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第八章 ミハイルの家族
見栄と常識
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「も、もういいぞ! タクト」
顔を赤らめて、扉を開くミハイル。
特段、部屋の見た目は変わってない。
やはりエロ本の隠し場所でも変更していたのか?
「ああ……」
俺は待つこと5分ほど。やっと許可が下りたので彼の部屋へ入ることにした。
「どこにでも座ってくれよ☆」
「すまんな」
部屋の真ん中あたりに小さなガラス製のちゃぶ台がある。
ちなみに形はハートである。
ちゃぶ台を挟むようにして、これまたハートのクッションが二つ並んでいた。
今日はバレンタインデーでしたかな?
俺は右手にあるクッションに腰を下ろした。
ミハイルが「飲み物はなにがいい?」と聞いてきたので「コーヒー、ブラックで」と答える。
彼は俺の答えにニカッと微笑み、リビングまで小走りで去っていった。
やけに嬉しそうだな。
こいつもこう見えて、友達が少ない……可哀そうなやつなんだろうか?
ちゃぶ台の前に目をやった。
今時、珍しいブラウン管のテレビ。
ベゼルが太すぎぃ~なせいもあってか、ハートのシールが貼りまくってある。
これでは映像を見る際、ハートが気になって集中できないのでは?
「お待たせ☆ タクトのぶん!」
ミハイルはネッキーのグラスを差し出した。
「あ、ありがとう」
なんかコーヒーが似合わないよ!
だが、俺好みのアイスコーヒーで旨い。
スクリーングの疲れが吹っ飛ぶぐらいだ。
ミハイルは俺の対面に腰を下ろすと、なぜか正座している。
ショーパンを日頃から履いているせいもあってか、ヒップが更に強調され、白くてきれいな太ももが堪能できる。
くっ! ヤンキーのくせしてお行儀が良すぎかよ!
「じゃあオレもいただきまーす!」
そう言うと、ミハイルはネニーのグラスを両手で持ち上げた。
俺と違い、いちごミルクでストローつき。
まあこいつはお口がちっさいからな。
「んぐっ……んぐっ……」
なんで、君が飲み食いしていると違う音に聞こえるかね。
「ぶはぁっ! はぁ、はぁ……おいしかった☆」
それ、本当にいちごミルク?
別のミルク入ってない?
「ところで、ミハイル」
「ん? なんだ?」
「お前の姉さんが『今夜は泊まっていけ』とか言っていたが……本気か?」
「え!?」
ミハイルはボンッ! と顔を赤くする。
「ねーちゃんが、そんなこと言っていたのかよ!?」
「ああ」
「ど、どうしよう! タクトのパジャマがないよ!?」
そんなこと俺に言われてもな。
「ならば帰ろう。急に来て迷惑だしな」
咄嗟に逃避フラグを立てておく俺、グッジョブ。
「え? か、帰るの!?」
顔を赤くしたと思ったら、今度は驚くミハイル。
表情豊かでいいですね。
「だって、母さんやかなでにも伝えてないしな」
「そ、それはそうだけど……かなでちゃんにはオレから電話しておくよ!」
身を乗り出すミハイル。
互いの唇が重なりそうなくらいな至近距離。
「却下だ。母さんはミハイルが我が家に泊まった時にこう言っていただろ?」
「?」
俺はわざわざ母さんのものまねで答えてあげた。
「今度ミーシャちゃん家にお母さんのお菓子を持っていってちょうだい☆ ……とな」
「そっか……でも気にしなくていいよ☆」
くっ、早くしないとおんめーのねーちゃんが風呂から上がるだろうが!
「いいか、ミハイル。大人には見栄ってのがあってな。菓子折りぐらい持っていかせるのが大人の常識……」
と言いかけた瞬間だった。
ミハイルの部屋の前で仁王立ちしている女を発見。
「いらねーよ、そんなもん」
そのお人はまたもやブラジャーとパンティのみという防御力ゼロの装備で、俺の目の前に現れた。
逃避フラグが折れた……。
「だいたい、あたいはパティシエだぞ? 菓子なんぞ、こっちが土産としていくらでもやるよ」
背後から『ゴゴゴゴゴ』とスタンドが動き出す。
これは……なにか口答えすれば、殺される。
「あ、今晩お世話になりまーす」
苦笑いでごまかした。
「坊主、お前。飲み込みが早いな☆」
きっしょ!
