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第十章 反逆の男の娘

ボタンを押すのをためらいがち…

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 俺は昨日の今日で博多駅に舞い戻っていた。
 一体何回、博多にくれば気が済むんだ?

 初デートのときのように黒田節の像の前で待つ。
 遅い……。
 待ち合わせ時間は10時なんだが。
 かれこれ、30分も待っている。
 なぜミハイルのときは俺より1時間ぐらい早くついているストーカー仕様なのに、アンナのときはこんなに時間がかかるんだ?

「お、お待たせ!」
「……」
 思わず見とれてしまった。

 オフショルダーのブラウスにチェック柄のプリーツミニスカート。
 前回会った時よりもアンナの白く透き通った素肌が、自然と目に入る。
 ドキドキが止まらない。
 
「どうしたの? タッくん?」
 首をかしげて俺の顔をのぞきこむ。

「いや……可愛いなって、思って」
「ホント? この服、タッくんが嫌いじゃないかって心配だったんだぁ」
 そっちじゃないって。
 おめーさんだよ。

「じゃ、じゃあ行こうか?」
「うん☆ ところでどこにいくの?」
 い、言えね~
 ラブホだよ☆ とでもいえばいいのか?

「そうだな……まあ個室だ」
 間違ってはいないぞ、俺。
「個室? ご飯屋さん? カラオケとか?」
 健全すぎて草。

「着いてからのお楽しみだ」
「ふーん」
 アンナは何も知らない。
 いや、知らなくてもいいことを知ろうとしているのだ。
 ねーちゃんのヴィッキーちゃんにバレたら殺されそう。

 俺はアンナと一緒に例の場所へ向かった。

 前回、ひなたと行ったときは俺からラブホに誘ったわけではないので、システムなどまったくわからん。
 初心者。
 わたし……はじめてなの。

 ラブホテルの前につくと、アンナの顔は真っ青になっていた。
「これって……」
「ああ、ラブ……ホテルだ」
「そ、そうだったんだ……」
 ドン引きじゃないですか。

「誤解するなよ、アンナ。俺はこの前、ひなたというJKを助けて、気絶していたところを介抱するために担ぎ込まれたにすぎない。なにもしていないぞ?」
 アンナが顔をしかめる。
「ひなた?」
 ちょっと、アンナさん? 顔がオコだよ? 可愛い顔しているけどさ。
「ああ、この前助けたJKだよ。俺の通っている一ツ橋高校の全日制コースの生徒だ」
「そうじゃなくて、なんで下の名前?」
 声が冷たい!

「いや……赤坂 ひなたって言うんだがな。彼女が下の名前で呼べと言うんだ。なんでもひなたは俺のラブコメ作品の取材対象になりたいそうだ」
 俺がそう言うと、アンナは黙ってうつむく。
 元気がないようには思えない。
 冷たい風が彼女の美しい金色の髪を揺らす。
 拳を作り、なにかを決意したように見える。

「許さない……アンナのタッくんを……」
 俺の勘違いだとは思うが、彼女の目から燃え盛る炎を感じた。

「いく!」
「へ?」
「ひなたっていう子がタッくんのはじめてを奪っていいわけがない!」
 その言い方だと誤解されません?
 俺、まだ童貞ですよ。キスもしたことないのに。

「さ、早く入ろう!」
 アンナは俺の手を強く握りしめる。
 嬉しいんだが、握力よ。痛すぎる。
 こういうところは男だよな。

「ちょ、ちょっと待て。アンナ」
「なに?」
 目、目が怖いって。
「わかっているのか? ラブホテルだぞ? 俺とアンナはまだ出会って2回目だ。初回から取材するには早すぎないか?」
 だって2回目でヤッちゃうビッチってことだぜ?

