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第三十五章 10年越しの恋

なう

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 そう、現実。
 これは間違いなく現実の世界なんだ。
 なってしまったんだ……俺は小説家としてデビューもしたし、初のラブコメが売れている。
 条件揃っちゃったよ!


 成長したマリアをじっと見つめる。
 低身長で華奢な体型。絶壁とまではいかないが、柔らかそうな小さな胸。
 いや、実際揉んだ感想として、確かに控え目だけど、すごく気持ち良かった。
 長い金色の髪をなびかせ、真っすぐ視線は俺から離さない。
 大きな2つのブルーアイズに吸い込まれそうだ。

 可愛い……確かに俺のどストライクゾーンな美少女と言えるだろう。
 ミハイルとアンナに似ている女だが……。
 あれ? なんでマリアより先にあいつらが頭に浮かぶんだ?

「うーむ……」
 一人唸り声を上げていると、隣りに座っていたマリアがため息をつく。
「あの、さっきからずっと黙り込んでいるけど、何か良からぬことでも考えているのかしら?」
 睨むように俺の顔を覗き込む。
「いやいや、そういうわけじゃなくてな……まさか本当に俺好みの女の子に成長するなんて。ハハハ」
 苦笑いでどうにかごまかす。
「ああ。あの約束をちゃんと思い出せたのね。懐かしいわ……この博多川でタクトに要求されたペドフィリア体型をキープするのに、苦労したもの」
 ペドフィリア体型ってなんだよ!
「なにかヨガとかでもやってたのか?」
 俺がそう問いかけると、彼女は「わかってないわね」と首を横に振る。

「身長を145センチでキープしつつ、胸は小ぶりにする。また顔も小さくするために、顎は発達させない。心臓の手術より、壮絶な体験だったわ」
 ファッ!?
「い、一体どんなことをやっていたんだ?」
「アメリカに渡って、すぐに心臓の手術をしたわ。27時間にも及ぶ大手術。それが終わってすぐにリハビリをやりつつ、まずは胸の成長を抑制するために、コルセットで乳腺の発達を遅らせたわね」
「えぇ……」
 命かけて渡米したのに、心臓に悪いことしないでよ!
「寝る前に胸をバチバチ叩いたりもしたわ。あと成長を遅らせるという謎のお薬をインターネットで見つけたから、飲んだりもしたっけ。副作用が酷くて、緊急搬送されたけど」
「……」
 もうやめて! もっと自分を大事にして!
「あとは身長を伸ばしたくないから、ベッドは敢えて小さめのものにしたわ。柵が硬くてね。足先と頭がギチギチで痛くてたまらないの。慣れるまでなかなか眠れなかったわ。あ、今でもそのベッドは使用しているのよ?」
「マ、マリア。もうその辺で……」

 幼い子供が考えた惨い要求を鵜呑みに、10年間もやり続けた彼女に、俺は罪悪感でいっぱいだった。

「待って。まだあるのよ? 小顔にしたいから、なるべく柔らかいものしか食べなかったの。顎が発達すると大きな顔になるでしょ。その他にも美顔ローラーで24時間ずっとゴリゴリやってたわね」
 それでよく美顔になれたな……。
「すまない。マリア、あの時の約束を忠実に守ってくれたんだな」
「いいのよ、タクトのお嫁さんになりたいから、私が勝手にやっただけ。もし、理想の女の子に成長しなかった時は、整形手術も覚悟していたしね」
「……」

 忘れていた。もう時効だから断りたい。
 とは言えなかった……。

 そして、マリアは一枚の小さな白い紙を取り出す。
 青い瞳をキラキラと輝かせて、こう叫ぶ。

「条件は全てクリアしたでしょ? タクトが小説家としてデビューして尚且つ売れたし。私はあなた好みのペドフィリア体型に成長したわ」
「え?」
「だからこの婚姻届にタクトの名前を書いて! あとは提出するだけよ!」
「う、嘘だろ? 10年前のことだぞ?」
「タクト。私もあなたも噓が大嫌いな性格でしょ? 約束は守らないと」
 なんて優しく微笑む。

 に、逃げられない……。
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