168 / 490
閑話 ラストクリスマス
中二病っていうけど、中二は最強説
しおりを挟むあれは去年の暮れの出来事だった。
「へっくし!」
俺は例年以上の大雪の中、天神のメインストリートとも言える渡辺通りを歩いていた。
クソ出版社に通うになってからというものの、少しずつだが通り名もなんとなく把握しつつあった。
「あんのクソガキ、この天才をこんな日に呼びつけるとは何事か」
そう吐き捨てながら、すれ違う人々を睨む。
「ひっ!」
「不審者!」
誰がだ? このリア充どもが!
こんな平日によくもまあこんなにゴミのように集まれるものだ。
「恵まれない子供たちに募金をおねがいしまぁ~すぅ!」
「ちっ、どこの理系女子だよ……」
数十メートルも一列に並んだ少年少女たちが募金箱を持って、大声で叫んでいる。
健気なことに皆、薄手の制服で立っていた。
ダッフルコートを着ている俺でさえ、ガクブルだというのに、これは立派な児童虐待と言えよう。
彼らの最後尾まで目で追う。
列の最後に立っていたのは、若い女だった。
どうやらこの学生たちの責任者だろう。
だが、俺はここであることに気がついた。
生徒たちは手足を震わせながら、街行く人々に声をかけている。
そんなこと、このリア充どもには声など届かん。
なぜなら、今日は12月24日。
リア充によるリア充のためだけの特別な日だからだ。
そう、クリスマスイブ。
かくいう、この天才も暇を持て余しているわけではない。
だが仕事となれば、話は別だ。
暖かい家に帰りさえすれば、「さあ楽しい楽しいパーティーのはじまりだぁ!」がはじまるのだ。
まあ俺の予定はさておき、この哀れな学生たちを見逃すことがどうにも引っかかる。
なぜならば、責任者である女は自分だけ、分厚いダウンコートに手袋までしている。
これだからは大人様は……。
「おい、お前ら学生か?」
「あ、はい! 中学生です。今、募金をしているんです」
「そんなのは見ればわかる」
「よかったら!」
一人の少年が目をダイヤのように輝かせ、俺にササッと募金箱を差し出す。
いや、俺はそんなしょうもうない箱に入れる金は持ち合わせてはいないぞ?
まあチワワみたいで可愛いくも見えるのだが。
「なあ、お前らはこんなクソ寒い大雪の中、一体なにをしている?」
「募金ですけど……」
「それは偽善行為、自己満足でしかないな。お前自身、この行動に何を感じる?」
少年は俺の問いに戸惑い、隣りの少女に「変な人が来た」みたいな顔で問いを振る。
「あの……私たちは貧しい国の……恵まれない子供たちに暖かい毛布や食事を送りたいんです」
少女がこれまたダイヤのように純真無垢な目で俺を誘う。
これは新興宗教か何か?
騙されんぞ! JCごときにこの俺が屈することなど……。
「そんなのはその国自体に問題があり、政治家にでも任せろ。お前らには一切、関係ない。大人様にでも任せておけ。それこそ、俺たちの知らんところで政府が助けている可能性もある」
ソースは都市伝説!
「で、ですけど……私たちの気持ちは本物です」
う、そんなに見つめるな! 可愛すぎるぞ!
「いいか、目を凝らして周りをよく見ろ! お前らは騙されているのだ! これは陰謀だ!」
「陰謀って……」
JCちゃんの口元が引きつる。
「だがな……お前たちの気持ちだけは認めてやる」
「あ、ありがとうございます♪」
そう見つめるJCちゃんは頬を赤らめて、手足を震わせている。
かわいそうで、抱きしめたくなっちゃう!
「あの……お兄さんのお気持ちだけでいいんです……よかったら、募金に協力していただけませんか?」
募金箱を突き出す。
なにこれ、新しい武器なの? 殴られたら痛そう。
俺はため息をつき、「どうしようもないバカだな」と呆れかえる。
「仕方ない」
そう言うと、JCちゃんとDCくんが顔を明るくさせる。
「「募金、ありがとうございます!!」」
深々と俺に首を垂れる。
「勘違いするな」
「え?」
「俺は募金するなぞ、一言も発しておらんぞ。そのなんだ……俺にはお前らの方がよっぽど! 恵まれない環境にいるように見えるぞ」
「……?」
「おいそこの女子よ」
「私ですか?」
DCでも良かったのだが、可愛かったのでJCを指名した。
「お前に問いたい。さっきこう言ったな? 『恵まれない子供たちになんちゃらかんちゃら』と」
JCちゃんの発言は記憶していたが、恥ずかしいので皆までは言わずした。
「そうですけど……」
「今のお前らを見ろ、すぐにでも凍え死にそうだ」
左手でアホみたいに並んだガキどもをなぞるように、腕をピシッと伸ばす。
だが、そんなパフォーマンスにはJCちゃんは臆することもない。
「いえ! そんなことは全然ありません! むしろ私たちは恵まれない子供たちのことを思うだけで、こう……。胸が熱くなってくるんです! だから今もポカポカした気持ちです♪」
そうは言うけど、今もめっちゃ震えているやん。
俺はポカポカしているらしいバストに目をやると、ふくらみかけの乙ぱいが最高にイイ感じだ!
目をそらして、咳払いをする。
「オホン! いいか。お前らのような中学生がなぜこんな所で募金などという偽善行為に加担しなければならないのだ? お前らは見たころ、二年生ぐらいだろ?」
「そうですけど」
だよね。微妙な乳加減が中二少女って感じです。
「三年生になったらどうする? 当然、高校受験があるだろ。来年もやらないなら、立派な偽善行為だろが! つまりお前らが来年の今頃は、暖かい自宅で受験勉強に勤しむわけだ……」
「そ、それは……」
JCちゃんの目に涙が浮かぶ。
ヤベッ、ちょっと言い過ぎたかも? てへぺろ♪
「ちょっと、あなた! うちの生徒になんなのよ?」
騒ぎを聞きつけ、一人の若い女が俺の前に立ちはだかった。
コイツが、犯人か……。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる