202 / 490
第二十五章 まだまだ終わらない高校
カノジョの作った料理に文句は言っちゃダメよ♪
しおりを挟む波のプールで溺れたミハイルを、お姫様抱っこしてから、なんかギクシャクしてしまう。
二人して、ビーチの隅で体操座りする。
ボーッと放心状態で、宗像先生や千鳥、花鶴がプールではしゃいでる姿を、眺めていた。
というか、俺の場合は、股間が直立しちゃったから、動けないんだけどね♪
ミハイルといえば、頬を赤らめて、視線を下にやっている。
結局、その後も俺たちはプールで遊ぶことはなく、「そろそろ、あがるか」と更衣室に戻ってしまった。
更衣室の入口付近に、シャワールームが設置されていたので、俺はそのまま、身体を洗うことにした。
ミハイルはなぜか、「オレは自分の部屋で洗うから」と、一人ホテルに戻ってしまった。
なんでだろう? 裸になるのが恥ずかしいのか。
それを言ったら、このあとの温泉とか大浴場はどうする気だ?
身体と頭を洗い終えると、ムキムキのハゲマッチョに声をかけられる。
「タクオ! プール、楽しかったよな!」
「ああ……まあ、それなりに、な……」
股間くんはすごく楽しかったと言っています。
「てかよ、ミハイルと一緒にいたんじゃねーの?」
「さっきまでいたが、なんか先に部屋に戻ると言ってたぞ」
「ふーん。あ、タクオさ、水着は後で使うから、あそこにある脱水機を使って乾かしておけよな」
「何に使うんだ?」
「この『波に乗れビーチ』の上に、混浴温泉『クーパーガーデン』があんだよ」
なん…だと!?
「混浴だってぇ!? そ、それは本当か?」
興奮するあまり、千鳥に迫る。
「お、落ち着けよ。タクオ……混浴っても、水着で入るんだよ。だから、いるんじゃねーか」
チッ、クソみてーな温泉だな。
一気にテンションが下がる俺氏。
「なるほど。了解した。じゃあ、水着は乾かしておこう」
脱水機で、水着を乾かしている間、俺はロッカーを開く。
入れていたタケノブルーのTシャツは汗臭い、ジーパンも湿っている。
せっかく、シャワーで綺麗な身体になったというのに、これをまた着るのは、げんなりするな。
そう思っていると、近くのカウンターで立っていた男性スタッフから声をかけられる。
「あ、お客様! バスタオルと浴衣を無料でお貸しておりますよ」
助かったと俺は安堵する。
スタッフから、Mサイズの浴衣とバスタオルを受け取り、ロッカーで着替えをすます。
と思いたかったが……。
下着が問題だ。
ブリーフも汗まみれ。
ならば、選択は一つしかない。
アラサー痴女教師、宗像 蘭から借りたTバックを履くしかない。
覚悟を決めろ、琢人よ!
紫のレースのパンティーだが、履いてみたら、案外ダンディーな男に見えなくもない……気がする。
宗像先生が普段、履いている下着を広げて、俺の脚に『穴』を通していく。
両方埋まったところで、グイーッと股間にフィットさせる。
ふむ、サイズ的には問題なしだ。
ケツがスースーするが、案外いいもんだな。
一つ、気持ち悪いとするならば、前面から俺のヘアーが、もじゃもじゃとはみ出ているところか。
浴衣で隠せば、問題ない。
「よし、俺もホテルに戻るかぁ……」
なんだか、女の子の気持ちがわかってきちゃったかも。
※
ホテルに戻ると、腹の音が鳴る。
もう夕方の6時だ。
腹も減る頃合いか。
そう言えば、宗像先生が言ってたな。
一階にある食堂に集まれって……。
食堂に向かうと、もう既にみんな集まっていた。
バイキング形式で、好きな食べ物を自分で取って良いようだ。
「これはなかなかに豪勢だな」
ハンバーグ、刺身、ステーキ、天ぷら、カニ、カレー、ピザ……なんでもありだ。
よし、いざ実食!
