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第十五章 夢のアトラクション
祭りのあと
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変態女こと北神 ほのかの初原稿は却下されたものの、倉石編集長の薦めでこれからも編集部に出入りすることになった。
帰り際、倉石さんは「変態女先生は原作向きかも?」とアドバイスをもらった。
要はもっと画力の高い人に描いてもらうということだ。
なんかマンガ家さんの方が書籍化のチャンス高くね? と思うのは俺だけだろうか。
そんなことはさておき、ほのかは嬉しそうに笑っている。
「よかったぁ。琢人くんとミハイルくんのおかげだよぉ」
いや、俺たち何もしてないからね?
実力じゃん、良かったね。
「まあとりあえず、一歩前進といったところだろ。商業デビューしてからが地獄だぞ?」
ソースは俺。
デビューして3年も経ったのに売れない作家ですもん。
「オレ、ほのかがデビューできたら絶対に買うよ☆」
目をキラキラ輝かせるミハイル。
やめておけ、目が腐る。
「ありがとう! ミハイルくん」
あほらし、今日って俺のラブコメの取材じゃなかったけ?
「じゃあボチボチ帰るか?」
「そうだね、今晩のおかずは全部買えたし♪」
と言って大量の薄い本を見せつける。
大半がモザイク必須である。
「オレも楽しかったぁ☆ コミケまたきたいな☆」
そう言って可愛らしいネコのぬいぐるみを大事そうに抱えるミハイル。
もう来ない方がいいよ、君は無垢なままが素敵だから。
そんなこんなでなんとか、ミハイルちゃんの初めてのコミケデビューは幕を閉じた。
バスに乗って博多駅に着くと、ほのかは「私、反対方向だから」と別れを告げた。
「またな、ほのか☆」
「うん、ミハイルくんもBL漁るの頑張ってね!」
去り際にさらっと洗脳すんな!
「よくわかんないけど、頑張るよ☆」
頑張らなくていいから。
ほのかの後ろ姿を見送ると、俺とミハイルは二人っきりになった。
なんだかこっぱずかしい気持ちになった。
最近はミハイルと一緒にいることが少なかった。
どちらかというと女装したアンナといることが多い気がする。
「なあミハイル、小腹でも空かないか?」
何となく、会話が途切れそうで怖かった。
話題なんてどうでもよく、腹も別に空いてないのだが。
「オレ? そうだなぁ、じゃあどっかでお菓子でも買う?」
首をかしげるミハイル。
あの、お菓子って遠足じゃないんだから……。
「お菓子……。そうだな、この辺でアイスでも買って電車で食うか」
「それいい☆」
えらくご機嫌だな。
まあ俺もミハイルの笑顔が見れて嬉しかった。
博多駅前広場には季節限定の屋台がたくさん並んでいた。
ゴールデンウィークということもあって、北海道の物産展が開かれていた。
「あ、白いミルクをたくさん使ったソフトクリームだってよ☆ タクト!」
のぼりを指差してテンション爆上げミハイルさん。
「なるほど、限定ものか。あれにしよう」
「うん☆」
お目当ての店についたが、若い女性やカップルで長蛇の列だ。
かなり待たないといけないな。
~10分後~
ようやく、俺たちの番だ。
そう思ったその時、若い女性店員が申し訳なさそうな顔でこういった。
「お客様、申し訳ございません。もう在庫がなくて、あとお一人様分しか販売できません。どうされます?」
「え、マジか……」
さすがに男同士でアイスを共有するのはしんどい。
ミハイルには悪いが断っておこう。
俺が店員に返答しようとしたその時だった。
「全然OKっすよ☆ オレらダチなんで☆」
隣りを見れば満面の笑顔で答えるミハイルの姿が。
「ああ、助かります。では、380円になります」
俺が呆気に取られているとミハイルが財布から小銭を取り出し、支払いを済ませる。
気がつけば、彼の手には真っ白な北海道産ミルクで作られたソフトクリームが。
「さ、食いながら帰ろうぜ☆」
「え……」
さすがにその発想はなく、俺の頭がフリーズしていた。
「一つしかないんだから、一緒に食べるしかないじゃん☆」
「ま、まあそうだが……いいのか? 俺とその…食べることに抵抗はないのか?」
俺の疑問を吹っ飛ばすかのように、ミハイルは高笑いした。
「アハハハ! ダチなんだからこんなことフツーじゃん☆」
「そうなのか…」
俺は依然と彼の行動に驚きを隠せずにいた。
女装時のアンナならここまで積極的なこともできそうだが、男装時のミハイルがこんなに優しいなんてな。
意外だ。
「はい、タクトから舐めていいよ☆」
小さくて細い指で大事そうにソフトクリームを俺の口の前に差し出す。
「お、おう」
俺は遠慮がちに一口パクッと食べた。
「おいしい?」
「そうだな、濃厚なミルクの味がなんとも……」
と俺がグルメインタビューに答えようとしていたら、ミハイルはソフトクリームをペロリンと舌でひとなめ。
「ペロ…ペロペロ……んぐっ、んぐっ。ふぅ大きくて太いから顎が疲れちゃいそう☆」
あの、そういう表現やめてもらえません?
