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第四章 オタク訪問

ミハイルVS現役JC

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『次は席内むしろ駅~ 席内駅~』

「あっ……」
 ミハイルが困った顔で俺を見つめる。
「どうした?」
「オレの駅……」
「そうか。じゃあまた今度な」
「う、うん……」

 ドアから降りる金色のミハイルこと、ショーパン男子の白い肌は夕焼けと共にオレンジがかる。
 写真撮っときたい。

「じゃ、じゃあな! タクト……」
「おう」
 そう手を振るミハイル。
 なんで、そんな今にも泣きそうな顔で俺を見る?
 そんなに俺ん家でポ●モンでもしたかったか?

 プシューッ! と自動ドアの音が鳴る。
 これで彼ともしばしのお別れだな……。
 ん? なぜか胸がざわつく……この気持ちはさびしいのか?
 俺は……。

「やだっ!!!」
 その小さな細い手で軽々とドアは開く。
「ミハイル?」
 思わず下の名前でよんでしまった。

「オレ、タクトに……」
「俺に?」
「べ、べんきょう習うんだ!」
「は?」

 ギャラリーから歓声があがる。

「なにあの子? 超積極的! カワイイ!」
「うんうん。別れが惜しいんだよね……すっごくわかる いいな~」
 と騒ぐのは、やはり三ツ橋高校の制服組JKか。

「お熱いよね~ 受けか攻めか、知らんけど、相棒は迎えにいけよ! って感じじゃね?」
「それな! ショタコンなのにマジ空気読めねーわ」
 いや、なにが?
 勝手にショタコン扱いしないでください。

『ご乗車の方はお早めにお入りください!』

 車掌さんめっさ怒ってはるやん……。

「古賀! 早く戻れ! 他の乗客に迷惑だ」
「あっ……うん☆」
 目を輝かせて、俺の元へと戻るヤンキー少年。
 なにこの子、超カワイイんですけど。
 抱きしめたいぜ、ちくしょう。

「わ、わりぃ……」
「俺は構わんぞ?」
「そ、そっか! なら……タクトん家に行ってもいいか?」
「何故そうなる?」
「だってべんきょう教えてくれるんだろ?」
「あ~、別にええけど?」
「約束な☆」
 ニコニコ笑いながら、俺にピッタリとくっつくミハイル。
 やばいよ~ いろんな意味で……。
 元気になっちゃいそう!

「なにあの二人? もう事後じゃね?」
「うんうん、あの子ゾッコンじゃん! このあとむちゃくちゃ……」
 しねーから!
 お前ら腐ったやつらの席ねーから!

 ガタゴト揺れること数分、席内駅から3駅ほど通過すると、俺の故郷『真島まじま駅』が見えてきた。

 真島とは、福岡市の東部にある住宅街だ。
 それもギリギリ福岡市に入る地域で、真島駅も福岡市と福岡県の境目にある。
 かなり中途半端な福岡市民といえよう。
 だが俺はそんな真島という街が大好きだ。
 ここで生を受け、ここで育ち、今の俺がいる。
 感謝しかない。

『次は真島駅~!』

「おい、古賀おりるぞ?」
「……」
「古賀?」
 スゥスゥと可愛らしい寝息を立てて、お昼寝中でちゅか?
 電車内でお昼寝とは、お行儀がなってませんな。
 チューしてみよっかな?

「ねぇねぇ、そろそろ攻めがチャンスじゃね?」
「いけ! いっちまえ!」
 お前らの存在が『イキスギィ~』なんだよ。

「古賀、起きろ」
 軽く肩に触れると、本当に華奢な骨格であることが確認できた。
 こんな体格でどうやったらあんな馬鹿力が出せるんだ?

