気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

味噌村 幸太郎

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第四十九章 どこかで誰かが見ている。

最強ヒロインのお弁当

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「また……ここに来てしまったのか」

 思わず、口にしてしまう。
 だって去年から、何回お世話になったことか……。

 俺がいつも食べている、とんこつラーメン屋。博多亭の目の前にあるビル。
 恥ずかしくて、ホテルの名前を確認する余裕はなかったが。
 今日、マリアから教えてもらい、初めてその名を知る。

 ラブホテル、チャンバラごっこ。
 そっち界隈も入室OKということだろうか?

 まだ入口の前だが、もう雰囲気が違う。
 こう、なんというか……ピリっとした空気というか。
 う~ん。この中でカップルが裸同士、ガチンコバトルを繰り広げているからか?

 自動ドアの前に立ったものの、なかなか中に入らない俺を見て、マリアが痺れを切らす。

「タクト? なんで入らないの?」
「いや……この前は偶然とか、事故に近いものだったから……緊張しちゃって」
 俺がそう言うと、彼女は「情けないわね」と首を横に振る。
「今日はもう、私がネットで予約しているから、いいのよ! ほら、早く」
 マリアに手を引っ張られ、ホテルの中へ入ることに。

  ※

 彼女が言った通り、ネット上で部屋を予約しているようで。
 最上階のフロアをほぼ貸し切り状態。
 いわゆるVIPルーム。休憩だけで、1万円もする。
 それでも、マリアは躊躇なく、この部屋を選んだ。
 こだわる理由は、以前俺がアンナと利用したから……。
 
 俺が財布を出す前に、気がつくとマリアは受付に声をかけていた。
「すいません。予約していた冷泉ですが、一泊お願いします」
「かしこまりました。宿泊のご利用ですね?」
「はい」

 受付で支払いを済ませようとするマリアを見て、俺はすかさず止めに入る。
「お、おい! なんで、宿泊するんだ? 休憩で良いだろ?」
「え? なんでよ? ホテルなんだから、一泊するに決まっているじゃない」
「それは普通のホテルだろ……」

 ダメだ、この人。
 ラブホテルというものを理解していない。
 一応、マリアもお嬢様だからな。
 ご休憩て意味を知らないのも、仕方ないか……。


 エレベーターに乗り込み、最上階へと向かう。
 ここまでのマリアは、至って自然体というか、余裕たっぷりといった感じだった。
 しかし、肝心の部屋へたどり着き、ドアノブを回すと、大人の空間が彼女を一気に飲み込んでしまう。

 豪華なシャンデリアに、鏡張りの天井と壁。
 なぜかスロット機が2台。それに大型テレビが1台。
 ベッドの近くには、謎のスイッチがたくさん並び。
 そして、ティッシュと“大事なもの”が置いてある……。

「「……」」

 二人して、部屋の真ん中で固まってしまう。
 アンナの時は、勢いだったからな。

「へ、へぇ~ 大したことないじゃない……ラブホテルと言っても」
 そう強がっているが、声が震えまくっている。
「なあ、マリア。今からでも良いから、やめないか? もっと10代の恋人らしい……初詣とかに変更しないか?」
 俺がそう言うと、彼女の整った顔がグシャっと歪む。
「イヤよ! ここでアンナと遊んだんでしょ? 作品にも書いてあったわ。コスプレとジャグジーが気持ちよかった☆ ってね!」
「あれは……」
「フンッ! 良いわ。あのブリブリ女との違いを見せてあげる!」

 ここは黙って、彼女の言うことを聞こう。

  ~10分後~

「はい、タクト。お口を開けてぇ。あ~ん♪」
「あーん」
「どう? 美味しい?」
「うん……まあまあだね」

 大人のホテルへ来たのだから。
 女のマリアが小さなお口を開けると、思っていたが……。

 彼女が用意してきた弁当のおかずを、無理やり、口の中に放り込まれる。
 白くてやわらかい……目玉焼きだ。

 ベッドの上に二人で仲良く、膝と膝をくっつけ座っている。
 しかし、やっていることと言えば、別にラブホテルで行うことではない。
 公園で良いレベル。

「ほら~ タクト。まだまだ、お代わりがあるからね♪」
「……」

 そのお代わりが問題なんだよ。
 弁当箱にビッシリ詰められた白米……の上には、大きな目玉焼きが、4つ並んでいる。
 他におかずは、何もない。
 黄身以外、全部真っ白。

 マリア曰く、目玉焼きに関してはプロレベルだそうだ。
 作り始めて早10年以上……半熟、完熟。サニーサイドアップやターンオーバー。
 どれも失敗することなく、綺麗に焼き上げることが可能らしい。

 なんだろう……すごいデジャブを感じる。
 あ、俺じゃん。
 俺も玉子焼きしか、作れない。
 似た者同士だ。
 しかし、スペックで言えば、男のミハイルが勝っている。

「なあ、マリア。お前、本当に目玉焼きしか作れないのか?」
「ええ。もちろんよ。勉強や闘病生活で忙しかったから、これしか作れないの」
「そ、そうか……」

 アンナのことは、黙っておこう。
 色々とかわいそうだ。

「タクト。そろそろ飽きてきたでしょ? 味を変える? しょうゆとソース。塩コショウも用意しているわよ♪」
「じゃあ……しょうゆで」
「私と一緒じゃない~ 良かったぁ。白米にはしょうゆが合うわよね♪」
「うん……」

 このあと、目玉焼きの食い過ぎで、吐きそうになった。
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