156 / 490
第二十一章 ニャンニャンパラダイス
カノジョが地元に帰ると距離感つかめない
しおりを挟む
「じゃ、タクト。ちょっと待っててね☆」
ミハイルはそう言うと、俺に背を向ける。
小さな桃のような尻をプルプルと震わせて、小走りで去っていく。
自身の家でもある『パティスリー KOGA』に入っていったのだ。
三ツ橋高校の体操服にブルマ姿で、地元の席内を歩くわけにも行かないので、彼の自宅に寄ったわけだ。
今日は姉のヴィクトリアがシラフのようで、店を通常オープンしていた。
窓から店の中を確認すると、子供連れの主婦たちが客として訪れている。
普段はアルコール中毒で、下着姿でうろちょろする破天荒なねーちゃんだが、ニコニコ優しく微笑んでいる。
さすがだ。
嫌な顔せず、ショーケースからケーキをトングで取り出す。
ミハイルと女装したアンナぐらいの二重人格だ。
やはり血は争えないなぁ……。
俺がそう感心していると、隣りから声をかけられる。
「お待たせ☆」
白い歯をニカッと見せつけて、太陽のように眩しく微笑むミハイル。
本日のヤンキーファッションだが、胸元に大きな星がプリントされたタンクトップ。
パンクなデザインで、なぜか左右にチャックがついている。
たぶんおしゃれなのだろうが、俺からすると脱がせる前提のエロいデザインに感じた。
布地も少なく、ミハイルの華奢な肩が露わになっており、丈もへそ上という短さ。
そしていつもの如く、下半身は白くて細い脚が拝めるショートパンツ。
防御力がほぼゼロだ。
俺がスライムでも今の彼に襲い掛かれば、勝てそう。
性的なバトルで……。
しばらく、その光景に目が釘付けになっていると、彼が怪訝そうに俺をみつめた。
「タクトってば、ボーッとしてどうしたんだよ?」
ムッとした顔で、下から俺をのぞき込む。
腰を曲げているため、タンクトップが緩み、胸元が見えそうになる。
誘っているんでしょうか? この人……。
「む、いや。なんでもないんだ……」
頬が熱くなるのを感じた。
「変なタクトぉ……。あ、ひょっとして、昨日のたいそーふくがそんなに嫌いだったのか?」
手のひらを叩いて、一人で合点する。
いや、ちがうから。
どっちも好きです……なんて言えるわけないだろが。
「違うよ。ま、とりあえず、ネコカフェに行こう」
「うん! 早く行こうぜ☆」
そうそう、今日はそれが取材なんだから。
デートじゃないのよ、タッくんたら。
相手はアンナちゃんじゃない。
男のミハイル。
だから、ノーカウント。
席内商店街を抜けて、以前ミハイルと買い物をしたショッピングモール、ダンリブの建物に沿って旧三号線に向かう。
ダンリブの反対側には、100円均一の『タイソー』とドラッグストアが並んでいる。
交差点を使って渡る。
俺らオタク。つまりは犯罪者予備軍の天敵であるお巡りさんがお出迎え。
道路を横断すると、目の前には交番があり、交差点に一人のポリスメンが立っていた。
険しい顔で、辺りを見張っている。
ミハイルとは顔見知りのようで、
「おぉ、ヴィッキーんところの弟じゃねーか」
随分となれなれしく話すじゃないか……。
ダチとしては、ちょっと嫉妬を覚える。
「あ、お巡りさん。おつかれっす☆」
ミハイルも手を振って、笑顔で答える。
なんだよぉ~ ヤンキーならそこは警察にイキってみせろよ。
ムカつくなぁ。
隣りでイラつく俺をよそに、ミハイルは世間話を始める。
「今からネコカフェに行くんす☆」
てか、警察には敬語使うのな。
「そーか。気をつけて行ってこいよ。ん? 珍しいな。ミハイルのダチか」
やっとのことで、俺に気がつく。
一応、挨拶をしておく。
「あ、同じ高校の新宮です」
「高校? あー、ひょっとして、一ツ橋高校か?」
「そうです。なんで分かったんすか」
俺が不思議そうに問いかけると、何を思ったのか、そのポリスは大声で笑い出す。
「ハハハッ! だって、本官もあそこの卒業生だからなぁ」
「え……」
「今は警察なんてやってんけど、昔はヴィッキーぐらいヤンチャしてたからさ。一ツ橋ぐらいしか、入学できなくてよ」