「じゃあ電車に向かうか?」
「うん、タクトも遠慮しないでちゃんと食えよ☆」
そう言って、彼がなめまわした部分を口に寄せられる。
思わず、生唾を飲んでしまった。
間接キスになるまいか?
「ほら、早く食えよ? 溶けちゃうぞ?」
ええい、ままよ!
俺はあむっと一口でいっぱい食べてしまう。
恥ずかしさもあってかだろう。
「ああ、タクト。ずっこいぞ! オレは口が小さいからゆっくりなめるのが好きなのに!」
頬をふくらますミハイルも可愛い。
「わ、悪い」
俺とミハイルはそのまま電車に乗ると、車内で立ったまま、交互にソフトクリームを舐めあう。
「ペロペロ……チュパッ。はい、タクトの番☆」
おちつけ、落ち着くんだ琢人。
こいつはミハイル。俺の男友達。アンナちゃんじゃないのよ!
「ああ……」
俺も恥ずかしながら、レロレロなめる。
「ハハハ、タクト。唇にクリームがいっぱいついちゃったな☆」
ミハイルはそう言うとピンク色のレースのハンカチで俺の口を拭う。
「あ、ありがとう」
「いいって。それより早く食べちゃおうよ☆」
そして、また俺がレロレロ、ミハイルがペロペロ……が延々と続いた。
辺りに立っていた若い女性たちがこちらを見て何やら囁いていた。
「ちょっ、あの二人やばくね? 車内でなめあうとかホテル帰りじゃね?」
「絶対、抜きあったあとだよ。そのあと、栄養補給にミルク摂取とか、どんだけ元気なんだか」
「どっちがタチでネコかな?」
貴様ら! 勝手に想像すな!
俺が腐り疑惑のある女性陣に目を取られたその時。
電車が急ブレーキで激しく揺れた。
「うぉっ」
「キャッ!」
咄嗟にミハイルの身体を抱きしめた。
身体の軽いでは倒れそうだと不安だったからだ。
時間としてはたった数秒だったのだが、何時間にも感じた。
俺の首元に伝わる彼の唇はほのかに冷たい。
だが、とても心地よかった。
小さくて少しこそばゆいミハイルのやわらかくて小さな唇。
そして微かに感じる体温。
このまま抱きしめていたい……そう思っている俺は頭がおかしくなってしまったのではないか?
そう思っていると車内にアナウンスが流れる。
『大変申し訳ございません。踏切の前に猫が入ってきまして、なんとか事故は防げました。お客様にはご迷惑をおかけしております』
車掌の声で俺は我を取り戻す。
ミハイルから身を離すと、彼は顔を真っ赤にしていた。
「あ、あの……守ってくれたの?」
上目遣いでどこか恥ずかしそうに俺を見つめる。
「いや、その咄嗟で悪かった…」
俺もどこか歯切れが悪い。
「いいよ……タクトがオレのこと大事に思ってくれたんだよな? ダチとして」
「まあ…な」
先ほどまで仲良くソフトクリームをシェアしていたというのに、ぎこちなくなってしまう。
しばらくの沈黙のあと、彼はこう言った。
「なあタクト……一つだけ言っていいか?」
「お、おう。なんだ? 何でも言ってみろ」
彼の答えに俺は密かに期待と不安を覚えた。
「言いにくいんだけど……」
顔を赤くしちゃって、可愛いやつだ。
「ダチだろ? 何でも言え」
ミハイルのことだ。「もう一回抱きしめて」なんて言うんじゃないのか?
