不死鳥~あの時、僕の一言が無ければ~

味噌村 幸太郎

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遺産相続

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 ネットオークションが流行り出して、僕はよく母さんに頼まれて入札を繰り返していた。
 中身は読んでないけど。
 ただ、母さんの自室もそんなに広くはない。
 長年買い漁ったBL小説、マンガ。CD、雑誌などで部屋は埋め尽くされてしまった。

 至る所にBL本が収納されているのだ。
 クローゼットにベッドの下、それからBL用に買った本棚。
 それでも入りきらないため、たまに僕へ処分を依頼してくることがあった。

 その中にはネットオークションで買った同人誌もある。

 この頃、僕は妻と結婚したばかりの新婚時代だ。
 気を使った母さんは、「この本を全部売れば、まあ……ランチ、いやディナー代ぐらいにはなるかしら?」と自信ありげに語った。
 しかし、中古市場に詳しい僕は、それを聞いて反論した。

「母さん! たったこれだけで、そんな高値がつくわけないだろ! 頑張っても2千円いけば良いところだよ!」
「いや~ この作品は今でも結構、人気だからね」

 とほくそ笑む。

 僕と妻は大量のBL本を車へ積み、中古を取り扱う本屋へ持って行った。
 その中には、要らなくなった僕のマンガやゲームもある。
 結婚したため、部屋が狭くなったので泣く泣く売ることにしたのだ。

 ~10分後~
 
 店員さんが僕たちの番号を呼ぶので、カウンターへ向かうと。
 眼鏡の男性店員が、驚愕の数字を口から放った。

「あ、お待たせしました。本日の買取りなのですが、えぇ~ 合計で1万5千円になります。よろしかったら、ここにサインをお願いします」

 僕は耳を疑った。
 今回、僕が処分するマンガやゲームにそんな高値はつかないはずだ。
 じゃあ、まさか……と思った僕は、お店の人に質問してみる。

「あの……なんかやけに高額なのですが、どれが高いんですかね?」
「それはですね~ こちらの一部商品がですね、結構プレミアがついているんですよ」

 そう言って、カウンターに持って来たのは全て母さんのBL本だ。

「え? じゃあそれだけで、いくらぐらいするんですか?」
「そうですね……ざっとですが、1万4千円ぐらいですね」
「!?」

 驚いた僕は、更に質問を重ねる。

「じゃあ、あの……他のゲームとか、マンガはいくらぐらいですか?」
「あぁ、こちらの方ですか?」

 そう言って、カウンターに持って来たのは、全て僕の愛用していたマンガやゲームだ。

「ちなみに、こっちはいくらぐらいですか?」
「う~ん。まあ、ざっとですが千円もいかないぐらいですねぇ」
「……」

 負けた。僕の愛していた作品が、母さんのBL本に負けるとは。
 いや、待てよ……。
 ひょっとして、若い頃にネットオークションで入札しまくった同人誌の中で。
 「作家さんが商業へ行った」と母さんが話していた。
 10年経ったから、価値が上がったというわけか!?

 なら母さんの部屋には、もっと価値のある同人誌が眠っているのでは?
 しかし、僕にはどれが価値のある商品なんて分からない。
 ここは孫に当たる、僕の娘たちがいつか引き継ぐだろう。
 どうせ、腐女子になるし……。
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