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第四十二章 腐ってもサブヒロイン

飾らないキミが好き

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 午後の授業は体育だ。
 かなり、久しぶりに感じるな。

 一旦、校舎から出て指定された場所、武道館まで向かう。
 もちろん、隣りにはミハイルもいるのだが……。
 先ほどの写真撮影が恥ずかしかったようで、えらく大人しい。
 頬を赤くしたまま、黙って地面ばかり見ている。

 こりゃ、悪いことしたかな? と彼の横顔をチラ見する俺も大して変わらない。
 親友とは言え、男が男に写真を求めても良いのだろうか……。
 今、考えてみると……かなりヤバい行動だったのでは? そう、思い返していた。
 異性だとしても、一緒にツーショット写真を撮るのなら、分からないでもないが……。
 被写体がミハイルだけっていうのが……まるで「お前だけを撮りたい」と告白したようなもんじゃないのか?

「「……」」

 結局、二人とも黙り込んだまま、武道館へとたどり着いた。
 地下に降りて、更衣室へ入る。
 ロッカーに荷物を入れたら、すぐに体操服へと着替え始める。

 以前、宗像先生が全日制コースの生徒たちから、無断で体操服をパクったので、本来なら私服でもOKなのだが、仕方なく見知らぬ名の制服を着用している。
 もちろん、ミハイルもだ。
 ただ、彼の場合……サイズの問題で、下半身は女子のブルマだが。

  ※

 着替え終わると、武道館の中央に、のろのろと一ツ橋高校の生徒たちが集まり出した。
 しかし、何やら様子がおかしい。
 今日の予定表では、午後の授業は2時間、体育をする予定だった。
 確か種目は、バスケットボールをやるはず……。
 でも、肝心のバスケットコートが誰かに使われている。

 全日制コースの三ツ橋高校の生徒たちだ。
 どうやら、バスケット部の部員みたいで、他校と試合をやっているようだ。

「回せ、回せ! 絶対、負けるなよ!」
「おっしゃ! ドンマイ!」
「全国行くぞ! 俺たちはキセキの世代だからな!」


「……」

 呆然と、彼らの熱い試合を眺める陰キャ達。
 対照的にニヤニヤと嫌らしく笑うのは、ヤンキー共だ。
「こいつら、全然なってねーわ」とバカにしている。
 まあ、かく言う俺もバスケに興味とか、全然ないから、どうでも良いんだが……。

 チャイムが鳴り響くと、武道館の入口から、ツカツカと音を立てて、一人の女性がこちらに向かってくる。
 宗像先生だ。
 頼んでもないのに、俺たちと同様の体操服を身に纏っていた。
 アラサー教師でブルマ姿とか、見たくない。
 サイズが合ってないから、ハミパンしている……紫色のレースが丸見え。

「お~い! 一ツ橋の生徒たちは私の前に集まれ~!」

 先生に呼ばれて、黙って従う。言うことを聞かないと、後が怖いから。

 俺たちが先生の前に集合すると、歯切れ悪そうにこう話し始めた。
「悪いが、今日のバスケットボールは中止だ。急遽、三ツ橋の親善試合が決まったからな」
 またか……前も、全日制コースの都合で、場所を変えられたもんな。
 生徒たちから、冷たい視線を感じた宗像先生は、咳ばらいをして、話題を変える。
「まあ、前にも言ったように、本校はここの校舎を使わせてもらっているに過ぎない。なので、こういうことは、幾度もあるだろう。我が校が彼らに合わせるしかない。ということで、今日はマット運動に変更する」

 えぇ……いきなり、授業のレベルが高校生から小学生以下に落ちたような気がする。

  ※

 宗像先生の指示のもと。
 俺たちは、武道館の一番端っこ……。つまり壁に沿って、一列に運動マットを並べた。
 運動と言っても、簡単なストレッチぐらいだ。
 特に先生も、「あれをしろ、これをしろ」なんて命令は出さない。

 要は適当にマットの上で、二時間過ごせと言うことだ。
 俺たちは所詮、通信制だから授業にさえ、参加すれば単位はもらえる。
 簡単な授業にしなければ、やる気のないヤンキーが辞めてしまう恐れもある……。
 だから、こんなおままごとレベルじゃないと、一ツ橋高校は経営が成り立たない。

 当然の如く、俺はミハイルとペアを組む。
 いつものことだし。
 この頃には、もう元の二人に戻っており、彼も笑顔で接してくれた。
「なあ、タクト☆ オレって、ストレッチが得意なんだ☆」
「ほう。初耳だな」
「今やるから、見ててよ☆」

 そう言うと、ミハイルはマットの上に尻を乗せ、股関節を左右に広げる。
 細く長い二本の足が、縦に真っすぐ伸びた。

「どう? スゴいだろ☆ タクトもこれができる~?」
「あぁ……お、俺には無理そうだな」

 確かに彼の身体が、柔らかいことにも驚いていたいたが。
 それよりも、正面から見ている俺からすると、とある部位が際立って見えてしまう。
 股関節を綺麗に広げきった事により、紺色のブルマが強調されているのだ。
 真ん中には可愛らしい、ふぐりがちょこっと顔を出して……。

「ごくんっ……」
 
 思わず、生唾を飲み込んでしまう。
 彼からしたら、無意識のうちにやっている行為なのだろうが、これは辛い。
 今、ここにスマホがあったら、俺はきっと連写モードと録画を交互に繰り返して、しまうのだろう……。
 
 くっ! これだから、ミハイルモードは嫌なんだ。
 無防備すぎる。

 せっかく、沈静化した股間がまた暴れ出しそうだ……。
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