「あのな……タクトのTシャツにソフトクリームぶつけちゃった……」
「え?」
俺は自身の胸元を見ると、べったりと白く染まったTシャツに気がつく。
その後、肌にぬるくて気持ち悪いの感触が伝わってきた。
帰り際、倉石さんは「変態女先生は原作向きかも?」とアドバイスをもらった。
要はもっと画力の高い人に描いてもらうということだ。
なんかマンガ家さんの方が書籍化のチャンス高くね? と思うのは俺だけだろうか。
そんなことはさておき、ほのかは嬉しそうに笑っている。
「よかったぁ。琢人くんとミハイルくんのおかげだよぉ」
いや、俺たち何もしてないからね?
実力じゃん、良かったね。
「まあとりあえず、一歩前進といったところだろ。商業デビューしてからが地獄だぞ?」
ソースは俺。
デビューして3年も経ったのに売れない作家ですもん。
「オレ、ほのかがデビューできたら絶対に買うよ☆」
目をキラキラ輝かせるミハイル。
やめておけ、目が腐る。
「ありがとう! ミハイルくん」
あほらし、今日って俺のラブコメの取材じゃなかったけ?
「じゃあボチボチ帰るか?」
「そうだね、今晩のおかずは全部買えたし♪」
と言って大量の薄い本を見せつける。
大半がモザイク必須である。
「オレも楽しかったぁ☆ コミケまたきたいな☆」
そう言って可愛らしいネコのぬいぐるみを大事そうに抱えるミハイル。
もう来ない方がいいよ、君は無垢なままが素敵だから。
そんなこんなでなんとか、ミハイルちゃんの初めてのコミケデビューは幕を閉じた。
バスに乗って博多駅に着くと、ほのかは「私、反対方向だから」と別れを告げた。
「またな、ほのか☆」
「うん、ミハイルくんもBL漁るの頑張ってね!」
去り際にさらっと洗脳すんな!
「よくわかんないけど、頑張るよ☆」
頑張らなくていいから。
ほのかの後ろ姿を見送ると、俺とミハイルは二人っきりになった。
なんだかこっぱずかしい気持ちになった。
最近はミハイルと一緒にいることが少なかった。
どちらかというと女装したアンナといることが多い気がする。
「なあミハイル、小腹でも空かないか?」
何となく、会話が途切れそうで怖かった。
話題なんてどうでもよく、腹も別に空いてないのだが。
「オレ? そうだなぁ、じゃあどっかでお菓子でも買う?」
首をかしげるミハイル。
あの、お菓子って遠足じゃないんだから……。
「お菓子……。そうだな、この辺でアイスでも買って電車で食うか」
「それいい☆」
えらくご機嫌だな。
まあ俺もミハイルの笑顔が見れて嬉しかった。
博多駅前広場には季節限定の屋台がたくさん並んでいた。
ゴールデンウィークということもあって、北海道の物産展が開かれていた。
「あ、白いミルクをたくさん使ったソフトクリームだってよ☆ タクト!」
のぼりを指差してテンション爆上げミハイルさん。
「なるほど、限定ものか。あれにしよう」
「うん☆」
お目当ての店についたが、若い女性やカップルで長蛇の列だ。
かなり待たないといけないな。
~10分後~
ようやく、俺たちの番だ。
そう思ったその時、若い女性店員が申し訳なさそうな顔でこういった。
「お客様、申し訳ございません。もう在庫がなくて、あとお一人様分しか販売できません。どうされます?」
「え、マジか……」
さすがに男同士でアイスを共有するのはしんどい。
ミハイルには悪いが断っておこう。
俺が店員に返答しようとしたその時だった。
「全然OKっすよ☆ オレらダチなんで☆」
隣りを見れば満面の笑顔で答えるミハイルの姿が。
「ああ、助かります。では、380円になります」
俺が呆気に取られているとミハイルが財布から小銭を取り出し、支払いを済ませる。
気がつけば、彼の手には真っ白な北海道産ミルクで作られたソフトクリームが。
「さ、食いながら帰ろうぜ☆」
「え……」
さすがにその発想はなく、俺の頭がフリーズしていた。
「一つしかないんだから、一緒に食べるしかないじゃん☆」
「ま、まあそうだが……いいのか? 俺とその…食べることに抵抗はないのか?」
俺の疑問を吹っ飛ばすかのように、ミハイルは高笑いした。
「アハハハ! ダチなんだからこんなことフツーじゃん☆」
「そうなのか…」
俺は依然と彼の行動に驚きを隠せずにいた。
女装時のアンナならここまで積極的なこともできそうだが、男装時のミハイルがこんなに優しいなんてな。
意外だ。
「はい、タクトから舐めていいよ☆」
小さくて細い指で大事そうにソフトクリームを俺の口の前に差し出す。
「お、おう」
俺は遠慮がちに一口パクッと食べた。
「おいしい?」
「そうだな、濃厚なミルクの味がなんとも……」
と俺がグルメインタビューに答えようとしていたら、ミハイルはソフトクリームをペロリンと舌でひとなめ。
「ペロ…ペロペロ……んぐっ、んぐっ。ふぅ大きくて太いから顎が疲れちゃいそう☆」
あの、そういう表現やめてもらえません?