トレーを持って、料理を取ろうとした瞬間だった。
華奢な白い腕が俺を静止させる。
「待ってたよ☆ タクト!」
浴衣姿のミハイル。
しっかり帯を巻けていないのか、襟元が随分、はだけている。
上から見ると、もうすぐ乳首が見えちゃいそう……。
サイズもあってないようで、かなり大きい浴衣を着ているようだ。
上前と下前が、左右に開けている。
彼が嬉しそうにぴょこぴょこ動く度、グリーンのボクサーブリーフが、チラチラと見えてしまう。
男装時は、防御力が低すぎんだよな……。
生唾を飲み込んでしまう。
「ねぇ、聞いている? タクト?」
潤んだ瞳が、一段と輝いて見えた。
「あぁ……なんだっけ?」
お前の浴衣姿に見惚れていた……なんて、言えるわけないだろう。
「も~う! だから、言ってるじゃん! タクトの夜ご飯は、オレが作ってきたから、バイキングする必要ないよ☆」
「は?」
「バイキングってさ、選んでテーブル戻っての繰り返しじゃん。疲れるじゃん。なら、最初から豪華な料理を、ダチのオレが作ってきたんだ☆ えっへん!」
ない胸をはるな!
そして、俺はそんなこと頼んでもないぞ!
バイキングしたいのに!
「ほら、こっちに来てきて! もうちゃんとテーブルに用意しているから☆」
そう言って、強引に手を引っ張られる。
俺の拒否権はないんですね。
ミハイルに連れてこられたテーブルは、大人が6人ぐらい座れる巨大なテーブル。
「こ、これは……」
見たこともないぐらいの、豪華な料理がずらーっと並んでいた。
伊勢エビのマスタード焼き、鯛の活け造り、ふかひれスープ、極厚ステーキ、フルーツの盛り合わせ、おまけに、パティスリーKOGAの名前が刻まれたケーキが10個以上……。
れ、レベチィ~っ!?
しかも、テーブルの上には、ネームプレートが置かれており、
『新宮様、古賀様。貸し切り』
と、予約されていたようだ。
蝶ネクタイをつけた品格のあるウェイターが、俺の前に現れる。
「ご予約されていた新宮様と古賀様ですね……こちらの席へどうぞ」
「は、はい……」
貫禄が違う。
思わず敬語になってしまった。
「タクト。これオレが全部、作ったんだゾ☆ すごいだろ!」
「ああ……」
もう、ドン引きしています。
席に二人して座る。ピッタリ並んで。
すかさず、ウェイターが俺の前にメニューを差し出す。
「新宮様、本日のおすすめは、白ワインの10年ものです……」
「はぁっ!?」
思わず、アホな声が出てしまう。
俺、未成年なんだけど。
「タクト、心配しなくてもオレが用意したノンアルコールのジュースだゾ☆」
「そ、そうか……なら、それをください」
「かしこまりました。少々お待ちください。古賀様も同じものでよろしかったですね?」
「うん、グラスも二つお願いね☆」
「承知いたしました」
一礼すると、ささっと静かに調理場へと戻っていった。
てか、何様なの? ミハイルって。
「なあこの根回しは……ミハイルがしたのか?」
「そうだよ☆ ここのホテルにねーちゃんがケーキとか卸してるから、ゆーづうがきくんだ☆」
ヴィクトリア、強し。
「なるほど……」
「そんなことより、早くオレの作った料理食べてよ☆」
「ああ、いただきます」
「どーぞ☆ 残さないで食べてくれよな☆ 徹夜して作ったんだから☆」
めっちゃ笑顔で俺の顔を覗き込んでいるんだけど。
脅しに聞こえます。
このあと、俺は死ぬ思いで、ミハイルのフルコースを一人で食べることになった。
彼と言えば、ジュース以外はホテルのバイキングを食べていた。
ミハイル曰く、
「タクトのために作った料理だから、オレは食べなくていいよ」
「食べるところとか、味の感想を聞きたい☆」
と言って、一緒に食べてくれなかった。
吐きそう……。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる