262 / 490
第三十二章 女装のヤンキーと片想いのヤンキー
アンナの恋愛相談室
しおりを挟む束の間のイチャイチャタイムは、20分程度で終わりを迎える。
目的地である博多駅に着いたからだ。
二人で仲良く改札口を出ると、待ち合わせの相手がすぐ目に入る。
身長が高くガタイの良いアロハシャツを着たスキンヘッドのおっさん……じゃなかった千鳥 力だ。
今回の取材対象である。
俺とアンナを見るや否や、顔をぱぁっと明るくして、手をブンブンと振って見せる。
「おーい! タクオ、アンナちゃん~!」
これから地獄を見るかもしれない彼だ。優しく接してあげよう。
「おお、リキ。久しぶりだな」
マブダチとの再会を祝して固い握手を交わす。
アンナもその光景を見て、嬉しそうに微笑む。
「リキくん。別府以来だね☆」
嘘をつけ! お前らガキんちょの頃からの仲のくせして。
まさか親友が女装しているとも知らずに、リキはどこか恥ずかしそうに頭をかいてみせる。
「ア、アンナちゃん……前はダセェところ見せて悪かったね。きょ、今日も可愛いじゃん。タクトには勿体ないぐらい女の子だぜ」
「やだぁ~ リキくんったら! こんな人目のつくところで、タッくんとアンナのことを褒めてくれるなんてぇ~☆」
なんてツインテールをブンブンと左右に振り回す。
照れているのだろうが、男三人で何やってんだよって感じだな。
※
俺たちは中洲に向かうため、博多駅の地下街へと向かった。
市営の地下鉄に乗りたかったから。
倉石さんが紹介してくれた映画館は、ちょうど地下鉄の中洲川端駅が一番近く、初見のアンナやリキでも分かりやすいためだ。
バスでも良いが、今回は電車一本で行ける地下鉄を選ぶ。
地下鉄に乗り込み、三人でつり革に掴まって立ったまま、恋愛の相談が始まった。
「さっそくなんだけどさ。行きながらでいいからさ。アンナちゃんに聞きたいことがあるんだよ」
リキは珍しく弱気だった。
「うん。なんでも言って☆ アンナにできることなら、なんでもするよ☆」
本当に何でもさせる気だよ、この人。恐ろしい。
「あのさ。ほのかちゃんに告ってからさ。怖くて連絡が出来ないんだよ……」
随分とショックを受けているようだ。
やんわりと断られたとは言え、想いが伝わらなかったことは、彼に取ってさぞ辛かったのだろうな。
肩を落として、暗い顔をするリキを見て、アンナはニコッと優しく微笑む。
「アンナ。女の子だからほのかちゃんの気持ち分かるよ☆」
いや、お前は正真正銘の男だろうが。
「マジで? 俺、ほのかちゃんのL●NE交換してるんだけどさ。今一歩勇気出なくて……」
それを聞いたアンナは、彼の肩をポンポンと叩きこう言った。
「怖がってたら何も始まらないよ? アンナだったら、10分間に100通は送るかな☆」
ファッ!?
その特殊なスキルはあなただけの独占でしょ。
リキがやったら絶対に嫌われるし、ストーカーとして、怖がられるよ。
「え、マジ? アンナちゃんって、いつもそれぐらいメッセ交換するの?」
「うん。フツーフツー☆ むしろ相手が既読スルーしたら、ずっと通知画面と睨めっこしているぐらい☆」
怖っ!
「そっかぁ……女の子って、それぐらいL●NEしても余裕なんだ。知らなかったぜ。教えてくれてありがとな、アンナちゃん」
「ううん。なんだったら、今からほのかちゃんに送ってみたらいいよ☆」
マジでこの人、恋愛を応援しているんだよね?
なんかどんどん裏目になっている気がします……。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる