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第四十二章 腐ってもサブヒロイン

認めたくない男

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 あれから一週間が経とうとしていた。
 初めてのマリアとのデートは……メインヒロインであるアンナにより、大失敗となってしまう。
 正直、彼女への罪悪感で胸が締め付けられる。
 
 さすがにまずいと思ったから、毎日マリアへ電話をかけたが、不在ばかり。
 全然、電話に出てくれない。
 何度もかけたが、きっと無視されているのだと思う。

 メールにて謝罪の文章を送ったが……これも反応無し。
 完璧に怒っているな、これは。


 毎朝、スマホをチェックしているが、特に通知はない。
 仕方ないから、朝食を軽く済ませて、俺は地元の真島まじま駅へと向かった。
 今日が一ツ橋ひとつばし高校のスクリーング日だからだ。

 小倉行きのホームで列車を待っていると、ジーパンの右ポケットに入れていたスマホが振動し始める。
 急いで、スマホを取り出して着信名を確認する。
 しかし名前を見て、ため息が漏れてしまう。

「チッ……もしもし」
『ちょっと! DOセンセイ、なにイラついてんですか? 出てすぐに舌打ちとか……』

 相手が担当編集の白金だったから、ムカついてしまった。

「すまん。ちょっと相手がお前だったから、ガッカリしただけだ」
『え、フォローになってないんですけど……。まあ、いいや。今日はスクリーングの日でしょ?』
「ああ」
『学校前に悪いんですけど。お仕事の話、いいですか?』
「数分ならいいぞ」
『良かったぁ~ 実は、今度“気にヤン”の2巻と3巻が来月に同時発売が決定しまして……』

 それを聞いた俺はすかさず、ツッコミを入れる。

「はぁ!? 早すぎだろ! 入稿したの、ついこの前だろが!」
『いやぁ、編集長がアホみたいに売れているから、ブームに便乗しろってうるさいんですよぉ』
 クソが……俺の他作品はそんな扱いしなかったくせに。

「わかったよ……。で、俺への要件ってなんだ?」
『DOセンセイに直接のお仕事ってわけじゃないんですけど。ご協力をお願いしたいんです』
「協力?」
『ええ。今回のヒロインとなる現役JKである、ひなたちゃん。それから、腐女子のほのかちゃんの写真を提供して欲しいんです。イラストのモデルとして必要でして……』
「なるほど」

 絵師であるトマトさんが必要としているということか。
 メインヒロインであるアンナは、正体を隠しているから、モデルはギャルのここあに差し替えられてしまったが……。

『やっぱりダメですかね? DOセンセイのカノジョ候補になる大切な女の子たちですから……』
 俺はそれを聞いて、即答した。
「いいぞ。何枚いるんだ?」
『は、早っ! アンナちゃんの時はあんなに嫌がったくせに……。腐女子のほのかちゃんなら、まだしも……。ひなたちゃんの写真をトマトさんに貸すの、ためらいとかないんですか? おかずにされるかもですよ!』
 トマトさんってそんなに信頼できない男なのか?
 しかし、自分でもよく分からないが、何故かアンナ以外の女子なら、情報を差し出すのに抵抗はないんだよなぁ……。
「トマトさんがそんなことするわけないだろ……。あの人、好きな女の子? がいるし」
 相手がここあだから、疑問形になってしまった。
『へぇ。そうだったんですか。でも、本当に写真提供、許していいんですか』
「ああ、許可は本人達が決めることだ。俺じゃない。ま、大丈夫だろ。アンナはダメだけどな」
『な~んか、アンナちゃんだけ特別扱いしてません? DOセンセイ』
「いや。それはない。もう電車に乗るから、切るぞ」

 話はまだ終わっていなかったが、一方的に電話を切ってしまう。
 白金に全てを見透かされているような気がしたからだ……。

「アンナだけ……か」

 列車に入ってもしばらく頬が熱く、近くに座っていた女子高生の視線が気になった。
 別に嫌らしい目つきではなく、同族……。
 片想い同士、共感しているような顔つき。
 その証拠に相手も頬が赤い。

 違う、俺はノン気だ……。
 だから、そんな目をしないでくれ。
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