「なにか問題ある?」
 サイコパスじゃん。
 俺の意思は?
「さ、早く入りましょ☆」
「は、はい……」
 俺は彼女の圧に耐え切れず、強引にラブホテルの門をくぐった。

 中に入ると異様な空気が漂っていた。
 なんというか、ムンムンした感じ?
 熱気を感じる。
 それに換気されてないのか、嫌な臭いがする。
 俗に言うイカ臭いってやつ?

 アンナを見ると勢いで入ったはいいが、やはり緊張していて、縮こまっている。
 ガッチガチじゃん。

「大丈夫か、アンナ? やはり出ようか?」
「だ、だいじょうぶ……だよ?」
 額から汗が滝のように流れているんだが。
「チェックインしましょ……」
「ふむ…」
 合意のないホテルへの連れ込みはタブーと聞くが、これはアンナの許可をもらったと思っていいのだろうか?

 入口近くにタッチパネルがあり、部屋の番号と室内の写真が表示されていた。
 明るく光っている部屋が空いているようで、暗くなっているところは使用中……ということか。
 まあ、昼間から元気ねぇ~

 空いている部屋は1つのみ。
 一番上の階でなにやら、豪華な部屋だ。
 ベッドもダブルベッドが二つもあり、ジャグジー、スロット機、大型テレビ完備。
 ちょっとしたホテルより豪華じゃん。
 値段を見ると一万円……。
 マジかよ! ふっざけんなよ。
 貯金下ろしといてよかったぁ。

 俺はボタンを押して、少し奥にある受付に向かった。
 受付の人間は見えず、スモークガラスによって従業員の顔も俺たちの顔も互いに確認できないようになっている。
 どうしていいか、わからず突っ立っているとガラスの向こうから声をかけられた。
「一万円になります」
 ガラスの下の部分から手がニョキッと出てきて、トレイが雑に出される。
 感じ悪いな。
「領収書もらえます?」
「はぁ? ないですよ、そんなもん」
 ま、マジかよ。領収書は自分で書いてしまえ!
 一万円も払えるか。

 俺は支払いを済ませ、アンナと共にエレベーターへ向かう。
 一番上の階は6階。
 最上階だ。

 エレベーターが開いたとき、やはり前回のように別のカップルと鉢合わせする。
 一人は中年のおっさん。パートナーには不釣り合いの若いお姉さん。
 脂ののった中年はかなりダサい。
 対してお姉さんはタイトなミニスカで戦闘力が高い。
 夫婦じゃないな……いけない関係じゃね?

「おっと、ごめんね」
 ニヤつくおっさん。
 そう言うと、お姉さんの肩を抱いて立ち去ろうとする。
 だが、すれ違いざま、隣にいたアンナを見て、舌なめずりしていた。
 キモッ!
 だが、こいつは男だぞ?

 俺とアンナはエレベーターに乗り、最上階のボタンを押す。
 アンナはラブホテルに入ってから無言を貫いている。
 顔を真っ赤にしてうつむいているのだ。
 そりゃそうだろ、勢いだもんな。

「本当にいいのか? アンナ」
 再度、確認する。
 あとから文句を言われたら、困るしな。
「い、いいよ……タッくんの好きなことは全部、好き…だから」
 俺がいつラブホテルを好きって言ったかね?
「そうか…」
 
 チンッ! とベルが鳴り、目的地についたお知らせを受ける。

 6階につくと、前回とは違い、廊下が短いことが確認できた。
 そのことから一万円という高額な意味を一瞬で理解する。
 この部屋、いやこの階を貸し切り状態なのだ。
 広大な敷地を全部、俺たちが一万円で借りたのだ。
 所謂、VIPルームとかいうやつだな。

 扉の上の表札がチカチカと点灯している。
「来いよぉ 早くやっちまえよ~」とでも言いたげだな。

 俺はドアノブに手を回した。
 扉を開き、固まっているアンナを見つめる。
「さ、入ろう」
「うん……」
 入るときと状態が逆転してしまったな。
 こういうところは俺が率先してやってあげないと。

 あれ? 俺、アンナのことをガチで女の子扱いしてない?
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