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第十三章 パーティスクール

野郎の嫉妬は執念深い

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 俺とミハイルは仲良く、一ツ橋高校へと向かった。
 校舎の入口にはいつも通り、環境型セクハラ痴女教師の宗像先生が立っていた。
 腕を組んでガハガハと下品な笑い声が遠くからも聞こえてくるほどだ。
 
「おはよう! 新宮に古賀!」

 えー本日の宗像ファッションチェックと参りましょう。
 今日はかなり攻めてますねぇ。
 下着のような肌の露出が目立つキャミソール。しかもスケスケのレース。
 そして、ヒップにピッチリと食い込む超ミニ丈のショートパンツ。
 ひどい立ちんぼガールですね。
 あ、もうガールて表現がしんどいお年の方でした。

 条例違反しているので、さっさと懲戒免職してください、学園長。

「おはようございます……」
 俺はめんどくせって感じて挨拶を返す。
「あ、宗像センセ! おはよーございます!」
 ミハイルは律儀にもしっかりと元気な声で挨拶。
 こんな痴女教師に真面目にしなくてもよかろうもん。

「おう、古賀は元気だな。新宮は気合が入ってないな。よしケツを叩いてやろう!」
 この教師は何かと俺のケツを叩きたがるな。
 セクハラで訴えよう。

「いや、いいですから。そう言うの」
 キッパリと断る。
 セクハラはしっかり拒絶するのが一番効果的な対処法である。
「連れないなやつだな……というか、新宮と古賀はいつも一緒だな、仲良いな」
 顎に手をやって、俺とミハイルを交互に眺める。
 俺は脳裏にアンナが浮かんで、どこか居心地が悪かった。
 ふとミハイルの方を見ると、顔を真っ赤にさせていた。

「ダ、ダチだからっすよ!」
「ほう、そんなもんか? ま、仲良き級友ができることは先生としても嬉しいゾ!」
 なにを思ったのか、笑顔で俺とミハイルの頭をぐしゃぐしゃ撫でまわす。
 これもセクハラとカウントしてもよろしいでしょうか?

「先生、ガキ扱いやめてください」
「センセ、ちょ、ちょっと……」
「お前らは今期入学生の中で一番気にかけている子たちだからなぁ。中退とか絶対許さないゾ!」
 笑っているけど、謎の圧力を感じる。
 つまり卒業するまで、宗像先生からは逃げられないってことだよな。

「じゃ、元気にいってみよう!」
 そう言うと、俺とミハイルの尻を思いっきりブッ叩く。

「いって!」
「キャッ!」
 ミハイルくん、たまにアンナちゃんが出てきてない?

 俺とミハイルは叩かれた尻を摩りつつ、下駄箱に向かった。

 上靴に履き替えて、階段を上る。
 教室へ入ろうとした時だった。
 ミハイルが俺に声をかける。
「タクト、ちょっと先に入ってて」
 顔を赤らめてモジモジしている。
「ん? どうした? 忘れもんか?」
「いや、ちょっとトイレに……」
 あ、ガチのモジモジだったのね。

「わかった、行って来いよ。俺は教室で待っているから」
「うん☆ 待っててね☆」
 ミハイルは嬉しそうに小走りで廊下の奥へと去っていった。
 ちょいちょい、ミハイルとアンナの境界線が曖昧になっていくと感じるのは俺だけだろうか。


 教室に入った瞬間、俺の目に映ったのは衝撃の光景だった。
 クラスの女子全員が薄いBL同人誌(18禁)を教科書のように机の上で広げていたからだ。
 みんな真剣な顔で食い入るように眺めている。
 
 これは間違いない。
 変態JK、北神 ほのかの影響だろう。
 前回の布教でここまでクラスの女子を腐らせるとは……。

「おはよう! 琢人くん!」
 笑顔が眩しい。
 だが、どうしても目が手元に行く。
 机の上にはBL同人誌が大量に置かれていたからだ。

「ああ、おはよう。ほのか」
 今日も相変わらず、中退した高校の制服で通学している。
 
「あ、この前の私のマンガどうだった? 抜けた?」
 なんで俺がBLで抜くんだよ?
「朝から頭が痛くなるからやめてくれよ……」
 家でも散々な思いをさせられていたるのに、学校でもBLかよ。
 どうか俺を休ませてください。

 ほのかはそんな俺の苦労を知ってか知らずか、同人誌を恥じることもせずに「これなんかどう?」と開いて見せつけてくる。
 俺がため息をついたその時だった。

「新宮はいるか!」

 全日制コースの制服を着たがたいの良い男子学生が教室に現れた。
 一ツ橋高校に三ツ橋の生徒が現れるのは珍しい。
 
「俺のことか?」
「ちょっと面貸せ!」
 ずかずかと教室に入り、俺の胸ぐらを掴むと無理やり立たせた。
 かなり興奮した様子に見える。
 どこかで見た顔だな。
 えっと、確か……。
「お前、福間か?」
 そうそう、俺この前こいつに赤坂 ひなたを助けるために殴られたんだったよな。
 連日ラブホテルのことばっかで忘れてたわ。

「てめぇ、また俺のことを忘れてたのかよ!」
「いや、なんかすまんな……」
 覚えはいい方なんだけど、野郎のことは基本どうでもいいかな。

「た、琢人くん! 大丈夫なの?」
 心配そうにこちらを見つめるほのか。
「大事ない、福間とは知らない仲じゃないんだよ」
 一応、ほのかも女子なので安心させておく。

「いいからついてこい!」
「お、おいおい……」
 俺は福間に力づくで教室から連れていかれた。
「こっちだ」
 かなり怒っているようだったので、俺は素直に従う。
 また殴られるのは勘弁だしな。

 普段は行かない3階へと向かう。
 一ツ橋高校は元々生徒が少ないし、2階の教室だけで事足りるのだ。
 3階の教室は日曜日なので滅多に人がいない。
 全日制コースの連中も基本は部活棟にたむろしているし。

 3階に入ってすぐの教室に入る。
 すると以前見たことがある男子生徒が二人、待ち構えていた。

「こいつかよ、相馬くん!」
「オイラの姫たちを奪ったてのはおめーだべか!?」
 誰だよ。

「ああ、そうだ。こいつが女ったらしの新宮だよ!」
 ビシッと俺の顔面めがけて指を指す。
 なにこれ、俺ってなんか犯罪でも犯したのかな?

「どういうことだ? 福間」
「とぼけるんじゃねぇ! 人の女に手を出しといて!」
 え? もしかして、赤坂 ひなたのことを言ってんのかな?
 あれは福間くんの勝手な思い込みで「付き合ってない」って言われてたじゃん。
 まだ勘違いしてんの。残念なDKくんだ。

「あのな、俺はひなたとは恋愛関係に至ってないぞ?」
「ひなただ? てめぇ、もう下の名前で呼びやがって! あのあと、何発ヤリやがった!?」
「へ?」
「俺はあの後見てたんだよ! 赤坂をラブホに連れ込むお前をな!」
 ちょっと待って。あれ、俺気絶してたんだよ?
 俺が赤坂にラブホへ連れ込まれたのが正解だぜ。
 というかずっと見てたの?

「それは誤解だ、福間」
「じゃあなんでラブホになんか連れていったんだよ!」
 鼻息荒く俺に詰め寄る。

 福間に便乗するようにモブDKも加わる。
「そうだそうだ! 答えろよ、一ツ橋のクズが!」
「赤坂ちゃんは水泳部の姫だべよ! 王子様の福間くんのもんだべ!」
 オタサーの姫の間違いじゃない?

「お前らな……俺は福間がひなたを無理やりラブホに連れ込むところを助けたんだぞ? それに福間が俺を殴りやがったから、気を失った俺をひなたが担いで、ラブホで介抱してくれてに過ぎない」
「あれは合意のもとだろうが! 新宮が邪魔しなければ、俺は今頃……童貞を」
 犯罪だよ、チェリーボーイ。
「安心しろ、福間。俺も列記とした童貞の一人だ」
 胸を張って告白することでもないのだけど。

「じゃあ、何もしてないっていうのかよ!」
 それでも疑いが晴れることはないようだ。
 まあ理由が正当であれ、ラブホに入った事実は変わりないからな。
「そればっかりは信じてくれ。なんならひなた本人に確認しろよ」
「なんだと!? じゃ、じゃあ、次の日のカワイイ子はなんなんだよ!?」
「え……」
 俺は脳内が完全に静止してしまった。

「次の日? な、なんのことだっけ?」
 わき汗が吹き出る。
「おかしいと思ったからあの日からお前を見張ってたんだ!」
 はぁ……ここにもストーカーが。

「見てたんだよ! 次の日、めちゃんこ可愛いハーフの女の子とラブホに入ったろうが! 赤坂と入ったくせに!」
 それアンナじゃん。男だよ。
 性別、間違ってるぜ。
 なんか恥ずかしくなってきた。
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