「じゃあ電車に向かうか?」
「うん、タクトも遠慮しないでちゃんと食えよ☆」
そう言って、彼がなめまわした部分を口に寄せられる。
思わず、生唾を飲んでしまった。
間接キスになるまいか?
「ほら、早く食えよ? 溶けちゃうぞ?」
ええい、ままよ!
俺はあむっと一口でいっぱい食べてしまう。
恥ずかしさもあってかだろう。
「ああ、タクト。ずっこいぞ! オレは口が小さいからゆっくりなめるのが好きなのに!」
頬をふくらますミハイルも可愛い。
「わ、悪い」
俺とミハイルはそのまま電車に乗ると、車内で立ったまま、交互にソフトクリームを舐めあう。
「ペロペロ……チュパッ。はい、タクトの番☆」
おちつけ、落ち着くんだ琢人。
こいつはミハイル。俺の男友達。アンナちゃんじゃないのよ!
「ああ……」
俺も恥ずかしながら、レロレロなめる。
「ハハハ、タクト。唇にクリームがいっぱいついちゃったな☆」
ミハイルはそう言うとピンク色のレースのハンカチで俺の口を拭う。
「あ、ありがとう」
「いいって。それより早く食べちゃおうよ☆」
そして、また俺がレロレロ、ミハイルがペロペロ……が延々と続いた。
辺りに立っていた若い女性たちがこちらを見て何やら囁いていた。
「ちょっ、あの二人やばくね? 車内でなめあうとかホテル帰りじゃね?」
「絶対、抜きあったあとだよ。そのあと、栄養補給にミルク摂取とか、どんだけ元気なんだか」
「どっちがタチでネコかな?」
貴様ら! 勝手に想像すな!
俺が腐り疑惑のある女性陣に目を取られたその時。
電車が急ブレーキで激しく揺れた。
「うぉっ」
「キャッ!」
咄嗟にミハイルの身体を抱きしめた。
身体の軽いでは倒れそうだと不安だったからだ。
時間としてはたった数秒だったのだが、何時間にも感じた。
俺の首元に伝わる彼の唇はほのかに冷たい。
だが、とても心地よかった。
小さくて少しこそばゆいミハイルのやわらかくて小さな唇。
そして微かに感じる体温。
このまま抱きしめていたい……そう思っている俺は頭がおかしくなってしまったのではないか?
そう思っていると車内にアナウンスが流れる。
『大変申し訳ございません。踏切の前に猫が入ってきまして、なんとか事故は防げました。お客様にはご迷惑をおかけしております』
車掌の声で俺は我を取り戻す。
ミハイルから身を離すと、彼は顔を真っ赤にしていた。
「あ、あの……守ってくれたの?」
上目遣いでどこか恥ずかしそうに俺を見つめる。
「いや、その咄嗟で悪かった…」
俺もどこか歯切れが悪い。
「いいよ……タクトがオレのこと大事に思ってくれたんだよな? ダチとして」
「まあ…な」
先ほどまで仲良くソフトクリームをシェアしていたというのに、ぎこちなくなってしまう。
しばらくの沈黙のあと、彼はこう言った。
「なあタクト……一つだけ言っていいか?」
「お、おう。なんだ? 何でも言ってみろ」
彼の答えに俺は密かに期待と不安を覚えた。
「言いにくいんだけど……」
顔を赤くしちゃって、可愛いやつだ。
「ダチだろ? 何でも言え」
ミハイルのことだ。「もう一回抱きしめて」なんて言うんじゃないのか?
「あのな……タクトのTシャツにソフトクリームぶつけちゃった……」
「え?」
俺は自身の胸元を見ると、べったりと白く染まったTシャツに気がつく。
その後、肌にぬるくて気持ち悪いの感触が伝わってきた。
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