「あぁ!」
突然、慌てるミハイル。
そして、俺に飛びついて抱き着く。
「な、なにをする? ミハイル」
「だって、ねーちゃんが裸じゃんか!」
絶壁の胸で俺の視界は真っ暗だ。
だが、ミハイルの香りが心地よく、また彼の心音が聞けて、BGMは最高だ。
「ミーシャ、裸じゃないだろ~ 下着を着てるじゃん」
ヴィクトリアの顔は見えんが、きっと意地悪そうな顔なのだろう。
「ねーちゃん! タクトは男なんだよ! 早く服を着て!」
いや、お前もだろ。
「は? どうしたんだ、ミーシャ? 力だっていつもあたいの身体を見てるけど?」
「力はタクトと違うもん! あいつはちっさいころからねーちゃんの裸見てたもん!」
ええ……ちょっと、ドン引きだわ。千鳥のやつ。
「はぁ? おかしなミーシャだな……ま、あたいは服でも着るべ」
そう言うと、足音が遠くなる。
その間、ずっと俺はミハイルの胸で暖められている。
貧乳、ばんざ~い!
「も、もういいぞ……タクト」
抱擁タイム、終了ですか?
延長ってお願いできないんですかね。
「なんか色々とごめんな……」
顔を真っ赤にさせて、モジモジしだすミハイル。
「まあ我が家もあんな感じだから、気にすんな」
「う、うん……」
それが大問題なんだがな。
「じゃあ、お泊り決定だな! オレがかなでちゃんに電話しておくよ☆」
「いや待て……」
話している途中だというのに、俺を無視して既にスマホで通話しだした。
「あ、かなでちゃん? うん、オレ☆ タクト、今日うちに泊まるからさ」
『了解ですわ。それより、ミーシャちゃん、ハァハァ……今日の下着は何色ですの?』
隣りにいても聞こえてくる変態の声が(妹)。
「え? ブルーかな?」
『ハァハァ……そ、それでどんな形ですの? リボンは付いてますの?』
「普通だけど」
『ハァハァ、まだまだノーマルですのね。ミーシャちゃんは、デヘヘ……』
俺はミハイルのスマホを取り上げると、電話をぶち切ってやった。
人の友人になにを吹き込んでいるんだ、あの変態妹は。
顔を赤らめて、扉を開くミハイル。
特段、部屋の見た目は変わってない。
やはりエロ本の隠し場所でも変更していたのか?
「ああ……」
俺は待つこと5分ほど。やっと許可が下りたので彼の部屋へ入ることにした。
「どこにでも座ってくれよ☆」
「すまんな」
部屋の真ん中あたりに小さなガラス製のちゃぶ台がある。
ちなみに形はハートである。
ちゃぶ台を挟むようにして、これまたハートのクッションが二つ並んでいた。
今日はバレンタインデーでしたかな?
俺は右手にあるクッションに腰を下ろした。
ミハイルが「飲み物はなにがいい?」と聞いてきたので「コーヒー、ブラックで」と答える。
彼は俺の答えにニカッと微笑み、リビングまで小走りで去っていった。
やけに嬉しそうだな。
こいつもこう見えて、友達が少ない……可哀そうなやつなんだろうか?
ちゃぶ台の前に目をやった。
今時、珍しいブラウン管のテレビ。
ベゼルが太すぎぃ~なせいもあってか、ハートのシールが貼りまくってある。
これでは映像を見る際、ハートが気になって集中できないのでは?
「お待たせ☆ タクトのぶん!」
ミハイルはネッキーのグラスを差し出した。
「あ、ありがとう」
なんかコーヒーが似合わないよ!
だが、俺好みのアイスコーヒーで旨い。
スクリーングの疲れが吹っ飛ぶぐらいだ。
ミハイルは俺の対面に腰を下ろすと、なぜか正座している。
ショーパンを日頃から履いているせいもあってか、ヒップが更に強調され、白くてきれいな太ももが堪能できる。
くっ! ヤンキーのくせしてお行儀が良すぎかよ!
「じゃあオレもいただきまーす!」
そう言うと、ミハイルはネニーのグラスを両手で持ち上げた。
俺と違い、いちごミルクでストローつき。
まあこいつはお口がちっさいからな。
「んぐっ……んぐっ……」
なんで、君が飲み食いしていると違う音に聞こえるかね。
「ぶはぁっ! はぁ、はぁ……おいしかった☆」
それ、本当にいちごミルク?
