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第二十三章 第二次テスト大戦

男の娘ファースト

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 トマトさんは、あまりに不審者ぽかったので、俺が教室に入るよう促した。
 最初こそビクついていたが、『気にヤン』のヒロインモデルになってしまった花鶴 ここあとぺちゃくちゃ話していた。
 だが、彼の視線はずっと、花鶴の胸元とパンツの二点であって、顔はあまり見てない。
 何枚か写真撮影を頼んでいて、それに快く応じる花鶴。
 なんとも異様な光景だった。


 ミハイルは、モデルがよりにもよって、ギャルの花鶴になったことにショックを受けてしまい、半泣き状態で落ち込んでいた。

「グスンッ……なんでここあなんだよぉ」
 
 机に顔を埋めてしまい、いつもの彼らしくない。
 だが、確かに俺たちが培ってきたものが、全て打ち砕かれたような悲しみを感じる。
 原作には、俺とミハイル、それにアンナが主要人物として、描かれているが、他にもサブヒロインとして、北神 ほのかや赤坂 ひなたも採用している。あと自称芸能人の長浜 あすかも。
 モブキャラとして、花鶴と千鳥を使ったが、そんなに重要なキャラではない。
 むしろヒロインを立てるための盛り上げ役にしかすぎなかったのに……。
 俺も心で涙を流していた。


「よーし、今日も楽しい楽しいホームルームのはじまりだぞ~」

 この低い声は、安定の痴女教師、宗像先生だ。
 編み上げのコルセットに、テカテカのレザーのショートパンツ。
 おまけに、これまたレザー製のニーハイブーツ。
 もうこうなると、大人向けのSM嬢にしか見えない。

「な、なんだ。あのエッチぃお人はっ!?」
 目移りするトマトさん、いや筑前 聖書くん。(25歳)
「おお、お前が日葵から紹介された筑前か。今日はしっかり本校を体験していけよっ!」
「はいっ! 素晴らしい学校だ……これなら、DO先生のモデルには困らないなぁ」
 机の下でグッと拳をつくるトマトさん。

 えぇ……まさか宗像先生まで、モデル候補になってんの?
 しんどいよ。


「えー、本日は前回と同じく期末試験だ。午前は筆記試験、午後は武道館で体育の実技試験を行う。以前、伝えた通り、ちゃんと体操服とブルマは持ってきたか?」

「「「はーい」」」

 バカそうにみんなで答えやがる。
 てか、最初から体操服を入学時に販売しておけば、三ツ橋高校からパクることもないのに……。

「なんとっ! 絶滅危惧種の聖杯、ブルマがこの高校にあるとはっ! ますます入学せねば、なりませんね、DO先生」
 親指を立てる豚ことトマトさん。
 あんた、なにしに来たんだよ……。


   ※

 一時限目の試験は、数学。
 今回もきっと女子が優遇されるのだろうなと、俺は半ばあきらめていた。
 ミハイルがあんなに頑張っていたのに、また女子たちは教師から助言というか、回答を隣りから優しく教えてもらうのだろう。

 俺は落ち込んでいたミハイルに声をかける。
「なあ、ミハイル。また試験勉強してきたんだろ?」
「あ、うん。あんまり自信はないけど……タクトのレポートがあったから、たぶん大丈夫☆」
 少しだけ笑顔が戻る。
「そうだな、俺たちならきっと大丈夫だ」
「うん☆」
 よし、元気がでてきたようだ。
 これで少しは安心できる。

 トマトさんは、別に試験を受けるわけではないのだが、「ここあさんと離れたくない」という理由から、宗像先生に許可をもらい、机に座ることを許された。
 その間、ずっと、花鶴の机にびったり自身の机をくっつけて。
 スマホで横顔をバシャバシャと連写していた。
 よっぽど、彼女が気にいったらしい。
「ここあさん! こっち向いてください! しゅ、取材に必要なんです!」
「ハハハッ、ちょー必死でウケるんだけどぉ~」
 俺は全然ウケない~



 ガラッと教室の扉が開く。
 あまり見たことのない先生だった。
 身長が高くてガタイもいい中年の男性。
 見るからに体育会系といった感じ。

 眉間に皺を寄せていて、その顔つきといったら、仁王像のような迫力がある。
 こりゃ厳しそうな先生だ。

「はい、じゃあテストを配るから、時間になったら一斉に始めるように! それから、私は他の先生とは違うからな! ビシバシ行くぞ!」
 その言葉一つ一つに、先生から熱意を感じる。

