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第三十九章 挽回デート
もふもふ~
しおりを挟む俺とひなたはエレベーターに乗り込む。
彼女は鼻歌交じりで、一番上のボタンを押した。
つまり、このマンションの最上階という事だ。
それだけ値段もお高いんでしょうねぇ……。
ポンッ! と音を立てて、目的地である階に着く。
驚いたことに、このフロアは一軒しか存在しない。
エレベーターの扉が開いたら、すぐに表札が見えた。
開いた口が塞がらない俺を放って、ひなたは玄関の前に立つ。
ドアの持ち手を、人差し指で軽く触れてみる。
すると、あら不思議。簡単にドアの鍵が開いた。
「な、なにが起きたんだ!?」
「え? 玄関ってこうして開けるでしょ」
「そんなわけあるか!? 鍵を使って開けるだろ!」
俺がそう指摘すると、ひなたは少し考えこんだ後。
手のひらを叩いて、何かを思い出す。
「ああ、これのことですか?」
そう言って、俺の前に差し出したのは、小さな端末だ。
「なんだ……これは」
「うち、ハンズフリーなんで、これさえあれば。家に入れるんですよ♪」
「……」
圧倒的な格差!
俺もこの家に住みたいよぉ……。
※
ひなたの家は、予想以上に広かった。
玄関から廊下を抜けると、異常なほどにだだっ広いリビングがお出迎え。
キッチンも最新のシステムキッチンだし、ふかふかのソファーがあるし。
本当にお嬢様なのね。
俺が自身の貧困レベルを再度確認できたところで、部屋の奥からタタッと足音が近づいてきた。
「ワンワンッ!」
大きな犬種だ。
ゴルーデンレトリバーか?
飼い主であるひなたへ、猛突進。
ちょうど、彼女の股間あたりに顔を埋める。
「ハハハッ! ピエール、元気にしてた?」
嬉しそうに、犬の頭を撫でるひなた。
このピエールってのが、彼女の言うペットか……。
なるほど、確かに見ていて、可愛いな。
だが、次の瞬間。
更に部屋の奥から、無数の鳴き声と共に、フローリングを激しく蹴る音が聞こえてきた。
「うおっ!」
現れたのは、10匹ほどの様々な犬種。
大型犬から小型犬まで。
あっという間に、リビングは犬で埋め尽くされてしまう。
ひなたを中心にして、皆おすわりする。
「へっへっ」
と舌を出して、飼い主の帰宅を喜んでいた。
なんか俺は、疎外感を感じて、数歩後退りする。
「ジャン、ミシェル。ロバートにジョン。トミーとケヴィン。アンソニーもビルもショーン。ただいま~!」
よくそれだけ、名前をつけたな。
てか、オスしかいないのか。
メスがいなくて、発情期が大変そう。
ん……でも、最後の一匹は?
「それに、敏郎!」
俺は思わず、その場でずっこけてしまった。
なんで、最後の子だけ渋い日本名なんだよ……。
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