別のミルク入ってない?
「ところで、ミハイル」
「ん? なんだ?」
「お前の姉さんが『今夜は泊まっていけ』とか言っていたが……本気か?」
「え!?」
ミハイルはボンッ! と顔を赤くする。
「ねーちゃんが、そんなこと言っていたのかよ!?」
「ああ」
「ど、どうしよう! タクトのパジャマがないよ!?」
そんなこと俺に言われてもな。
「ならば帰ろう。急に来て迷惑だしな」
咄嗟に逃避フラグを立てておく俺、グッジョブ。
「え? か、帰るの!?」
顔を赤くしたと思ったら、今度は驚くミハイル。
表情豊かでいいですね。
「だって、母さんやかなでにも伝えてないしな」
「そ、それはそうだけど……かなでちゃんにはオレから電話しておくよ!」
身を乗り出すミハイル。
互いの唇が重なりそうなくらいな至近距離。
「却下だ。母さんはミハイルが我が家に泊まった時にこう言っていただろ?」
「?」
俺はわざわざ母さんのものまねで答えてあげた。
「今度ミーシャちゃん家にお母さんのお菓子を持っていってちょうだい☆ ……とな」
「そっか……でも気にしなくていいよ☆」
くっ、早くしないとおんめーのねーちゃんが風呂から上がるだろうが!
「いいか、ミハイル。大人には見栄ってのがあってな。菓子折りぐらい持っていかせるのが大人の常識……」
と言いかけた瞬間だった。
ミハイルの部屋の前で仁王立ちしている女を発見。
「いらねーよ、そんなもん」
そのお人はまたもやブラジャーとパンティのみという防御力ゼロの装備で、俺の目の前に現れた。
逃避フラグが折れた……。
「だいたい、あたいはパティシエだぞ? 菓子なんぞ、こっちが土産としていくらでもやるよ」
背後から『ゴゴゴゴゴ』とスタンドが動き出す。
これは……なにか口答えすれば、殺される。
「あ、今晩お世話になりまーす」
苦笑いでごまかした。
「坊主、お前。飲み込みが早いな☆」
きっしょ!
「あぁ!」
突然、慌てるミハイル。
そして、俺に飛びついて抱き着く。
「な、なにをする? ミハイル」
「だって、ねーちゃんが裸じゃんか!」
絶壁の胸で俺の視界は真っ暗だ。
だが、ミハイルの香りが心地よく、また彼の心音が聞けて、BGMは最高だ。
「ミーシャ、裸じゃないだろ~ 下着を着てるじゃん」
ヴィクトリアの顔は見えんが、きっと意地悪そうな顔なのだろう。
「ねーちゃん! タクトは男なんだよ! 早く服を着て!」
いや、お前もだろ。
「は? どうしたんだ、ミーシャ? 力だっていつもあたいの身体を見てるけど?」
「力はタクトと違うもん! あいつはちっさいころからねーちゃんの裸見てたもん!」
ええ……ちょっと、ドン引きだわ。千鳥のやつ。
「はぁ? おかしなミーシャだな……ま、あたいは服でも着るべ」
そう言うと、足音が遠くなる。
その間、ずっと俺はミハイルの胸で暖められている。
貧乳、ばんざ~い!
「も、もういいぞ……タクト」
抱擁タイム、終了ですか?
延長ってお願いできないんですかね。
「なんか色々とごめんな……」
顔を真っ赤にさせて、モジモジしだすミハイル。
「まあ我が家もあんな感じだから、気にすんな」
「う、うん……」
それが大問題なんだがな。
「じゃあ、お泊り決定だな! オレがかなでちゃんに電話しておくよ☆」
「いや待て……」
話している途中だというのに、俺を無視して既にスマホで通話しだした。
「あ、かなでちゃん? うん、オレ☆ タクト、今日うちに泊まるからさ」
『了解ですわ。それより、ミーシャちゃん、ハァハァ……今日の下着は何色ですの?』
隣りにいても聞こえてくる変態の声が(妹)。
「え? ブルーかな?」
『ハァハァ……そ、それでどんな形ですの? リボンは付いてますの?』
「普通だけど」
『ハァハァ、まだまだノーマルですのね。ミーシャちゃんは、デヘヘ……』
俺はミハイルのスマホを取り上げると、電話をぶち切ってやった。
人の友人になにを吹き込んでいるんだ、あの変態妹は。
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