 きっとこの人なら、女子を優遇せず、平等にみんなを見てくれるかもな……。
 俺は少し期待していた。


 試験がはじまり、俺はまた余裕で空欄を全て埋めてしまう。たった10分で。
 なぜかって、問題が小学校の低学年レベルだから……。
 暗記するまでもないし、暗算するまでもない。
 自然にスラスラと書けちゃう。
 なんだったら、小説より早く書き終えちゃった。


 右隣を見ると、やはりミハイルは苦戦しているようだった。

「えっと……うーん、これはなんだったけ? タクトが書いてたレポートは……」
 がんばれ、ミハイル!


 そう思った瞬間だった。
 先ほどの教師が、ミハイルの机の前に立ち止まる。
 そして、彼の答案用紙をじっと見つめ、険しい顔でこう怒鳴った。

「きみっ!」

 俺はミハイルがなにか悪い事でもしたのかと思ったが、見当違いだった。

「え、なんすか?」
「ここ、問題間違ってるよぉ~ これはね、Aが正解なの。ダメだよ、きみみたいな可愛い子が問題をねぇ。間違えるなんて、先生、胸が痛いじゃない~」

 俺は思わず、机から転げ落ちるところだった。
 強い口調で怒鳴っかった思ったら、急に優しい口調で話し出す。
 しかも、ミハイルの肩に手をやって……。
 セクハラだっ! 俺のダチになにしやがる!

「え……なんで答えを教えてくれるんすか? 今日は試験でしょ?」
 ミハイルの必殺技、上目遣いで当の教師を目で殺しにかかる。
 すると、先生は嬉しそうに笑う。
「やだぁ~ 先生はね、きみたちがなるべっく単位を取れるように、力を貸しているだけよ? 不正行為とかじゃないから、心配しないでね。あ、こっちも間違えてるよ?」
 妙に身体をくねくねと動かして気持ちが悪いったら、ありゃしない。
 しかも、ボディタッチが激しくて、ミハイルの小さな背中を撫でまくる。
 クソがっ!

 っと思っているのも束の間、今度は矛先がこっちに向けられる。

「ちょっと、きみっ!」
「え、俺のことですか?」
 まさか、こっちに来るとは思わなかった。

「そう、あ・な・た・よ……」
 なんでウインクしてくんの?
 キモいんだけど。
「全問正解じゃない~ すっごいのねぇ~ あなたの頭ってナニで出来てるの? こんなテスト見たことないわ~」
 そう褒められながら、頭を撫で回す。
 鳥肌がたった……。
 この先生、ヤベェ!


 俺の元から立ち去ったが、その後も女子は全員無視し、男子ばかりに声をかける。
 左隣りにいた北神 ほのかは、今回自力で試験を受けることになってしまい、顔を曇らせていた。
「わかんない~」
 うーむ、これはこれで性差別なのでは?


 オネェ教師は、その後も次々の若い男子たちに答えを教えては、身体を必要以上に撫でまわす。
 最後に、彼が目をつけたのは、千鳥 力だった。

「わっかんねぇ~」
 問題用紙とにらめっこしている千鳥に、救いの神が現れる。
 そっと優しく彼の肩に触れると、こう耳元で囁く。

「あらぁ、きみってば悪い子ねぇ……こんなにも問題を間違えちゃってぇ。先生、燃えてきたわ」
「え、なんすか?」
 真っ青になる千鳥くん。
「今からたっぷり優しく教えて、あ・げ・る」
 そして、ツルピカに輝くスキンヘッドに口づけ。
「ひ、ひぇ!」
 脅える伝説のヤンキーの一人。

「たくましい胸板ねぇ、きみの場合、知識が全部、ここにいっちゃってんのかなぁ?」
 そう言って、オネェ教師は千鳥くんの乳首を指で、いじりまくる……。
「うぐっ!」
 なにかを必死に耐える千鳥くん。


「よし、全部書けたぞ☆」

 何か知らんが、ミハイルに有利な展開なので、これで良し!

 その後も、今日のテストはオネェ先生が担当していて、男子が圧倒的に優遇された。
 女子は蚊帳の外。
 やったぜ!
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