368 / 490
第四十二章 腐ってもサブヒロイン
ほのかルート?
しおりを挟む教室へ入ると、ただならぬ気配を感じた。
ナチュラルショートボブのめがね女子、北神 ほのかが入口の前で立ちふさがっていたからだ。
冬に入り、衣替えってことでいつものファッションはやめたようだ。
といっても、中退した高校の制服だが。
白いブラウスとプリーツが入った紺色のスカートは、そのままで。
グレーのベストに、スカートと同系色であるジャケットを羽織っていた。
本当に年がら年中、制服を使い倒す気なんだな、こいつ。
いつもなら、鼻息を荒くして、BLか百合の話を押し付けてくるのに、今日のほのかはどこか元気がない。
その場で突っ立って、頬を赤くし、俯いている。
妙にしおらしい。
顎に手をやり、チラチラと俺の顔を見つめる。
「お、おはよ。琢人くん……」
「ああ、おはよう。ほのか」
「……」
「?」
謎の沈黙が続く。
そして、彼女から熱い視線をビシビシと感じる。
一体、何がしたいんだ?
ていうか、教室の入口でずっと二人、見つめあっているから、気まずいんだけど。
ミハイルが俺の背中から、顔を出してほのかに声をかける。
「ほのか、おはよう☆ どうしたの? 元気ないな」
「う、うん……」
彼から声をかけられて、返答こそするものの、視線はずっと俺に向けたまま。
「あの……琢人くん。実は……話があるの」
「俺に? なんだ?」
「ここじゃ、言えないよ」
「は?」
「二人きりでしか、話せないことなの……」
と身体をくねくねして、恥じらう腐女子。
後ろで話を聞いていたミハイルが、一連の会話を聞いて身を乗り出す。
「ハァ!? なにそれ、ほのか! もしかして、こ、告白なの!?」
「そう、かも……」
いや。この変態のことだ。
絶対、そんな女らしい発想に至るわけがない。
何か裏があるな……。
とりあえず、告白と勘違いしているミハイルを、俺は落ち着かせる。
一旦、廊下に出て、彼に俺なりの解釈を説明してみた。
「ミハイル。ほのかの言う告白は多分、俺を好きって意味じゃないと思うぞ」
「え、ホント!?」
「ああ。多分、彼女の趣味に関係するものだ」
俺がそう言うと、ミハイルは小さな手のひらをポンッと叩く。
「あ! そうか、例の病気だな!」
「ま、まあ。そういうことだろうな……」
彼の中で、BLという性癖は1つの症例なんだね。
腐女子が可哀そう……。
※
俺とほのかは、三階の教室へと上がった。
スクリーングに使われるのは、二階の教室が主で。
一ツ橋高校は100人にも満たない生徒たちだから、3クラスあれば、事足りる。
日曜日だし、教室棟の3階は今、誰も使用していないということだ。
だから、ここを選んだ。
以前、全日制コースの福間 相馬に言いがかりをつけられたのも、この場所だ。
静まり返る教室の中、お互いの顔を見つめあう。
「……」
やはり、何か今日のほのかは、おかしい。
頬も赤いままだし、仕草が女の子っぽく感じる。
本当に俺のことが好きなのか……?
こいつが真っ当に恋愛できる人間とは思えんが。
「なぁ、そろそろ、話してくれないか? ホームルームもあるし」
「う、うん……。じゃあ言うね。私の本当の気持ちを……」
瞳はどこか潤って、色っぽく感じる。
思わず、俺も生唾を飲み込む。
何を言い出すか、予想がつかないからだ。
「よし。言ってくれ」
「わ、私……実は……。初めて見た時から、琢人くんのこと、ずっと……気になっていたの!」
「え……マジか?」
「本当だよ。一目惚れってやつなのかも。入学式の時に出会って以来、琢人くんのことが頭から離れなくてね……」
「……」
これ、マジの告白なのか。
ウソぉ……困るんだけど。いろんな意味で。
困惑する俺を無視して、ほのかの告白は続く。
「あなたのことがずっと好きだったの! これが私の本当の気持ち!」
「えぇ……」
生まれて初めて? 女の子から告白されたのに、全然嬉しくない。
だって、ゴリゴリの腐女子で変態のほのかだぜ……。
むしろ吐き気を感じてしまった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕は絶倫女子大生
五十音 順(いそおと じゅん)
恋愛
僕のコンプレックスは、男らしくないこと…見た目は勿論、声や名前まで男らしくありませんでした…。
大学生になり一人暮らしを始めた僕は、周りから勝手に女だと思われていました。
異性としてのバリアを失った僕に対して、女性たちは下着姿や裸を平気で見せてきました。
そんな僕は何故か女性にモテ始め、ハーレムのような生活をすることに…。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる