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第十章 反逆の男の娘

バブリージャグジー

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 俺とアンナの悪ノリは1時間にも及んだ。
 写真を大量に連写しまくったので、スマホが熱を持つ。やけどしそうなくらい……。
 故障してもしらね!
 
 撮った写真の中には際どいものも多く、いくら下着じゃないとは言え、ブルーのパンティが丸見えだ。
 まあスク水のことだから、セーフっちゃセーフなんだが。

 一通り、撮り終えたところで冷蔵庫から飲み物をとる。
 俺はアイスコーヒー。アンナに聞くと「ココアがいい」と答える。
 二つの缶を持って、ダブルベッドに腰を下ろす。
「ほれ、喉かわいただろ」
「うん☆ でもいい汗かいたぁ」
 額に滲む汗をレースのハンカチで拭うアンナ。

 ココアを受け取ると、プシュッといい音を立ててプルタブを開く。
「んぐっんぐっ……ぷっはぁ☆ はぁはぁ、美味しい☆」
 このいやらしい飲み方はミハイルと同一人物ですね。

 俺もアイスコーヒーをがぶ飲みして喉を潤す。

「はぁ、ちょっと暑いね」
 そういうと彼女は胸元の襟をつまんでパタパタとあおぐ。
 横から見ている俺からすれば、ドキドキが止まらない。

「そ、そうだな…エアコンでもつけるか?」
「うーん…それもいいけど……」
 アンナは少し頬を赤くして、うつむいた。

「どうした?」
 なんだろう、さっき間違えてつけてしまった『大人の映画』でも観たいのだろうか?

「お風呂……入らない?」
「はぁ!?」
 俺は思わず耳を疑った。
「な、何を言っているんだ、アンナ?」
 驚く俺を見てアンナはクスクスと笑う。

「勘違いしないで。アンナのメイド服の下は何を着てた?」
「え? あ……水着か」
 アンナさん、ちょっと積極的すぎやせんか?

「そう☆ だから二人でジャグジー使おうよ☆」
「でも、俺は水着なんか着てないぞ?」
 フル●ンで入れってか?
 まあこの前『ミハイル』のときに裸で風呂入ったよな。
 俺ってば、完全に女の子扱いしているやん! と自分にツッコミを入れてしまう。

「タオルとか巻いたらいいんじゃない?」
「アンナがいいなら構わんが……」
「だってタッくんもたくさん写真撮ったりして汗をかいたでしょ」
 そう言ってアンナは俺のTシャツを指差す。
 彼女の指したところは脇。わき汗で二つの大きな地図が出来上がってた。
 いやん、恥ずかしい!

「すまん、汗臭くないか?」
「うーん。ちょっと……するかも」
 そう言ってまたクスクス笑いだす。
 彼女を見て思わず、頬が熱くなる。
「でも、お風呂で洗えばいいよ☆」
「へ?」
「ボディシャンプーとかで洗って干しておこう。エアコンとかでさ」
 部屋にあったハンガーを指す。
 よく気が利く方です、アンナさん。

「すまんが俺は家事全般、不得意だし全くやらん」
「そんなこと自慢じゃないよ!」
 俺の背中をバシバシ叩いて笑うアンナ。
 力は男だしあのミハイルだから、痛いのなんのって。

「大丈夫、アンナが洗うから。脱いで☆」
 すいません、最後のセリフだけもう一回聞かせてください!
「りょ、了解した」
 俺は素直にTシャツを脱ぐ。
「じゃあアンナがお風呂場で洗っているから、タッくんはズボンも脱いどいてね☆」
 サラッとビッチ発言じゃないですか……ちょっとドン引き。

 アンナは鼻歌交じりに俺のTシャツを抱えて、もう一つの浴室へ向かった。
 俺は部屋の中央に向かい、ジャグジーの前でズボンとパンツを脱いだ。
 ちょうどいいところに手頃のタオルがある。
 それを腰に巻くとジャグジーの蛇口を回す。

 このホテルのジャグジーは可愛らしいことにハート型で、二人で入ればちょうど対面式に仲良く浸かれる。
 そしてジャグジー裏にはガラス越しに中庭があり、緑と花々を堪能できる。
 なんてロマンティック!
 ここなら彼女もイチコロだぜ! っと言いたいところだが、相手は男の子だからね。

 ~10分後~

「ふむいい湯加減だな」
 ジャグジーにお湯が貯まったのを確認したところで、一足お先に浸かる。
「ふぅ……極楽極楽ぅ~」
 ババンバ、バンバンバン!

「タッくんたらおじいちゃんみたい☆」
 振り返るとそこには……。
「アンナ!」
 ピチピチのスクール水着を着た少女が立っていた。
 少し恥ずかしそうにこちらを見ている。
 ロングヘアーは首元でまとめられている。

「変……じゃない、かな?」
 いやいや、変だよ。
 お前の息子さんはどこにいったんだよ!?
 太ももからお股にかけてグイグイ食い込んでいる。
 のに、肝心の『膨らみ』がない。
 ペッタンコ。
 どうやって隠したんだよ?

「……」
 俺は言葉を失っていた。
 だって、マジでミハイルって女の子じゃね? と疑っていたからだ。
 胸も膨らみが少しある。ほんの少しだが。
 微乳サイコー!
 思わず生唾ゴックン♪

「なんかタッくんの目、やらしい」
 横目で俺を蔑むアンナ。
 だが、その突き刺さる視線こそ、ご褒美!
 俺はドMなんだって気がついた日。

「す、すまん……」
「アンナも入っていい?」
「もちろんだ」
 透き通るような白い太ももが上がると、そっとジャグジーへ脚を入れる。
 お次は可愛らしい小さなヒップが俺の顔面を横切る。
 ここを写真撮ったらダメかな?

「はぁ……いいお湯」
 瞼を閉じて、肩に触れるアンナ。
 肩こりが酷いなら僕が揉みましょうか? もちろんオプション付きで。

「ねぇ、タッくん。それってなあに?」
 アンナが指した方向にはホテルのアメニティーが置いてあった。
「これは……ハーブか?」
 袋詰めされたパックには花びらが複数確認できる。
「せっかくだから入れてみよ☆ 貸して」
 アンナは興味津々といった顔で俺からハーブを受け取り、封を開ける。
 
 花びらが湯船に広がると、無色だったお湯がピンク色に変わる。
 それと同時に赤い花びらが湯の上を泳ぐ。
 なんて幻想的な世界なんだ……。

「うわぁ、キレイ~☆」
 アンナは感動しているようだ。目をキラキラさせて喜んでいる。
 そういうお前の方がキレイだぜ! と言いたいところだな。
「タッくん、そこのボタン押してみて」
「ん? これか?」
 俺は近くにあった丸いボタンを言われた通り押してみた。

 すると『ゴボゴボッ!』という豪快な音と共にジャグジーが泡を立てる。
 なんとも気持ち良い。
 日頃、新聞配達で肩やら腰やら凝り固まったところがほぐれる。
「これはいいな」
 俺までジャグジーへの感動に便乗する。
「ね☆」
 アンナも超ご機嫌。

 笑顔の彼女にこの雰囲気……何か間違いが起こっても仕方ない。

 俺はなぜか恥ずかしくなってきた。
 心底、彼女の魅力にやられている。このままでは本当に彼女を、アンナを好きなってしまいそうだ。

「タッくん、もうちょっと寄りなよ!」
 手招きされて「うぃっす」とアンナに身を寄せる。
 もう……どうにでもして!
 
「ねぇ、タッくん?」
「ん、なんだ?」
「ちゃんとした取材になってるかな☆」
「も、もちろんだとも……」
 
 これが正真正銘の彼女だったらなぁ……チキショォォォ!
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