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第二十九章 女教師観察日記

先生と温泉

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 宗像先生の裏の顔を知った俺は、動揺を隠せずにいた。
 店内に戻って、その本人を見つめる。
 カウンターに涎を垂らして寝ているこのアホが、そんな優しい教師だったなんて……。


 しばらく待っても宗像先生は、起きることが出来なかったので、店の大将が車で送ってくれるという。
 俺はさすがに悪いと断ろうとしたが、彼は笑顔で「いつものことだから」と手慣れた感じで、先生を抱え店裏の駐車場まで案内してくれた。
 いびきをかいている宗像先生を、後部座席に寝かせて、俺は助手席に乗せられた。
 大将の母校でもある一ツ橋高校へと車を飛ばす。

「いやあ、今日の宗像先生。かなり嬉しそうだったよ」
「え、そうですか?」
「うん。きっと君が一緒にいたからじゃない? 幸せそうな顔をしてたよ」
 あれのどこが?
 ただ、ハイボールをがぶがぶ飲んで、文句垂れてただけじゃん。


 大将は、高校の駐車場に車を停めると、先生をまた抱きかかえ、わざわざ二階にある事務所まで連れて行く。
 二人がけのソファーに先生を寝かせて「じゃ」と去っていった。

「ふごごご! クソが……パチンコ勝てねぇじゃねーか……」

 腹をかいて寝言を言っている。
 こんなバカが……ね。
 人は見かけによらないもんだな。

   ※

 一時間後、先生はなにを思ったのか、いきなりソファーから飛びあがる。
「ハッ!? また記憶飛んでる!?」
 反対側のソファーに座っていた俺はその姿を見て、ため息をつく。
「焼き鳥の大将がわざわざ送ってくれましたよ……」
「ほう。ところで、領収書もらっておいたか?」
「え、まあレシートなら……」
「でかした! あとで今日使ったやつ、全部お前に渡すから、白金に経費として落としてもらえよな♪」
 ただギャンブルと酒に使っただけじゃねーか!
 どこが取材で、どこが大人のデートなんだよ!
 なんの勉強にもならんかったわ。

 
「ところで新宮。お前、風呂に入りたくないか?」
「え? どこで入る気ですか……まさか、三ツ橋の部室のシャワールームを勝手に使う気ですか?」
 もうこの人の思考、読めてきたよ。いい加減。
「失礼な言い方をするな! こんな暑い夜だ。もっとお洒落な大浴場に行こう♪」
「だ、大浴場?」
「うむ。私に任せろ。さ、着いて来い!」
 嫌な予感マックスだが、とりあえず、黙ってついていく。

 誰もいない静かで真っ暗な校舎を二人して歩く。
 先生が言うには、以前ミハイル達と一泊した食堂の近くに浴場はあるらしい。
 階段を降りて、校舎を出て目の前に食堂はあった。
 そのすぐ裏に二階建ての大きな建物が見える。

 近寄って正面から見てみると、大きな看板が目に入った。
『三ツ橋アリーナ』
 
「なんですか、ここ?」
「ああ、通信制ではあまり使ってないから、わからないよな。ここは普段、水泳部が利用しているプールだ! 夏には持って来いの大浴場だろ!」
 んなことだと思ってたよ……。

 俺と先生は、階段を昇って、二階の入口からプールへと向かった。
 途中、男女別々の更衣室へと別れる。
 あ、水着とか持ってないけど、どうするんだろ?
 まさか、裸で入る気か!?
 
 と思っていたら、宗像先生が勝手に男子の更衣室へとずかずか入り込む。
「ちょ、ちょっと! こっちは男子の方でしょうが!」
「ああん? お前のイカ臭い股間なんて興味ないわ! それより、これ使え」
 そう言って差し出したのは、一枚の競泳水着。いわゆる、海パンてやつだ。
「いいんですか? 人のでしょ?」
「大丈夫だ。忘れていった奴が悪い。どうせ、あとでショタコン向けにネットオークションで出品しようと思っていたモンだから」
 この人、本当に生徒想いの良い先生なんですよね?
 さっきの話を聞いても、同じ人に見えないのだけど……。
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