そんな偏差値で、よく警察官になれましたね。
「はぁ…」
「ま、本官もヴィッキーも、もういい歳だからさ。今じゃ仕事あがりにウイスキーをストロング缶で割るぐらいしか、できないけどよ……丸くなったもんさ」
いや、もっと酷くなってますよ。
酒をお酒で割るなんて、ヤンチャどころじゃない。
さっさと、アルコール外来か、病院にブチこむレベルだ。
「おっと、長話しちゃいけねーな。一ツ橋って言うと、どうしてもヴィッキーや蘭たちと悪さしてた頃を思い出しちまう」
一人で勝手に語って、満足してんじゃねー。
お前は席内を守る側であって、絶対に飲酒運転とかすんなよ、クソが。
「お巡りさん! オレたち早くニャンニャンに会いたいの! もういい?」
ミハイルが頬をプクッと膨らませる。
「わりぃわりぃ。もう行っていいぞ」
おでこをかきながら、申し訳なそうにミハイルに頭をさげる。
すれ違いざま、お巡りさんが低い声で俺にこう言った。
「あ、一ツ橋といったら、日葵のバカがいたよな?」
「え……」
日葵って、俺の担当編集の白金 日葵のことだよな。
「あいつ、たまに酔っぱらってウチの交番に夜中遊びに来るんだよ……。んで、鉄砲をパクって近くの海岸で撃ちまくるんだ。ストレス発散とか抜かして……。いつか逮捕したいから、見かけたら教えてよ♪」
そう言って、笑顔で俺に伝える。
目が笑ってない。すごく怖いです。
「も、もちろんです!」
背筋がピンと伸びる。
「うんうん、いい子を見つけたな。ミハイル」
「だろ? オレのダチだからさ☆」
やべぇ、白金と会っているところをこのお巡りさんに見られたら、俺まで逮捕されかねない。
さっさと、担当をチェンジしてもらおっと。
ミハイルはそう言うと、俺に背を向ける。
小さな桃のような尻をプルプルと震わせて、小走りで去っていく。
自身の家でもある『パティスリー KOGA』に入っていったのだ。
三ツ橋高校の体操服にブルマ姿で、地元の席内を歩くわけにも行かないので、彼の自宅に寄ったわけだ。
今日は姉のヴィクトリアがシラフのようで、店を通常オープンしていた。
窓から店の中を確認すると、子供連れの主婦たちが客として訪れている。
普段はアルコール中毒で、下着姿でうろちょろする破天荒なねーちゃんだが、ニコニコ優しく微笑んでいる。
さすがだ。
嫌な顔せず、ショーケースからケーキをトングで取り出す。
ミハイルと女装したアンナぐらいの二重人格だ。
やはり血は争えないなぁ……。
俺がそう感心していると、隣りから声をかけられる。
「お待たせ☆」
白い歯をニカッと見せつけて、太陽のように眩しく微笑むミハイル。
本日のヤンキーファッションだが、胸元に大きな星がプリントされたタンクトップ。
パンクなデザインで、なぜか左右にチャックがついている。
たぶんおしゃれなのだろうが、俺からすると脱がせる前提のエロいデザインに感じた。
布地も少なく、ミハイルの華奢な肩が露わになっており、丈もへそ上という短さ。
そしていつもの如く、下半身は白くて細い脚が拝めるショートパンツ。
防御力がほぼゼロだ。
俺がスライムでも今の彼に襲い掛かれば、勝てそう。
性的なバトルで……。
しばらく、その光景に目が釘付けになっていると、彼が怪訝そうに俺をみつめた。
「タクトってば、ボーッとしてどうしたんだよ?」
ムッとした顔で、下から俺をのぞき込む。
腰を曲げているため、タンクトップが緩み、胸元が見えそうになる。
誘っているんでしょうか? この人……。
「む、いや。なんでもないんだ……」
頬が熱くなるのを感じた。
「変なタクトぉ……。あ、ひょっとして、昨日のたいそーふくがそんなに嫌いだったのか?」
手のひらを叩いて、一人で合点する。
いや、ちがうから。
どっちも好きです……なんて言えるわけないだろが。
「違うよ。ま、とりあえず、ネコカフェに行こう」
「うん! 早く行こうぜ☆」
そうそう、今日はそれが取材なんだから。
デートじゃないのよ、タッくんたら。
相手はアンナちゃんじゃない。
男のミハイル。
だから、ノーカウント。
席内商店街を抜けて、以前ミハイルと買い物をしたショッピングモール、ダンリブの建物に沿って旧三号線に向かう。
ダンリブの反対側には、100円均一の『タイソー』とドラッグストアが並んでいる。
交差点を使って渡る。
俺らオタク。つまりは犯罪者予備軍の天敵であるお巡りさんがお出迎え。
道路を横断すると、目の前には交番があり、交差点に一人のポリスメンが立っていた。
険しい顔で、辺りを見張っている。
ミハイルとは顔見知りのようで、
「おぉ、ヴィッキーんところの弟じゃねーか」
随分となれなれしく話すじゃないか……。
ダチとしては、ちょっと嫉妬を覚える。
「あ、お巡りさん。おつかれっす☆」
ミハイルも手を振って、笑顔で答える。
なんだよぉ~ ヤンキーならそこは警察にイキってみせろよ。
ムカつくなぁ。
隣りでイラつく俺をよそに、ミハイルは世間話を始める。
「今からネコカフェに行くんす☆」
てか、警察には敬語使うのな。
「そーか。気をつけて行ってこいよ。ん? 珍しいな。ミハイルのダチか」
やっとのことで、俺に気がつく。
一応、挨拶をしておく。
「あ、同じ高校の新宮です」
「高校? あー、ひょっとして、一ツ橋高校か?」
「そうです。なんで分かったんすか」
俺が不思議そうに問いかけると、何を思ったのか、そのポリスは大声で笑い出す。
「ハハハッ! だって、本官もあそこの卒業生だからなぁ」
「え……」
「今は警察なんてやってんけど、昔はヴィッキーぐらいヤンチャしてたからさ。一ツ橋ぐらいしか、入学できなくてよ」
そんな偏差値で、よく警察官になれましたね。
「はぁ…」
「ま、本官もヴィッキーも、もういい歳だからさ。今じゃ仕事あがりにウイスキーをストロング缶で割るぐらいしか、できないけどよ……丸くなったもんさ」
いや、もっと酷くなってますよ。
酒をお酒で割るなんて、ヤンチャどころじゃない。
さっさと、アルコール外来か、病院にブチこむレベルだ。
「おっと、長話しちゃいけねーな。一ツ橋って言うと、どうしてもヴィッキーや蘭たちと悪さしてた頃を思い出しちまう」
一人で勝手に語って、満足してんじゃねー。
お前は席内を守る側であって、絶対に飲酒運転とかすんなよ、クソが。
「お巡りさん! オレたち早くニャンニャンに会いたいの! もういい?」
ミハイルが頬をプクッと膨らませる。
「わりぃわりぃ。もう行っていいぞ」
おでこをかきながら、申し訳なそうにミハイルに頭をさげる。
すれ違いざま、お巡りさんが低い声で俺にこう言った。
「あ、一ツ橋といったら、日葵のバカがいたよな?」
「え……」
日葵って、俺の担当編集の白金 日葵のことだよな。
「あいつ、たまに酔っぱらってウチの交番に夜中遊びに来るんだよ……。んで、鉄砲をパクって近くの海岸で撃ちまくるんだ。ストレス発散とか抜かして……。いつか逮捕したいから、見かけたら教えてよ♪」
そう言って、笑顔で俺に伝える。
目が笑ってない。すごく怖いです。
「も、もちろんです!」
背筋がピンと伸びる。
「うんうん、いい子を見つけたな。ミハイル」
「だろ? オレのダチだからさ☆」
やべぇ、白金と会っているところをこのお巡りさんに見られたら、俺まで逮捕されかねない。
さっさと、担当をチェンジしてもらおっと。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕は絶倫女子大生
五十音 順(いそおと じゅん)
恋愛
僕のコンプレックスは、男らしくないこと…見た目は勿論、声や名前まで男らしくありませんでした…。
大学生になり一人暮らしを始めた僕は、周りから勝手に女だと思われていました。
異性としてのバリアを失った僕に対して、女性たちは下着姿や裸を平気で見せてきました。
そんな僕は何故か女性にモテ始め、ハーレムのような生活をすることに…。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる