上 下
316 / 490
第三十六章 二学期はっじまるよ~☆

原点回帰

しおりを挟む

 ミハイルの秘密を知った花鶴は、なんだか嬉しそうだった。
「そっかぁ~ ミーシャってそういう趣味があるんだぁ~」
 ちょっと誤解している気はするが、ちゃんと女装のことは黙っておくと約束してくれた。一応、その場をしのげたことで、ホッとする。
「理解してくれて礼を言うよ。花鶴」
 俺がそう言うと、なぜか彼女の顔から笑みが消える。
「あんさ~ 前々から思ってたんだけど。なんであーしのことだけ、上の名前なん?」
「いや……別に意味はないが」
「なら、ここあって呼んでよ! ミーシャもリキも下の名前で呼ぶくせに、ダチじゃないの? あーしとオタッキーって!」
 そういう事か……。花鶴という人間は友情を大事にするんだな。
 ならば仕方ない。ミハイルの秘密も共有する仲だ。
 彼女とも親しくしておくべきか。

「わかった。今度からお前のことも、下の名前で呼ぶ。それで良いか? ここあ」
「うん♪ マブダチぽい。ね、オタッキー」
 そう言って満面の笑みで俺を見つめる。
 てか、マブダチならこっちも下の名前で呼べよ!

  ※

 その後、三人で仲良く昼食を取って、チャイナタウンをぶらぶらする。
 服屋とか雑貨屋が多いから、俺たちが遊べる店は少なかった。
 ミハイルが言っていたパンパンマンの乗り物もここのゲーセンにはなく、ガッカリしていた。
 仕方ないので、駅に向かって帰ることに。

 
 彼らの地元である席内駅に列車が着くと、ミハイルとここあは「バイバ~イ」と手を振って降りていった。
 列車が動き出しても、ホームに立ったまま笑顔で俺を見送る。
 なんだかガキぽい奴らだと苦笑するが、悪い気分じゃない。
 ジーパンのポケットからスマホを取り出し、アドレス帳を開く。
 この半年で登録数の桁が1つ増えた。
 両親と妹、それに仕事関係ぐらいの人間しか、存在しない希薄な人間関係のアドレス帳がどんどん変化していく。

 ミハイルに始まって、女装したアンナ。
 それから、現役JKのひなた。あとは腐女子のほのか。
 自称芸能人のあすか。
 10年ぶりに再会したマリア。
 ダチのリキ。
 そして、今日新たに追加されたのは、ギャルのここあ。

 チャイナタウンで、今後、ミハイルの秘密を守るためにと、連絡先を交換したのだ。
 あくまでも、ダチのために。

 別に電話をかけるわけでもないのに、眺めているだけで自然と口角が上がる。
 俺もぼっちから卒業できそうなのかな……。
 と思っていると、目的地の真島駅にたどり着く。
 自動ドアが閉まりそうだったので、急いでホームへと走り抜ける。

 乗り過ごしするところだった……と冷や汗をかく。
 すると、手に持っていたスマホがブーッと震える。
 長い振動だったので、電話だとすぐに分かった。

 着信名は、アンナ。

「もしもし」
『あっ、タッくん☆ 今、真島だよね?』
 当たり前だろ、とツッコミを入れたかった。
 だってついさっきまで一緒にいたし、時刻表を見れば、俺が今真島駅に降りることは、容易だからな。
 ストーカー並みで怖い。
「ああ……どうした?」
『あのね、この前のマンガをお家で読んでたら、タッくんとの最初のデートを思い出しちゃって……会いたくなってきたの』
 噓つけ! 数分前まで一緒にいたろ!
「そ、そうか。じゃあ取材するか?」
『うん☆ 一番最初にデートしたカナルシティに行こうよ☆』
「良いな。で、なにをするんだ?」
『映画にしよ☆ あの時みたいに』
 珍しいな、アンナにしては……。
「そうか。映画は大好きだからな、どんとこいだ。なにを観る?」
 俺が尋ねると、彼女は大きな声でこう言った。

『ボリキュア!』
「……」

 そうだった。今年は15周年で何かとイベントが盛りだくさんだと、アンナから話を聞いていた。
 ところで、これってラブコメの取材になるんでしょうか。
 僕には理解できません……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕は絶倫女子大生

五十音 順(いそおと じゅん)
恋愛
僕のコンプレックスは、男らしくないこと…見た目は勿論、声や名前まで男らしくありませんでした…。 大学生になり一人暮らしを始めた僕は、周りから勝手に女だと思われていました。 異性としてのバリアを失った僕に対して、女性たちは下着姿や裸を平気で見せてきました。 そんな僕は何故か女性にモテ始め、ハーレムのような生活をすることに…。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

処理中です...