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第二十四章 夏だ! プールだ! 男の娘の水着だ!
水着のパッド、マシマシで!
しおりを挟む色々とあったが、無事に期末試験は終了した。
暗記に苦戦していたミハイルもちゃんとテストを書けたようだし、まあ後は結果を待つのみだ。
試験の答案用紙は来月の終業式で返却されるらしい。
だが、宗像先生が言うには、「基本、点数じゃない」「単位取得の条件はその生徒の誠実さ」だとか……。
意味がさっぱりわからん。
結局は、先生たちの選り好みで単位が決まるのだろう。
真面目に頑張っている俺たちって、果たして高校通ってる意味あるんだろうか?
試験が終わったことで、レポートもないし、ラジオの通信授業もお休み。
終業式こそ、来週に控えているが、もうほとんど夏休みといっても過言ではない。
それぐらい毎日、暇を持て余していた。
もちろん、新聞配達は休みがほぼないので、忙しいといえばそうなのだが……。
仕事のときだけ、外に出て、人と必要最低限の話をする。
家に帰っても、母さんや妹がいるけど、特に話すこともない。だって変態だから住んでいる次元が違いすぎる。
執筆の方もだいぶ前に書き上げたから、特に今は書くこともない。
毎日、ポカーンと口をだらしなく開いては、大好きなアイドル声優のYUIKAちゃんのPVプレイリストをただ見つめる。
「ハァ……」
PVで歌っているYUIKAちゃんは、元気よく浜辺で踊っている。
海かぁ、ぼっちの俺からしたら程遠い場所だな。
そうため息を漏らしたその時だった。
スマホのブザーが鳴る。
着信名は『アンナ』
「おっ!」
思わず声に出てしまう。
『もしもし、タッくん? 今、ちょっといいかな』
相変わらずの優しい口調だ。
テンションが上がる。
「おぉ、久しぶりだな。こっちは大丈夫だ。どうしたんだ?」
『あのね、急で悪いんだけど……明日取材しない?』
妙に甘えた声だな。
「取材か。俺の方は構わん」
ていうか、待ってましたと言わんばかりに、前のめりになる。
拳もグッと握って、勝利宣言。
『良かったぁ☆』
「で、今回の取材はどこにする?」
『あのね、ミーシャちゃんからプールの割引券をもらったの。場所は海の中道で……』
ちょっと待て。それ自分でゲットしたってことだろ。
いちいち、別の人格を使って誘うなよ。
「プールか……」
余り良い思い出がない。
小さい頃、クソ親父の六弦に、まだ幼い俺を災害救助の練習と称しては、深い大人用のプールに投げ込まれた覚えがある。
それが海の中道っていう印象。
海の中道ってのは、福岡市と志賀島を繋いでいる砂州のことだ。
名前通り、海と海に囲まれた街で、主にリゾート地として栄えている。
またアンナが言っているプールってのも、恐らく国営の海の中道海浜公園の一部。
『アインアインプール』のことだ。
今は6月も終わりに近い。
プール開きということか。
気乗りしないな。
暑いし、俺はあまり泳ぐの好きじゃないし……。
俺が黙りこんでしまうと、アンナが受話器の向こう側で心配していた。
『タッくん? 嫌なの? プール……』
「あ、ちょっと苦手なんだ……」
『そうなんだ……じゃあ変えようか。アンナ、水着買ったけど……』
「えっ!?」
思わず、大声で叫んでしまった。
アンナの水着姿だと!?
そんなこと言われたら、絶対に見たいに決まってるじゃないか!
一瞬にして、気分が上昇。
「待った。やっぱり行くわ」
『ホント? 苦手だったんじゃないの?』
「ごほん、あれだ。俺は作家だろ。ここ数年、プールも行ってないし、ちゃんとそういう景色とか、人たちをこの目で焼きつけないと、取材にならないと思ってな……」
理由を正当化しておいた。
『そっかぁ☆ なら良かった! じゃあ明日の10時ごろに、博多行きの電車で待ち合わせしよ☆』
「了解だ」
電話を切った瞬間、俺はその場で飛び跳ねた。
「アンナの初水着キターーーッ!!!」
前回はラブホのスク水。あくまでも、コスプレだったからな。
あれはアレで好きだったし、今でもスマホからPCに転送して、毎日楽しんでいるのだが、また良き思い出が増えるんだな……。
なんてたって、今回は本物の水着だ。
ビキニか、ハイレグか、それともティーバック!? か……夢が広がるなぁ。
よし、スマホのSDカードの空き容量をちゃんと確認しておこっと。
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