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第三十一章 ラノベ・マンガ・BL! 三つ巴の戦い!

経費で落としてもらう時、上司に金を投げつけられます

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 コミカライズを担当してくれるピーチは、見た目こそ変わった女子高生だが、画力は兄のトマトさんよりも優れている。
 何よりもアンナを忠実に描いてくれるのだから、安心して任せられる。
 軽い自己紹介を終えると、彼女は「家に帰って原稿を描きたいから」と編集部を後にした。


 その後、白金と今後の『気にヤン』の展開を話し合うことに。
 編集長の熱い要望で、一巻も発売前だというのに、もっと続きを書いて欲しいと頼まれた。
 初刊はメインヒロインであるアンナを重点的に描いた。
 ヤンキーのミハイルが俺に振られて、女装……じゃなかった可愛らしい女の子に大変身し、主人公であるタクトに積極的なアプローチを試みて、初デート。
 という流れだ。
 今のところ、サブヒロインたちは活躍していない状態だ。
 だから、続刊には現状候補に挙がっている赤坂 ひなたを出したいと考えていた。

 俺はその案を白金に伝えると、快く承諾してくれた。
「いいですね! サブヒロインが活躍すれば、メインヒロインのアンナちゃんも嫉妬して、バチバチしそうです。楽しそう!」
 なんて白金は嬉しそうに語るが……。
 当の取材した本人は、あの二人のケンカは、全然楽しくない。
 殺し合いに近いから、恐怖でしかない。

 しかし、今サブヒロインとして使えそうなのは……。
 現役女子高生のボーイッシュな赤坂 ひなた。
 腐りきった変態の北神 ほのか。
 自称トップアイドルの長浜 あすか。
 ん? ほのかは使えるのか?
 あとは……。

 俺は取材と称しデートに使った金。領収書の束をリュックサックから取り出す。
 ゴムでまとめて、一番上にメモ用紙を貼っており、各ヒロインの名前を書いている。
 人によって経費として落ちるか、分からないからだ。
 アンナはメインなので、安心なのだが。
 他の奴らが不安だ。

 それらをデスクの上に並べて、白金に相談する。
「なあ。これ、最近の取材に使ったものだが、経費で落ちるか?」
「おお! DOセンセイ、こんなにデートされたんですか~ 童貞のくせしてやりますねぇ~」
 童貞は関係ないだろ!
「で、どうなんだ?」
「どれどれ……ほうほう、花火大会に水族館、それに山笠も。うんうん、これは福岡を舞台にしているし、どれも経費で落ちそうですね」
 ニッコリ笑う白金の顔を見て胸をなでおろす。
 というか、変態ほのかもちゃんとサブヒロインとして、認められるんだな。

 その後も一枚一枚、丁寧に領収書をチェックしていく白金。
 どれも小説に使えるとOKをもらえた。
 しかし、とある名前で指が止まる。

 その名は……宗像先生。

「え、なんで蘭ちゃんがここで出てくるんですか?」
 白金の目つきが鋭くなる。
「ああ。大人の女性として、自らヒロインを立候補してな。この前、取材したんだ」
 破天荒でバカな人間だと思っていたが、純情乙女の側面も垣間見えたし、生徒のために時間と金を惜しまない良い教師だったことも知れたしな。
 ラブコメの展開としては、どうかと思うが、キャラとして重要なポジションだと思った。
 正直、使える取材だったと思う。

 だが、俺の考えとは裏腹に、白金の顔はどんどん険しくなっていく。
 領収書をパラパラめくっては、鼻息が荒くなり、肩を震わせる。

「なんですか、これ……パチンコに居酒屋、車のガソリン代、ウイスキー二瓶にチューハイ30缶……」
 あ、ヤベッ。宗像先生、俺の経費目的で取材したんだった。
「白金、あのな。一応、意義のある取材だったと個人的には思う、ぞ?」
「これが!? どこにラブコメ要素があると言うんですか!? ただのアラサークソ女の日常じゃないですか! どうせアレでしょ。DOセンセイの経費目的でしょ! 却下です! 大体、ラノベの読者は10代の中高生ですよ? あんなクソ巨乳じゃ、童貞読者は萌えません! 処女が良いんです! ビッチはサブヒロインとして却下です!」
 酷い……確かにもう処女ではないと思うが、10年以上も一人の男性に想いを寄せる純情乙女なのに。

 白金は顔を真っ赤にさせて、宗像先生の領収書の束を近くにあったシュレッダーにかけた。
「DOセンセイ。今後、蘭ちゃんの言う事は聞かなくていいです! もしDOセンセイに経費として金を支払わせることがあれば、私に言ってください。三ツ橋高校の校長に伝えて給料から天引きしてやりますから!」
「りょ、了解した……」
 じゃあ、何だったんだ。あの取材は…。
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