353 / 490
第四十一章 ヒロインは一人で良い
JKが一番、大食いだと思いますよ。多分……。
しおりを挟むカナルシティに着いて、すぐに映画館へ向かおうとしたが。
エスカレーターの前でマリアが俺の手を掴む。
「ちょっと待って……」
振り返ると頬を赤らめていた。
「どうした? トイレか?」
「違うわよ! お腹、空いたの……」
それを聞いた俺は鼻で笑う。
「相変わらずだな。食い意地がはってる」
案の定、マリアは顔を真っ赤にして、怒り出す。
「な、なによ! 小説に夢中だったから、朝食を取る暇がなかっただけよ!」
「構わんさ……ところで、食べる所はどうする?」
俺がそう問いかけると、彼女は再度、頬を赤らめて恥ずかしそうにこう答える。
「タ、タクトさえ、よければ……“キャンディーズバーガー”が良いわ」
「了解」
※
俺とマリアは地下一階に向かい、噴水広場の前にあるファーストフード店。
キャンディーズバーガーへと入る。
かなり腹が減っていたようで、店に入るや否や。
躊躇いもなく、メニューも見ずに店員へ注文するマリア。
「BBQバーガーを単品で30個下さい。あとポテトも10個。飲み物はアイスティーのLサイズを1つ」
その量を聞いて、驚く俺と店員のお姉さん。
「えっと……BBQバーガーを単品で30個に、ポテトを10個。お飲み物はアイスティーのLでよろしかったでしょうか?」
お姉さんが注文を繰り返すと、マリアは苛立ちを隠せず、舌打ちしてみせる。
「ええ。そうです。あまり待たせないでくれますか? お腹空いていると、あまり余裕がないのだけど」
そう言って、カウンター越しに睨みをきかせるマリア。
相手は5才ぐらい年上の女性に見えるが、その迫力に思わず後じさりするほどだ。
「も、申し訳ございません! すぐに調理いたしますので、少々お待ちください!」
自分が頼み終えると、振り返って、涼し気な顔でこう言う。
「タクトはどうするの?」
「あぁ……」
正直、朝ご飯を食べて間もないし、こんなにヘビーなものをすぐには食べたくない。
「俺はアイスコーヒーのブラックで……サイズはSでお願いします……」
男である俺の方が小食に見えてしまった。
※
二人掛けの小さなテーブルの上に、並べられた大量のハンバーガー。
それをひとつ1つ、包み紙を開いて、嬉しそうに頬ばる華奢な女の子。
「やっぱり、ここのハンバーガーが一番だわ。アメリカのよりも日本の……いえ、福岡のが一番♪」
なんて絶賛している。
俺はと言えば、その食いっぷりに絶句していた。
この小さな身体のどこに入っていくんだ?
過食症じゃないよね、マリアって。
スナック感覚で、ポイポイと口に入れていくので、俺は心配になり。
彼女へその疑問をぶつけてみた。
「なぁ……別に人様の食べ方に文句を言うつもりはないが。ハンバーガーを30個も注文するなんて、異常じゃないか? マリア、お前なんかストレスでも抱えてないか?」
俺がそう言うと、彼女は眉をしかめる。
「失礼ね。私は至って健康よ。それに言ったじゃない? 朝を抜いてきたって」
「いや……朝食を抜いたからって、ここまで食うか……」
既にハンバーガーは全て食べ終え、あとはポテトが3個のみだ。
「タクト。きっとあなたは10年前の私と比較しているのよ」
「比較?」
「ええ。あの頃は私も小学生だったもの……。でも、今は第二次性徴を迎えた女よ。食べる量も自ずと増えるってこと。オトナの女って感じかしら♪」
「……」
こんなにバカ食いする大人の女性は、あまり見ませんね。
唯一、僕が知っている女の子……いや、男の娘なら一人いるのですが。
ルックス以外で、似ている所を見つけたな。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる