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第二十九章 女教師観察日記
大人のオ・ン・ナ、教えてあげる♪
しおりを挟む宗像先生とドライブすること、30分ぐらい。目的地に到着。
「よし、着いたぞ。さ、新宮。これが大人の女性のワンルームマンションだ♪」
「え……ここって」
見慣れた光景、六角形の大きな武道館、Y字型の建物、駐車場。
間違いない。
俺が通っている高校、一ツ橋高校だ。
いや、正確には、全日制高校の三ツ橋高校の校舎である。
近くでは、
「はーい!」
なんて、甲高い女子の掛け声が聞こえてきた。
夏休みだが、部活動はやっているようで。
運動場や色んな教室から、様々な声や音が漏れている。
「先生……ここ、うちの高校じゃないですか?」
車を降りて、学び舎である建物を指差す。
「ああん? なに言ってんだ。私の我が家は一ツ橋高校の事務所だ!」
白い歯をニカッと見せて、親指を立てる。
「ちょ、ちょっと、何をする気なんですか? 勝手に校舎使ったら怒られますよ」
「バカだな、新宮は。確かに三ツ橋高校の建物を無断で使用したりすれば、怒られるよな。でも、あの事務所だけは違う。我が一ツ橋高校が所有している唯一の場所だ。つまりその管理者、責任者であるこの私、宗像 蘭ちゃんなら、泊まろうがナニしようが、無問題なのだ!」
「……」
その後、宗像先生の話を詳しく聞いてみたら。
以前は近くの安いアパートに一人暮らししていたが、家賃を滞納しすぎて、追い出されたらしく、現在は事務所を自宅として、利用しているらしい。
裏口から入り、俺は下駄箱に自分の靴をなおして、上靴に履き替える。
先生は一足先に二階の事務所へと上がっていた。
俺が下駄箱から階段を登ろうとすると、制服を着た男女数人と遭遇。
「おつかれさまでーす!」
なんて労いの言葉を頂いた。
「ちっす」
と軽く会釈して、事務所へと逃げ込む。
だってもうスクリーングはないし、通信制の一ツ橋高校は終業しているからだ。
本来なら、この校舎に来るのは、校則違反だと思う。
久しぶりの事務所だが、相変わらずの殺風景で、全てがボロい。
デスクやソファー、食器棚。
貧乏なのが丸分かりだ。
宗像先生は奥にあった小さな冷蔵庫から、ハイボール缶を二つ持って来て、応接室であるソファーにダイブする。
二人がけの方だ。
寝転がってグビグビ飲みだす。
「プヘ~ッ! うめぇなぁ。生徒から搾り取った金で飲む酒はよぉ~」
最低な人間だ、こいつ。
俺は宗像先生とは、反対方向の1人がけのソファーに腰を下ろす。
「先生……ところで、こんな環境なのに、よくあんな高級車を乗り回してますね。だって家賃払えないから、事務所で暮らしているんでしょ?」
そう尋ねると下品な笑い方でこう答える。
「はーっははは! 私がベンツなんて買えるわけないだろ! あれは借りもんだよ」
「ん? 借りもの?」
嫌な予感がしてきた。
「そうだよ? 三ツ橋高校の校長さ。金持ちなんだよ。あのオヤジ……ムカつくよな?」
「いや、それとこれと、どういう関係が?」
「あのおっさんがさ、自宅に何台も高級車持っててさ。多すぎてたまに高校の駐車場に置いておくわけ。その時にちょっとな♪」
ちょっとってなんだよ。
「つまり?」
「スペアキー作って置いたんだよ。このこと、内緒だぞ~ 新宮!」
誰にも言えるか!
宗像先生が三本のハイボールを飲み終えた頃。
「さ、そろそろ……大人の魅力ってやつを取材に行くか! 新宮!」
「どこに行く気ですか?」
「そうだな。まずは、大人のデートを知りたいだろ? なら、パッチンコだ!」
「……」
こいつ、そういうことかよ。なんとなく察してきた。
「もちろん、デートなんだから、経費で落としてくれよな♪」
なんてウインクして、誤魔化そうとしていやがる。
宗像先生は、アンナやひなたのようにデートを楽しむわけではなく、経費でタダになるからと、俺を利用したに過ぎない。
クソがっ!
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