぬように、そっと、俺の手を掴んだ。
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