258 / 490
第三十一章 ラノベ・マンガ・BL! 三つ巴の戦い!
突撃! BL編集部!
しおりを挟む打ち合わせが終了し、リュックサックを背負って編集部から出ようとすると、白金に呼び止められる。
「あのDOセンセイ。良かったら新設されたBL編集部を見て行きませんか?」
「え? 俺が……」
そんな腐りきった所、興味ないね! といつもの俺なら吐き捨てる所だが……。
マブダチであるリキが脳裏に浮かぶ。
プロのBL作家、つまり北神 ほのかに引けを取らない変態さん達が一つの場所に集まっているということだ。
ここは知恵を借りたい……。
腐女子の落とし方を。
よし、勇気を持って取材してみよう。
「あ、そう言えば、倉石さんが編集長になったんだよな? ちょっと聞きたいこともあるし、寄ってみるか」
「ケッ! ただの受付のイッシーがいきなり編集長とか、マジ有り得ないですよ。私の方が『気にヤン』で功績をあげているっていうのに!」
と愚痴をこぼす万年平社員。
※
BL編集部は、ゲゲゲ文庫のすぐ上の階にあった。
エレベーターを使う必要もないので、初めて博多社の階段を使用した。
階段を昇り終える頃、なにやら甘ったるい香りが漂ってくる。
そして、悲鳴にも聞こえる喘ぎ声が流れてきた。
『あぁ~!? 部長、ダメですよ……ここは会社なのに……あああっ!』
『へぇ……そんなに感じておいてかい? 昨晩あんなに私を欲しがったくせに……しかし身体は正直だねぇ。君のここは元気そのものじゃないか?』
『アアアッ! ダメです! 部長、仕事中ですって! も、もう……』
舐めていた。
こんなにブッ飛んだ職場体験は初めてだ。
大音量でBLボイスドラマを流すとは……。
しかも入口には、裸体の男同士が激しく絡み合った等身大パネルが二つも飾られている。
その真上に『ハッテン都市 FUKUOKA』と看板が天井にぶら下がっていた。
俺が所属しているラノベ専門誌、ゲゲゲ文庫とは違い、マンガ家の編集部だから、パソコンだけじゃなく、ペンタブが設置されたデスクがズラリと並べられていた。
何人もの女性作家さん達が、編集部でネームを描き、その場で担当編集に指導を受けている。
その眼差しは、真剣そのものだ。
黒髪のショートカットの若い女性がペンの動きを止めて質問する。
「これ、受けが痔の設定なんですけど、どうすればいいですか? お口でフィニッシュですか?」
すると隣りに立っていた眼鏡の真面目そうな女性が一瞬唸りをあげ、顎に手をやり、こう答えた。
「うーん。上のお口だけじゃ、やっぱり攻めの欲求が満たされないと思うわ。それに読者もやっぱり最後は合体が欲しいと思うの。最初は口でやるけど、受けも痛くても、最終的に欲しくなり……掘られてフィニッシュがベストかしら?」
「わかりました。じゃあ、それで絡めておきます」
ファッ!?
至って真面目に仕事をこなしているのだが、会話の内容がエグい。
他のデスクも皆似たようなやり取りを続けている。
こ、怖いよぉ~ 腐女子のみなさんって!
恐怖で震えあがっていると、一番奥のデスクに座っていた女性がこちらに視線を向けてきた。
「あらぁ~ 琢人くんじゃない? 久しぶりね~」
俺に気がつき、立ち上がる。
そしてこちらへと向かってきた。
元受付嬢の倉石さんだ。
だが、もう以前の面影はない。
いつもなら真っ白な制服を着ているのに、今日は私服だからだ。
ラフな白いTシャツとワイドパンツにスニーカー。
ここまでなら、優しそうなお姉さんなのだが。
Tシャツのど真ん中には、デカデカと卑猥な言葉がプリントされていた。
『福岡にノンケのリーマンなんておらん! 88.8パーセントがゲイですばい!』
なんて酷い偏見だ。そして、同性愛者にも謝れ!
しかも、最後の博多弁。バイセクシャルの人も匂わせてるだろ。
「く、倉石さん……昇進おめでとうございます……」
「ありがとぉ~ これからたくさんの新人作家さんと絡めまくって、読者を昇天させようと思っているわ! あ、あとね。作品を読んでくれたノンケを界隈に誘いたいわね♪」
倉石さんってこんな人だったけ……。
もっと常識ある良い大人だった気がするのは、僕だけでしょうか?
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕は絶倫女子大生
五十音 順(いそおと じゅん)
恋愛
僕のコンプレックスは、男らしくないこと…見た目は勿論、声や名前まで男らしくありませんでした…。
大学生になり一人暮らしを始めた僕は、周りから勝手に女だと思われていました。
異性としてのバリアを失った僕に対して、女性たちは下着姿や裸を平気で見せてきました。
そんな僕は何故か女性にモテ始め、ハーレムのような生活をすることに…。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
女子に間違えられました、、
夜碧ひな
青春
1:文化祭で女装コンテストに強制的に出場させられた有川 日向。コンテスト終了後、日向を可愛い女子だと間違えた1年先輩の朝日 滉太から告白を受ける。猛アピールをしてくる滉太に仕方なくOKしてしまう日向。
果たして2人の運命とは?
2:そこから数ヶ月。また新たなスタートをきった日向たち。が、そこに新たな人物が!?
そして周りの人物達が引き起こすハチャメチャストーリーとは!
ちょっと不思議なヒューマンラブコメディー。
※この物語はフィクション作品です。個名、団体などは現実世界において一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる