366 / 490
第四十二章 腐ってもサブヒロイン
認めたくない男
しおりを挟むあれから一週間が経とうとしていた。
初めてのマリアとのデートは……メインヒロインであるアンナにより、大失敗となってしまう。
正直、彼女への罪悪感で胸が締め付けられる。
さすがにまずいと思ったから、毎日マリアへ電話をかけたが、不在ばかり。
全然、電話に出てくれない。
何度もかけたが、きっと無視されているのだと思う。
メールにて謝罪の文章を送ったが……これも反応無し。
完璧に怒っているな、これは。
毎朝、スマホをチェックしているが、特に通知はない。
仕方ないから、朝食を軽く済ませて、俺は地元の真島駅へと向かった。
今日が一ツ橋高校のスクリーング日だからだ。
小倉行きのホームで列車を待っていると、ジーパンの右ポケットに入れていたスマホが振動し始める。
急いで、スマホを取り出して着信名を確認する。
しかし名前を見て、ため息が漏れてしまう。
「チッ……もしもし」
『ちょっと! DOセンセイ、なにイラついてんですか? 出てすぐに舌打ちとか……』
相手が担当編集の白金だったから、ムカついてしまった。
「すまん。ちょっと相手がお前だったから、ガッカリしただけだ」
『え、フォローになってないんですけど……。まあ、いいや。今日はスクリーングの日でしょ?』
「ああ」
『学校前に悪いんですけど。お仕事の話、いいですか?』
「数分ならいいぞ」
『良かったぁ~ 実は、今度“気にヤン”の2巻と3巻が来月に同時発売が決定しまして……』
それを聞いた俺はすかさず、ツッコミを入れる。
「はぁ!? 早すぎだろ! 入稿したの、ついこの前だろが!」
『いやぁ、編集長がアホみたいに売れているから、ブームに便乗しろってうるさいんですよぉ』
クソが……俺の他作品はそんな扱いしなかったくせに。
「わかったよ……。で、俺への要件ってなんだ?」
『DOセンセイに直接のお仕事ってわけじゃないんですけど。ご協力をお願いしたいんです』
「協力?」
『ええ。今回のヒロインとなる現役JKである、ひなたちゃん。それから、腐女子のほのかちゃんの写真を提供して欲しいんです。イラストのモデルとして必要でして……』
「なるほど」
絵師であるトマトさんが必要としているということか。
メインヒロインであるアンナは、正体を隠しているから、モデルはギャルのここあに差し替えられてしまったが……。
『やっぱりダメですかね? DOセンセイのカノジョ候補になる大切な女の子たちですから……』
俺はそれを聞いて、即答した。
「いいぞ。何枚いるんだ?」
『は、早っ! アンナちゃんの時はあんなに嫌がったくせに……。腐女子のほのかちゃんなら、まだしも……。ひなたちゃんの写真をトマトさんに貸すの、ためらいとかないんですか? おかずにされるかもですよ!』
トマトさんってそんなに信頼できない男なのか?
しかし、自分でもよく分からないが、何故かアンナ以外の女子なら、情報を差し出すのに抵抗はないんだよなぁ……。
「トマトさんがそんなことするわけないだろ……。あの人、好きな女の子? がいるし」
相手がここあだから、疑問形になってしまった。
『へぇ。そうだったんですか。でも、本当に写真提供、許していいんですか』
「ああ、許可は本人達が決めることだ。俺じゃない。ま、大丈夫だろ。アンナはダメだけどな」
『な~んか、アンナちゃんだけ特別扱いしてません? DOセンセイ』
「いや。それはない。もう電車に乗るから、切るぞ」
話はまだ終わっていなかったが、一方的に電話を切ってしまう。
白金に全てを見透かされているような気がしたからだ……。
「アンナだけ……か」
列車に入ってもしばらく頬が熱く、近くに座っていた女子高生の視線が気になった。
別に嫌らしい目つきではなく、同族……。
片想い同士、共感しているような顔つき。
その証拠に相手も頬が赤い。
違う、俺はノン気だ……。
だから、そんな目をしないでくれ。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる