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第三十九章 挽回デート
人前でしっかり食べてくれるカノジョの方が可愛い
しおりを挟むやっとのことで、アンナの誤解は解けた。
しかし、俺も彼女に対して、思うことがある。
それは一晩中マンションの前で、俺を待っていた事だ。
梶木浜から離れて、キラキラ商店街を歩きながら、アンナに話しかける。
「なぁ。アンナの気持ちも分からないわけでもないが……俺は結構怒ってるぞ」
そう言うと、彼女は「えっ……」と少し怯んでしまう。
「お前みたいな可愛い女の子が、一晩中あんな所で、座り込むなんて……」
あれ、俺ってこいつのことを女の子扱いしてない?
「ごめん……」
しゅんと縮こまるアンナ。
「俺が連絡出来なかったから、心配だったのも分かるが。今後こういうことをするなら、もうアンナと取材を続行できなくなる」
「そんなぁ……」
涙目で俺を見つめる。
そんな上目遣いで、可愛い顔してもダメです。
ちょっと、チューしたいけど。
「アンナ。俺のためとはいえ、こんな危険なことはやめて欲しい。大事な取材対象なんだから」
「うん……やっぱり、優しいね。タッくんって☆ そういう所がスキかな」
ん? 今、サラッと告白された?
人格のことを言ってるだけだよね……。
聞けば、アンナは昨日から何も食べてないと言う。
余りにも不憫だったので、商店街を抜けて、セピア通りに入った頃。
一軒の店から良い香りが漂ってきた。
博多ではソウルフードとして、有名な『もっちゃん万十』だ。
たい焼きみたいなもので。
安価で買えるから、若い学生たちが学校帰りに買って、駅のホームで食べているのをよく見かける。
「アンナ。あれを食べて行くか? 腹空いたろ」
「うん☆」
店に入って、俺は定番のハムエッグを1つ注文した。
アンナはこの店に初めて来たらしく、メニューを見ながら迷っていた。
「いっぱいあるから、迷う~☆」
俺は昨日から何1つ口にしていない彼女が、可哀そうだったので。
「好きなものを頼め。俺のおごりだ」と言った。
最初は断られたが、自分の気が済まないと強く主張したら、折れてくれた。
かなり迷ったあとに、アンナは「うん、決めた」と頷き、店主に注文する。
「すいません☆ ハムエッグと“とんとん”。むっちゃんバーガーにウインナー。あとツナサラダ。黒あんと白あん。カスタードクリーム。“ごろごろちゃん”を下さい☆」
「あいよ!」
隣りにいた俺それを聞いて、ずっこけてしまった。
店のメニュー、全部じゃねーか!
迷う必要性あったのかよ……。
小さな敷地だが、テーブルがあったので、そこで食べることにした。
「う~ん☆ おいし~☆」
饅頭からはみ出るクリームを指ですくうアンナ。
小さなピンク色の舌でペロッと舐めて見せる。
やっと、彼女に笑顔が戻って、一安心。
「おいしいね☆ タッくん☆」
彼女の笑顔を見ていると、なんだか疲れが吹っ飛ぶ。
エメラルドグリーンの瞳が何よりも輝いて見える。
「ああ……うまいな」
大食いの女子だけど、なんだか誰よりも一緒に食事を楽しめる。
でも、今食べてるの30個目なんだよね。
ちゃんと経費で落ちるかな……。
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