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第四十四章 出産
今日からパパ
しおりを挟む11月も終わりに入る頃。
そろそろ、一ツ橋高校のスクリーングも後半に入った。
俺の記憶が正しければ、あと3回ほどで秋学期も終業だ。
まあ期末試験も控えてはいるが、相変わらずバカな幼稚園レベルだから、この天才ならば、余裕だろう。
来年に入れば、次の学期までゆっくりと休んでいられると思うと、気が楽になるな。
なんて、自室で考え込んでいると……。
学習デスクの上に置いてあったスマホが鳴り出す。
着信名は、珍しい名前だ。
『一ツ橋高校 事務所』
以前、宗像先生から電話がかかってきた時に、登録しておいた。
「もしもし?」
『あぁ……新宮かぁ~』
ろれつの回らない女性。
その一声で、担任の宗像 蘭先生だと、判明する。
「宗像先生? どうしたんですか?」
『はぁ~ あのなぁ……明日のなぁ……ぐかぁーー』
会話の途中だと言うのに、寝やがった。
これ以上、話しても埒が明かないと思った俺は、電話を切る。
酔いがさめる頃に、またかけてくるだろう……と思って。
机の上に再度、スマホを置こうと思った瞬間。
またアイドル声優のYUIKAちゃんの歌声が聞こえてきた。
「チッ……」
どうせ、また酔っぱらってかけてきたんだろうと、苛立つ。
「もしもしぃ!? 何なんすか!?」
面倒くさい宗像先生だと思い込んでいたので、口調が荒くなってしまう。
『あ……タッくん。ごめん。忙しかった?』
電話の向こう側から、YUIKAちゃんに負けないぐらいの可愛らしい声が聞こえたきたので、ビックリした。
スマホを耳から離して、画面を確認すると、アンナだった。
「わ、悪い! アンナだとは思わなかった……すまん」
『いいよ☆ 誰にだって、間違いはあるもん☆』
「そうか……。で、要件はなんだ?」
『あのね。明日、取材に行かない?』
「え? 取材……?」
部屋の壁に貼ってあるカレンダーを確認する。
だが、明日は日曜日。スクリーングだ。
アンナ自身も、それは知っていると思うのだが……。
「悪いが、明日は高校のスクリーングがあるんだ。別の日じゃダメか?」
『え? ミーシャちゃんから聞いたけど、明日は高校が休みになったって……』
「噓だろ……マジか?」
『マジだよ☆ 担任の先生がギャンブルに負けて、ショックでお酒を飲み過ぎたから、立てないらしいよ☆』
「……」
だから、泥酔していたのか。
生徒が一番だったんじゃないの? 宗像先生……。
『だから、取材に行こうよ☆』
「まあ、そういう事なら、構わんが……今回はどこに?」
『アンナね。ずっと考えていたの。タッくんのお父さんが言っていたことを……』
「え? 親父?」
『うん。アンナとタッくんの間に産まれる、赤ちゃんのことを☆』
「へ?」
俺は聞きなれない言葉を聞いて、頭が真っ白になる。
一体、何を言っているんだ……アンナは。
こいつは男だし、俺と“そういうこと”はしてないよ?
精々がキスとか。パイ揉みぐらいじゃん。
言葉を失う俺とは対照的に、アンナは嬉しそうに話し続ける。
『今度の取材は、赤ちゃんだよ☆ タッくんとアンナの間に生まれる可愛い子ども☆』
「すまん……意味が分からないのだが」
『そこへ行けば、タッくんにも分かるよ☆ 頑張ってね、パパ☆』
「え……」
脳内がバグりそう。
俺、なんか新手の詐欺にでもあってない?
悪い事はしてないと思うけど……。
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