「う、う……ん、タクト?」
「真島駅だ、降りるぞ」
「うん☆」
 ミハイルの手をとり、気がつけば真島駅のホームにおりていた。
 その間、手は離さなかった。
 こいつときたらまた何をしでかすか、わからんしな。
 と、いうのは言い訳かもしらんが。

「チッ! あの攻めなってねーわ」
「こんのクッソチキンが!」

 制服組も真島駅だったのか……。
 去り際になんつーおみやげ捨てていきやがる?
 真島は、腐りはてた街に成り下がってしまったのかもしらんな。

「タクト……手」
「ん?」
 まだ手つないだままだった……てへぺろ♪

「悪い」
「ううん……」
 なぜ顔を赤らめる?
 今日ってそんなに暑かったか。

 真島駅から出ると、商店街へ向かう。
 駅近辺にはさまざまな居酒屋が並ぶ。
 きったない個人店から大手チェーン店。ほかにもさまざまな店舗が細々ある。
 初見の方々は、迷路のように感じるかもしらんな。

「まじまだ~ ひっさしぶり~☆」
 背伸びして空気を吸い込むミハイル。

「ただの真島だがな」
「なんか前に来たときより……だいぶ店変わった?」
「ああ、ここも時代でな。大手チェーン店に殺された街だ」
「そ、そうなのか!?」
「奴らは怖いぞ? くせの強いレンタルビデオショップ、旨いがクッソ固いパン屋、マダムたちが嗜む衣料店、やっすいのに尋常ないぐらいのスキルを持つ理髪店……全てが奪われた」
 限りなく実話だ。
「それって……ただ単に売り上げがわるかったとかじゃないのか?」
 クッ! ミハイルのくせして、鋭いじゃないか!
「だが未だに残っている店もたくさんあるぞ!」
 手のひらを掲げる。

『真島商店街』

 ボロボロに錆びた門構えがある。
 車一台通るのがやっとな道路に、びっしりと店が並ぶ。
 主に居酒屋と不動産屋が多く、他には洋菓子店や和菓子店などがある。

 メインストリートを歩きだすと、ミハイルは上下左右を丹念に見つめる。
 いや、ただの廃れた商店街なんだが?
 なんかちょっと地元民的に恥ずかしいわ。

「おもしろいな、まじまって!」
「そうか?」
 だが、言われると心地よいものだ。

「タクくん~!」

 甲高い声が響き渡る。
「この声は……」
 嫌な予感がした。
 前を見れば、セーラー服のツインテールが全速力で走ってくる。
 制服を着用しているくせに、宗像先生に負けず劣らずなメロンがバインバインと左右に揺れている。
 キンモッ!

「タクくん! おっかえり~」
 甘えた声を出すと思いっきり、抱きしめられる。
 巨大すぎる乳の谷間に俺は沈められた……。
 息ができない、ここは深海か!?

「なんだ! おまえ! タクトになにすんだよ!?」
「およ? 私のことですか?」
「ふごごご……」
 ジタバタすればするほど、少女のアームロック……じゃなかったハグが強まる。

「はなせ! タクトが苦しそうだろ!」
 見えんがもっと言ってやってくれ、ミハイル。
 乳が気持ち悪いんだよ、鳥肌たってきた。

「ええ? どうしてです? 『かなで』はいつものハグで遊んでいるだけですけど?」
「タクトで遊ぶな! いいから離せ!」
 ミハイルが力づくで救出してくれた。
 やはり伝説のヤンキー、金色のミハイルなだけはある。
 この『バカ巨乳』から力で勝つとは。

「あっ……タクくん……」
 気がつくと、俺の頭はミハイルの薄っぺらい胸に抱えられていた。
 なにこれ? 超気持ちいい!
 あ~ ずっとこのままでいたい。

「タクト、ダチなのか? あの子?」
「いいや。全く持って知らんな」
「ヒッド~い! 毎晩いつも同じ布団で寝ている関係でしょ?」
 オエッ!

「ね、寝ているだと! お、お前……ちゅ、ちゅー学生に何をしているんだ!?」
 急に投げ捨てられた俺氏。
「なにを勘違いしているんだ、古賀」
「だって……この子が」
「ふむ、自己紹介しろ。かなで」
 なんだよ……もう少し絶壁海峡を味わいたかったのに!

「ハイ、おにーさま♪」
 なーにが兄さまだ!
 スカートの裾を左右に広げると、姫様のように頭を軽く下げる。

「私、新宮 かなでと申します。よしなに」

「え……どういうこと?」
「つまり俺の妹だ」
 残念なことにな。
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