上 下
341 / 490
第三十九章 挽回デート

男の娘を敵に回すと怖いよぉ~

しおりを挟む

 エントランスから出て、ジーパンのポケットからスマホを取り出す。
 ひなたの家にいる間はスマホを起動できなかったからな。
 昨晩、アンナが梶木をウロウロしていたことも、気掛かりだ。

 マンションから出て、アンナに電話をかけようとした瞬間だった。
 付近の階段に人影を感じた。
 華奢な体型の女?

 長い金色の髪は首元で2つに分けている。
 セーラーカラーのワンピースを着て、階段に腰かけている。
 心なしか、背中がぶるぶると震えているように感じた。

 こちらに気がついたようで、振り返る。

「あ……た、た、タッくん」

 歯をカチカチと鳴らしながら、笑うのは……。

「アンナ! お前、なにやってんだ! こんなところで!」

 思わず叫んでしまった。
 急いで、彼女の元へと走る。
 肩に触れてみると、服越しとはいえ、冷えきっていた。

 長袖のワンピースを着ているが、既に11月も近い。
 朝は冷え込む。


「た、た、タッくん……お、おはよ☆」
 ニッコリと笑って見せるが、元気がない。
 顔は青ざめているし、小さな身体は震えっぱなし。
「どうしたんだ、アンナ。まさか、一晩中ここで俺を待っていたのか!?」
「うん☆」
「……」
 ヤンデレにも程がある。
 
  ※

 とにかく、冷えきった彼女の身体を暖めるため、俺は近くの自動販売機で、コーヒーとカフェオレを買ってきた。
 ホットの方だ。
 甘いカフェオレは、アンナに飲ませて。
 俺用に買ったブラックコーヒーは、飲まずに彼女の頬にあててあげる。

「あったか~い☆」

 なんて喜んでいるが……。
 俺は彼女の行動力に震えあがっていた。
 どうやって、ひなたの自宅を特定したんだ?


 その疑問を彼女にぶつけてみると……。

「え? ひなたちゃんの家? アンナ、一週間ぐらい前から梶木を歩き回っていたんだ☆」
「そ、それで……どうやって分かったんだ?」
「商店街のおばあちゃんとか。パン屋のお姉さんに、『ショートカットの女子高生来てますか?』って一軒ずつ尋ねたの☆」
 探偵かよ。
「それだけで、ひなたの自宅がわかったのか?」
「うん☆ ひなたちゃんがよく行ってる、ペットショップがあってね。そこの店長がよく餌とか配達してるから、住所をコソッと見てきちゃった☆」
 きちゃった☆ じゃないだろ……。
 普通に犯罪だし、ストーカーだ。


 アンナは特に悪びれるわけでもなく、むしろ誇らしげに語る。

「でもね。ちゃんと約束は守ったでしょ☆」
「え?」
「宗像先生に『お互いの取材を邪魔したらダメ』って言われたから、マンションの中には一歩も入らなかったよ☆」
「……」
 俺ってそんなに信用できないのかな?


「ところでさ。なんで、ただの取材が泊りがけになったの?」
 ずいっと顔を近づけて、笑う。
 しかし、目が笑ってない。
 怒ってるよ……その証拠に、エメラルドグリーンの瞳から輝きが消え失せてるもん。
 また、いつもみたいにブラックホールのような底知れない闇を感じる。

「あ、あの……動物と泊ってきただけです」
「どんな?」
「ヘビです……」
「なんで、動物と泊るの? それって取材なの?」
「はい。一応、取材です……」
「一応ってなに? あとタッくん。お風呂入ってない? 石鹸の香りがプンプンするよ。誰と入ったのかな☆」

 もう許して!
 俺はこのあと、彼女に弁解するのに、数時間を要した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

処理中です...